【完結】嫌いなアイドルを人気者にしたのは……私?

天冨 七緒

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後編

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 ブルルル……ブルルル

「ねぇ、何? どうしたの?」

「エンジンがかからない」

 車は故障。

「嘘でしょ」

「走って逃げよう」

「走って? どこまで?」

「駅まで行けば何とかなるだろう」

「駅? 車で一時間以上もあるのよ。それを歩くなんて信じらんない」

「途中タクシーや車を借りればいいだろう」

「車なんて走ってないわよ」

「なら、ここに留まるのか?」

「それは……分かったわよ」

 島上は渋々納得しヒールで駅に向かい走る。

「もう……なんでこんな目に合わなきゃいけないのよ……」

 文句を言いながら駅までの途方もない道を歩く。

「無理……絶対に……あんたどうにかしなさいよ……こんな仕事持って来やがって……」

「……ヴヴッ」

 神原は胸を抑え地面に倒れ込む。

「え? ちょっと……何?」

「……ゴホゴホ」

 神原は血を吐いて痙攣……

「きゃぁぁぁ」

 神原の様子を目撃した島上は全速力で走りだす。
 その先には、村の人間の姿。

「ねぇ……助け……」

 村の人間の様子がおかしい事に気が付き、身を隠す。

「もう一人いたよな? あいつは何処に行った?」

「駅までの道はここしかない。もうすぐ通るはず……」

 村の住人の会話を聞き震えあがる。

「何? どういうこと? 全部仕組まれてたの? やばっ、こっち来る」

 島上は来る途中に紹介された建物に身を潜める。
 
「村を穢しやがって。ああいう輩は追い払ってもいくらでもくるからな」

「この時期は有り難い。祭壇に捧げる供物に丁度いい」

 恐ろしい内容に、口元を押さえる島上。

「ん? あそこに誰かいないか? いたぞっ」

「ヤダ、来ないで……イヤァァァァ」

 島上は逃げるも、呆気なく捕まり叫び声をあげる。
 連れていかれた先は何かの儀式が行われている。
 祭壇の前で祈りを捧げている住人。
 祭壇の上には、捕まってしまったスタッフとマネージャーが縛られ吊るされていた。
 腰で紐を縛られているので、顔は見えない。

「お前も祭壇の供物になって貰う」

「嫌よ。ねぇ、こんだけの人数いるんだから私いなくてもいいんじゃない? この村出ても、私誰にも言わないから。もし供物が必要なら、私が誰かをここに呼ぶから……ねっ?」

 危機に迫られた時、人は本性が現れる。
 必死に住民たちに交渉する島上。
 彼女の口から出る言葉は、人間味あふれるもの。

「では、供物にしない代わりにお前に舞を踊って貰う」

「はいっ。します。舞」

「なら、この曲で舞を披露しろ」

 流れてきた曲は島上が以前在籍していたアイドルグループの曲。
 状況把握が出来ない島上は動けずにいる。
 その代わり、住民が不器用に踊り歌い出す。
 そしてネタバラシ。
 住民が背中を向けると一人一人に背中に文字が。
 ど・っ・き・り・で・す

「……どっきり?」

 言葉の意味を理解するのに時間が掛かっているのか、何度も瞬きを繰り返す。
 そして……

「はぁぁぁぁぁぁ、どっきり?」

 大声でどっきりであることを確認する。
 祈りを捧げていた人達が振り向くといなくなったはずのスタッフと血を吐いて倒れたマネージャー。

「えっ? だって……え?」

 島上は祭壇の前で吊るされいる人達と祈りを捧げていた人達を交互に指を指す。

「あぁ、これ?」

 神原が吊るされている神原の顔を見せる。

「……人形? 最低……最低なんだけど……」

 どっきりであることを明かすと、島上の怒りが爆発。
 不機嫌なままエンディングを撮り終え、宿に戻るも彼女の怒りは収まらない。

「これも仕事だから」

「こんなくだらない仕事、二度としたくない。NGにしておいてよ」

 スタッフの存在など気にすることなく、マネージャーに説教という名の怒りをぶつける。
 どっきりは新人タレントには登竜門的な番組だが、受け付けないタレントもいる。
 彼女はそういうものが大嫌いらしい。
 マネージャーを罵る姿は、お化けよりも怖い。
 スタッフ達も申し訳ないと思いながら、撤収する。
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