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直接交渉
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「お待たせしました」
局の一室で島上とマネージャーを迎える。
「いえ、本日は島上に声を掛けて頂きありがとうございます。前回の番組でドラマ出演が決まり山本さんには感謝しております」
「……ありがとうございます」
神原が頭を下げるので、一緒に頭を下げる島上。
彼女の様子から事前に頭を下げるよう言われていたのだろう。
どっきり番組だと分かった直後の彼女は本当に手が付けられない程荒れていた。
「いいえ。それでは、始めますね。電話でマネージャーの神原さんには企画内容を説明しましたが、もう一度させていただきます」
「「はい」」
「今回の企画は、『真冬に絶叫企画。実録ホラー映像、二時間』です」
夏場にすることが多い類の番組だが、冬の方が恐怖が増すのでは? という事で決定。
ドラマでは、弁護士・警察・医療モノは数字が取れると言われている。
バラエティーにも数字が取れるモノがあり、ホラー・激辛・害獣駆除をレギュラー番組の合間にすることが多い。
今回のホラーも、次のレギュラー番組の繋ぎであり半年に一度の企画。
ホラーはネットの普及により、視聴者自ら事故物件や廃屋に寝泊まりし配信している。
話題となった動画は投稿者に交渉し、そのまま放送することもある。
特に恐ろしい投稿映像に関して、実際に現場に潜入し検証をする。
「それで、島上さんにはこちらで厳選した場所に向かって頂きレポートしてほしいです」
ホラー系の番組はNGを出すタレントが多い。
それでも断らないのは、出初めの新人・再起をかけている一発屋・しばらく芸能活動を控えていたが復帰慣らしの芸能人が主だ。
「……私、スタジオでトークとかでもいいですよ?」
二人に番組内容を説明し終えると、島上が提案する。
『スタジオで……いいですよ』
ひっかかる言い方。
「えっと、スタジオでのトークは司会も出演者も既に決定しています」
「私も、そこで映像を見てコメントします。コメントには自信がありますから」
コメントに自信がある……そう話す島上。
「何言ってんだ、すみません」
島上の提案に神原が慌てて謝罪する。
「えぇっと、ですね。スタジオですと、台本も出来上がっていてセットの立ち位置やコメントの順番も決定しています。今からですと、島上さんは一番端でコメントも二言・三言くらいかと。それにVTR中は出演者が順々にワイプに移る程度です。ロケに出て頂ければ放送は必ずしますので、その時間は映ります……それでも、スタジオの方がよろしいですか?」
私は彼女に強要しているつもりは無い。
事実を提案しているだけ。
「島上、これはチャンスだ」
「チャンスって……私、怖いの苦手なんですけど。NG出してますよね?」
二人は小声で話し合うも私の耳にも届いている。
『聞こえていますよ』なんて言わず、聞こえていないフリをしてペットボトルのお茶を飲む。
彼女が怖いのが苦手なのは昔から。
断るなら断ればいい。
私はそのまま報告するだけ。
次に仕事を回すかどうかは、あちらのチームが判断する事。
私の嫌がらせではない。
名も売れていない個人活動になったばかりのアイドルの『一回』がどれほど貴重なのか。
別に私としてはスタジオが良いのなら、それでも構わない。
司会者や出演者は彼女より遥かに芸歴が長い。
彼等出演者も、今後の芸能活動の為に前のめりでコメントする。
そんな状況で新人が安易にコメントなんて出来ないだろう。
嫌がらせでもなく、一言もコメントできずに帰ってしまう新人は少なくない。
新人であれば軌跡が起きるのかもしれないが、結果を残せない個人活動アイドルに二度目が来ることはほぼない。
それだけの事。
どんな番組でもいいから出演したいという気持ちの強い者が残って行く。
ホラー番組だろうが、チャンスはチャンス。
今回のチャンスだって、欲しい人は沢山いる。
チャンスをモノに出来ないようなら、芸能界では難しい。
決断するのは本人。
二人は互いに意見を曲げない様子だったので、しびれを切らし声を掛ける。
「はいっ」
「無理にロケに向かわれなくても大丈夫ですよ。代わりの子に交渉しますから」
私の提案に揉めていた二人が『代わりの子』という言葉に反応し同じ表情を見せ視線を送り合う。
「……分かりました」
「それは……どちらでしょうか? 」
分かりました……だけでは、こちらが分からない。
「それでいいです」
「『それで』とは?」
ロケに行くこと?
スタジオでワイプに映るだけで構わないという事?
分からない。
「ロケに行きます」
島上はふてくされたように承諾。
彼女は恐怖体験をしてでもテレビに映ることを選んだよう。
「そうですか、分かりました。それでは後日、島上さんが担当される現場の詳細をお送りいたします」
ネット投稿の中でも選りすぐりの場所を……
局の一室で島上とマネージャーを迎える。
「いえ、本日は島上に声を掛けて頂きありがとうございます。前回の番組でドラマ出演が決まり山本さんには感謝しております」
「……ありがとうございます」
神原が頭を下げるので、一緒に頭を下げる島上。
彼女の様子から事前に頭を下げるよう言われていたのだろう。
どっきり番組だと分かった直後の彼女は本当に手が付けられない程荒れていた。
「いいえ。それでは、始めますね。電話でマネージャーの神原さんには企画内容を説明しましたが、もう一度させていただきます」
「「はい」」
「今回の企画は、『真冬に絶叫企画。実録ホラー映像、二時間』です」
夏場にすることが多い類の番組だが、冬の方が恐怖が増すのでは? という事で決定。
ドラマでは、弁護士・警察・医療モノは数字が取れると言われている。
バラエティーにも数字が取れるモノがあり、ホラー・激辛・害獣駆除をレギュラー番組の合間にすることが多い。
今回のホラーも、次のレギュラー番組の繋ぎであり半年に一度の企画。
ホラーはネットの普及により、視聴者自ら事故物件や廃屋に寝泊まりし配信している。
話題となった動画は投稿者に交渉し、そのまま放送することもある。
特に恐ろしい投稿映像に関して、実際に現場に潜入し検証をする。
「それで、島上さんにはこちらで厳選した場所に向かって頂きレポートしてほしいです」
ホラー系の番組はNGを出すタレントが多い。
それでも断らないのは、出初めの新人・再起をかけている一発屋・しばらく芸能活動を控えていたが復帰慣らしの芸能人が主だ。
「……私、スタジオでトークとかでもいいですよ?」
二人に番組内容を説明し終えると、島上が提案する。
『スタジオで……いいですよ』
ひっかかる言い方。
「えっと、スタジオでのトークは司会も出演者も既に決定しています」
「私も、そこで映像を見てコメントします。コメントには自信がありますから」
コメントに自信がある……そう話す島上。
「何言ってんだ、すみません」
島上の提案に神原が慌てて謝罪する。
「えぇっと、ですね。スタジオですと、台本も出来上がっていてセットの立ち位置やコメントの順番も決定しています。今からですと、島上さんは一番端でコメントも二言・三言くらいかと。それにVTR中は出演者が順々にワイプに移る程度です。ロケに出て頂ければ放送は必ずしますので、その時間は映ります……それでも、スタジオの方がよろしいですか?」
私は彼女に強要しているつもりは無い。
事実を提案しているだけ。
「島上、これはチャンスだ」
「チャンスって……私、怖いの苦手なんですけど。NG出してますよね?」
二人は小声で話し合うも私の耳にも届いている。
『聞こえていますよ』なんて言わず、聞こえていないフリをしてペットボトルのお茶を飲む。
彼女が怖いのが苦手なのは昔から。
断るなら断ればいい。
私はそのまま報告するだけ。
次に仕事を回すかどうかは、あちらのチームが判断する事。
私の嫌がらせではない。
名も売れていない個人活動になったばかりのアイドルの『一回』がどれほど貴重なのか。
別に私としてはスタジオが良いのなら、それでも構わない。
司会者や出演者は彼女より遥かに芸歴が長い。
彼等出演者も、今後の芸能活動の為に前のめりでコメントする。
そんな状況で新人が安易にコメントなんて出来ないだろう。
嫌がらせでもなく、一言もコメントできずに帰ってしまう新人は少なくない。
新人であれば軌跡が起きるのかもしれないが、結果を残せない個人活動アイドルに二度目が来ることはほぼない。
それだけの事。
どんな番組でもいいから出演したいという気持ちの強い者が残って行く。
ホラー番組だろうが、チャンスはチャンス。
今回のチャンスだって、欲しい人は沢山いる。
チャンスをモノに出来ないようなら、芸能界では難しい。
決断するのは本人。
二人は互いに意見を曲げない様子だったので、しびれを切らし声を掛ける。
「はいっ」
「無理にロケに向かわれなくても大丈夫ですよ。代わりの子に交渉しますから」
私の提案に揉めていた二人が『代わりの子』という言葉に反応し同じ表情を見せ視線を送り合う。
「……分かりました」
「それは……どちらでしょうか? 」
分かりました……だけでは、こちらが分からない。
「それでいいです」
「『それで』とは?」
ロケに行くこと?
スタジオでワイプに映るだけで構わないという事?
分からない。
「ロケに行きます」
島上はふてくされたように承諾。
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ネット投稿の中でも選りすぐりの場所を……
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