男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨 七緒

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なっ、恋人の話は遠慮しておきます

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「凛どうしたの?顔、赤いよ風邪?」

急いで凛に近寄り頬を両手で包む。
熱すぎる。
目も潤んでる、本当に風邪かもしれない。

「凛、部屋にいってもう休みな。風邪かもしれないから」

「あっあっ、ちが…ぅの」

小さく頭を振る凛はやはり先程とは違い弱々しく見える。

「凛、無理しないで」

「違うの、ぁの…ぁの」

「何?先輩と何か合った…の?」

疑いたくない。
先輩と凛がなんて。
やだよ。
胸が切り裂かれそうに苦しい。
先輩の姿を捕らえるも視界が歪み始める。

「勘違いすんなよ」

何を?俺は今何を勘違いしそうになってるの?

「兄ちゃん、あのね先輩の恋人の事を聞いてたの」

凛が俺の背中にすり寄り俯いたまま語り続ける。

「先輩の恋人がすごぉく…で、俺がビックリしちゃったの」

「せ、先輩のこぃびとの話?」

先輩の恋人って…俺の事?
俺の話をしてたの?
先輩に視線を移せば分かりやすく逸らされた。
まって、なら凛はどんな話を聞いたの?
顔を真っ赤にするほど内容って…。

「へぇ…恋人のぉ話ですかぁ?」

「兄ちゃん聞いたことある?先輩の恋人の事」

「えっあーうん少しぃだけっ?」

「会った事は?」

「えっ、会った事は…無いのかなぁ?」

凛、お願いこれ以上聞かないで。 

「兄ちゃん、あのね」

凛は近付き耳元で内緒話の様に教えてくれる。

「先輩の恋人、凄くエロいんだって」

ギッと先輩を睨み付ける。
凛になんて事を話しているんだ。
当の本人はベッドに肘を付きあらぬ方向を見ている。
そっちには机と本棚と壁しかありませんけど。

「そんでねっどんな風なのか聞いてたの」

「聞いてたの?そんな話聞かなくていいよ」

「えっ兄ちゃんは知りたくないの?」 

知りたいかって、自分の事はよく分かってるから。

「人のぉ恋人の事なんて…そんなっ」

「…やっぱり兄ちゃん恋人出来たんだ」

「えっ」

先輩の恋人から急に俺の話に。
まさかバレてる?

「なんで教えてくれなかったの?」

「な、な、な、何、何をいってぃるのっ」

「分かるもん、高校入ってから兄ちゃん変わった」

「…そんな事は…」

「俺には分かるのっ」

「んーそっかぁ」

俺ってそんなに分かりやすいのかな?
凛だから分かったのかな?

「兄ちゃんの恋人はどんな人?」

「えっどんなって…」

えっと先輩の前で先輩の事話すの恥ずかしい。
なんて言えば…困る。

「カッコ…かっ…わいい人?」 

「うんうん、それで」

そんな期待した目で見ないで。

「んー、年上?」

「年上なの?うんうん」

「…キスが上手いかなっ」

「わぁー」

興奮した凛の声にはっとした、俺は凛になんて事を話しているんだ。

「もう、終わり終わり」

「えーもっと聞きたいよ」

「ダメダメ、そのぉーほらっ本人に悪いから」

「…んーそっかぁ、恥ずかしいもんね。分かった」

凛を誤魔化すためとはいえ、落ち込んでしまった凛に申し訳ない。
相手が先輩ってことで正直に話せないのが残念でならない。
いつか、俺は凛に正直に話せる日が来るのだろうか。

「俺も高校生になったら恋人出来るかな?」

「っ」

だめ、男子校で恋人なんて…。
凛はずっと綺麗なままでいて欲しい。

「急いで作ろうとすると後悔するから、焦ることはないよ。この人と一緒にいたいなぁって好きだなぁーって思える人にするんだよ。流されちゃだめ」

「うん、わかった」

自信満々に答える凛が心配でならない。
本当に大丈夫なのだろうか?
今から来年の事が心配だよ。
凛に変な人が近付く事がない様に祈ってばかりだ。




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