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05.こんな日もある
しおりを挟む昼食は事務所で手軽に食べられるものを用意する。
今日は都築が一度も食べたことがないと言っていたカップ麺から、蘭太がおすすめを厳選してきた。
「おいしい……うまい……っ! 蘭太くん、きみは天才だよ! 選ばれし人間だ! カップ麺までこんなにおいしく作れるなんて!」
鼻水垂らすほど泣きながら麺をすすっていた都築が、蘭太を褒めちぎる。
「お湯注いだだけですけど」
蘭太は常々思うのだが、都築は自身の顔面の良さについてどのように考えているのだろう。こんなに盛大に泣いてもイケメンであることが揺るぎないからこそ、彼は憚ることなく蘭太の前で号泣できるのか?
「いやいや! きみの手が加わることが何より重要なんだ。蘭太くんが作ったものなら、泥団子だってご馳走さ」
「大袈裟だなあ」
「そうでもない」
一人淡々と食事をすすめていた黒井が都築の発言を擁護するようなことを言った。
「俺が試しに作ったものは、ことごとく駄目だった。蘭太は本当に、選ばれた人間なのかもな」
そこで来客があり、昼食は中断された。
◇◇◇
お祓いの依頼に来た客の話を聞くと、都築は軽くお祓いの真似事をして塩を渡し、よくよく言い聞かせるだけで帰してしまった。
「よかったんですか?」
「あれはただの体調不良だよ」
依頼人は最近肩が重いとか頭痛がするとか、身体が怠いとか、霊が取り憑いているに違いないと言っていた。
「なんとなく霊がいるような気がして、気に病んで、よく眠れなかったり、食事が疎かになったりしてたんだろうね」
「『はざまの住人』は全然関係ない?」
「ないね。あの人にも言ったように、ちゃんと三食食べてしっかり眠れば、それで解決だよ」
「はあぁー……よくわかりましたね」
「長いこと祓い屋なんてやってるとね、自然とわかるようになってくるのさ」
来客により一旦隠していた食べかけのカップ麺を手に戻ってきた都築は、「伸びてもうまい!」と嬉々として汁を吸った麺をすすりだした。
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