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01.愛なんてなかった
しおりを挟む愛なんてなかった。
「もう散々子ども扱いしてやっただろう」
当たり前だ。梨人はまだ子どもだった。当時、十四歳。心も身体も未熟で、出来上がっていない。大人の庇護を必要とする、か弱い生き物だった。
「ま、待って……おとうさ、」
「ほら、脱げよ。股開け。わかるだろ? セックス。もう意味知ってるよな?」
「おとうさん、や……ぃや……っ」
養父は梨人をリビングの床にうつ伏せに押さえつけると、強引に下着ごとパジャマのズボンを引き下ろした。中途半端に膝下で絡んで、うまく身動きが取れなくなる。
「おとうさ……っ、いや……! やめて……!」
自由な両腕で這うように逃げようとしたが、あっさりと引き戻された。腰を上げるように固定され、尻たぶを両手で鷲掴まれる。感触を確かめるようにぐにぐに揉まれた後、尻のあわいを左右に開かれた。梨人の喉から、引き攣れた声が漏れる。養父の息が、尻の狭間にかかる湿った呼気が、荒く、小刻みになっていくのだ。はっ、はっと、声のような呼吸音が、耳につく。
「ひい……っ!」
ぬろり、と。ぬめった肉が排泄以外に使用したことのない窄まりを撫でて、鳥肌が立った。ちゅう、と吸い付いて、また、皺をなぞる。養父が、自分のあらぬところに口をつけている。キスをして、舐めている。
「やだ! おとうさんっ! いゃ……っ!」
「こら! おとなしくしろ!」
「う……っ!」
がむしゃらに暴れたら、頭を掴まれて床に打ち付けられた。何度も、何度も繰り返し痛みを与えられて、抵抗する気力がすっかり萎んでしまう。力無く開いた両目から、止め処なく雫がこぼれた。
後孔に舌を挿し込み、中までじっくり味わって、両手の親指でぐずぐずになるほど解すと、とうとう養父は自身のズボンに手をかけた。梨人はもう、ただ寝そべって嵐が過ぎ去るのを待っていた。
「はは、梨人。喜べ。お父さんが、おまえを大人にしてやるからな」
これから入れるべき孔を確認するように親指で尻たぶを寄せられ、もう片方の手で支えられた張りつめた性器を、ぐっと押し付けられる。先端がぬるっと滑って先走りを引き伸ばした。
「あ゛……ああ……っ!」
切っ先が侵入してくると、梨人の身体は反り返って拒絶を示した。
「ああ……きつきつだな……梨人ォ……!」
「や……! やあぁ゛……っ! あ゛!」
少し進んで、引かれて、また入ってくる。
「そんなに締め付けるなよ、梨人。食い千切られそうだ……っ」
「ぁ゛あ……っ、ぎ……っ」
「んん~ぅん……はい、ーーった!」
「あ゛!」
どちゅん! と、一番奥を勢いよく突かれて、梨人の身体が跳ねる。それを背後から押さえつけて、養父は容赦のない抽挿を浴びせてきた。
「おら! らっ! おらあっ!」
「あ゛っ! ぁ゛! ンあぁ゛っ!」
自分の快感だけを追う動き。梨人のことなんて、まるで考えていない。
「ははっ、気持ちいいんだろ! イイ声で鳴く、なあっ!」
気持ちいいとかはわからなかった。声が出るのは、ただただ内臓を無遠慮に突き上げられている反射からだ。
肉同士がぶつかって生まれる破裂音が、徐々に間隔を狭くしていく。両腕を後ろに引かれて、上半身が持ち上がった。顎が浮き、湧き出た汗が全身を伝い落ちる。
「おらっ! 出すぞっ」
喉を晒し、舌を突き出して抵抗することもできずただ喘ぐだけになった梨人へ、養父は孕ませんばかりに腰を押し付けて中出しした。腕を放され、力無く前へ倒れ伏す梨人から、長々とした射精を終えたペニスが抜ける。
やっと終わったのだ。
まだ中に挟まっているような異物感を感じながらも、梨人は疲れ果てた心身の休息のため目を閉じようとしてーーしかし、許されなかった。
「おいおい、梨人ォ……誰が終わりなんて言った?」
「ぉ、とうさ……」
たった今しがた精を吐き出したばかりの性器が、雄雄と天を向いている。バキバキに勃起して、赤黒く血管まで浮いていた。
「や…………」
梨人のか細い悲鳴は、誰にも届かなかった。
◇◇◇
ど~う考えても、あれで性癖歪んだよなあ。
「おらっ! イけっ! 無理矢理犯されて惨めにイけよっ!」
「やあぁ゛っ!」
今日の相手は、割とよく会う男だった。変に詮索してこないし、身体の相性もいい。顔立ちも目を見張るほどのイケメンではないが、嫌悪感を抱くほどの不細工でもない丁度よさだ。それに何より、互いの求める性癖が合致している。梨人は無理矢理犯されたくて、男は無理矢理犯したい。でも警察沙汰にはなりたくない。利害の一致だった。
「イけっ! イけっ!」
「あ゛! あァあぁ゛~!」
「おいっ! イく時はちゃんとイくって言えっ!」
仕事帰りに公園で落ち合い、挨拶もそこそこに木陰に忍んで、青姦レイプごっこに興じている。
「いやっ! や゛! あ゛っ!」
「孕ませてやる!」
「やめでっ! 嫌ぁ゛ああっ!」
「孕めっ! どこの誰とも知らない男のガキ孕んじまえっ!」
「ぁ゛あァああぁ~~~!」
両手首を草むらに力いっぱい縫い止められ、真上から繰り返しプレスされる。もう何度もイってるのに、奥の奥まで無理矢理犯されているという快感に抗えず、梨人は何度目かの絶頂に達した。うねって締まる中を存分に味わうように肉筒で自身の怒張を数回しごいた男は、ぴったり腰を密着させて梨人に種付けする。その時だった。
ーー代わってくれ……っ!
どこからか、悲痛な声が届いた。
ーーそんなにレイプされたいなら、僕と代わってくれよ……っ!
どこからか、というか。脳内に直接発せられているような気がする。
(俺と代わってほしいって……あんたもレイプされたいの?)
ーー違うっ! されたくないから代わってほしいんだ!
(何、あんた、レイプされそうなの)
ーー先代魔王に見初められちゃったんだよ! おかげでご機嫌取りのための生贄にされちまった!
(魔王~?)
ーー先代魔王! 残忍酷薄で有名だったんだ! 最悪だよ!
出し切った男が身体を離し、青姦レイプごっこの後始末にかかるのを横目に、梨人は脳内会話を続ける。
(それで、レイプされるって?)
ーーもう魔王の城まで連行されてるんだよ! ベッドの上さ! 逃げられない! 僕の合意がない以上、このままセックスしたらレイプだよレイプ! 嫌だあああ!
(なんで嫌なの? 魔王ブサメンなの?)
ーー先、代、魔王ね! イケメンとかブサメンとかどうでもいいんだよ! 僕はただ掘られるのが嫌なの! まだ女の子ともセックスしたことないのにぃいいい!
(俺も童貞だけど)
ーーきみは自分から望んで抱かれにいってるじゃん! 合意の上のレイプじゃん!
(まあ、そうか)
ーー代わってくれよぉおお……レイプされたくないよぉおお……こんなこときみにしか頼めないよぉおお……!
梨人はちょこっと考えた。こんなに嫌がってるなら代わってあげてもいいのでは? いや、でも、待ーー
ーーほんとに!? ありがとう!
(は!?)
ーーこの恩は一生忘れない!
(ちょい待)
ーー先代魔王の相手さえしとけば一生遊んで暮らせるから! じゃ! よろしくね!
(おい! ちょ、)
瞬きしたその一瞬で、梨人は世界を渡っていた。
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