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07.とうとうここまで堕ちてきた
しおりを挟む明らかに、距離が近くなっている。
いつの間にか、少しずつ、シィルは自分の存在がそばにあることを、梨人に自然と受け入れさせていた。それが、意図したものなのか、図らずもそうなったのか、わからないけれど。
ふとした時のボディタッチが増えていきーーこれはおそらく、ただ単にシィルが梨人に触れたかっただけ。
二人きりの茶会の時に膝が当たるほど近くに座るようになりーー以前は向かい合って座っていた。
連れ立って歩く時、当然のように腰を抱かれるーー密着して歩く二人を、城の者達もそれがさも普通ですとばかりに受け入れていた。
あまりにも、鮮やかな手際だった。梨人は途中まで、シィルが距離を詰めてきていることに、全く気づかなかったのだ。ここまでにいたる過程で、あらなんか距離感バグってきたなと気づけたのは、ひとえに赤毛の青年のおかげだった。
なんせ彼、いっちょ前に嫉妬していたのである。
シィルと共にいると、視線を感じると思っていた。それも、熱く、焦がすようなじりじりとした眼差しだ。シィルとの距離が狭くなるほどそれは暗く湿度を増し、怒りを孕んで梨人の肌を突き刺す。
青年との情事は、日に日にしつこくねちっこくなっていた。
それが、楽しくてーー愉しくてなあ!
最近は、わざとシィルにくっついていた。距離感が近過ぎるから悋気を起こされているのだと気づいて、いつの間にこんなに距離を詰められていたのかと驚きつつ、それを利用した。梨人と触れ合えてシィルは嬉しい。妬いた青年に激しめに抱かれて梨人も嬉しい。赤毛の青年だって、嫉妬というスパイスで味付けされた梨人とのセックスを、楽しんでいるに違いないのだ。ほら、いいことばっかりじゃないか。
◇◇◇
「あれ? 花は?」
シィルとリェイダルとの夕食を終え、自室に戻ってきた梨人は、そこに飾られてあるべき紅い花が見つからず世話係の青年に問うた。
花には興味がないけれど、シィルが梨人を喜ばせようとくれたものだったから。その気持ちが嬉しくて、部屋に飾っておこうと思ったのだ。でも、今まで興味がなかったから世話の仕方もわからず、自分の世話係にお任せした。その花が、ない。
「火にくべました」
「ーー……え?」
「リヒト様がシィル様からいただいた紅い花は、僕が火にくべました」
平坦な声で驚きの告白をする彼を振り向けば、ギラギラと欲に塗れた眼差しが梨人をその場に縫い付けた。
鳥肌が立った。歓喜で。
堕ちてきた。とうとうここまで、堕ちてきた。
嫉妬に狂い、梨人がシィルから貰ったなんの罪もない花を焼き殺してーー
「リヒト様はシィル様のことどう思っていらっしゃるんですか好きなんですか違いますよねだってリヒト様はシィル様には身体を許してないあんなにべったりくっついてるけど抱かれてはいないリヒト様が受け入れてくださるのは僕だけだ僕だけがリヒト様を抱くことを許されてるそうでしょうリヒト様リヒト様リヒト様リヒト様ーー」
青年の手が、まっすぐ伸びてくる。
それを、梨人は、恍惚の笑みを浮かべて受け入れた。
◇◇◇
「リヒト様は、僕のっ、もの……っ、ですよ……ね……っ?」
後ろから髪を鷲掴みにされ、床に強く押し付けられながら、犯される。衣服は中途半端に乱れ、腕は背後でまとめて拘束されていて、今ここに第三者が現れたら、迷いなくレイプ現場と決めつける様相を呈している。
「ち、が……っぁ」
「リヒト様は僕のものです……っ、僕の……っ!」
「ちが、ぅ……っ」
「何を……っ」
「俺っ……は、シィル……ん゛……ぅ、の、」
「違う!」
赤毛の青年が梨人に自分は彼のものと言わせたいことなんてしっかり承知の上で、梨人は否定した。
「お、れは……っぁ! シィイ……ル……の、もの……っあ゛」
「そんなわけない!」
「んあぁ゛っ!」
ぐりっと奥を抉られて、梨人は大きく仰け反って叫んだ。
「リヒト様は僕のものだ! だって、ほら……っ!」
どちゅん、どちゅん……っ、どちゅん! どちゅんっ!
大きなストロークで、腰を振るわれる。
「んあ゛! やぁ゛っ! んあぁ゛あっ……!」
拘束され寝そべる梨人に上から体重をかけ、重く激しい腰使いで何度も何度も繰り返し穿たれる。
「リヒトっ、様はっ、僕のっ、ものっ!」
「あ゛! がう……っ! ちがっ! ぁ!」
「違わないっ! だって! もう! リヒト様の中はっ!こんなにっ! 僕の形っ! してるっ!」
「ゃーーーーーーぁああ……っ」
奥まで捩じ込まれて、梨人は絶頂に達した。張り詰めていた性器が弾けて、白濁を撒き散らす。一旦ペニスを抜かれたかと思うと、ひっくり返されて体位を変えられ、大きく股を開かされて正面から受け入れさせられる。ぬかるんだ中は、喜んで自身を犯す杭を呑み込んだ。
「あっ! あ゛っ! あぁっ! あ゛!」
強引に抽挿されているのに、身体の下敷きになった両腕が痛いのに、それでも、感じてしまう。きゅんきゅんする。疼いて疼いて仕方ない。元々犯されることが好きな梨人の魂も、すっかり抱かれることに慣れたキケルの身体も、男を咥え込んで大層喜んでいる。放したくないと絡みついて、精を強請って必死に吸い付いている。
「あぁ゛……うねる……っ! リヒト様の身体も……っ、僕がいいって……っ! 僕が欲しいって……言ってる……っ!」
「あァぁ゛……っ、やめ……っ! や……っぁ゛」
「あげる……っ! 僕の子種……っ、好きなだけっ、差し上げます……っ! リヒト様は僕のものだから……っ、僕の匂い、つけておかないと……っ! ね……っ?」
「や……っ、いゃ゛……っ! やめ、ぁ゛……! 嫌……!」
逃げる振りをした腰を固定され、力ずくで押さえ込まれる。身体を折り畳まれた梨人の上向いた尻に腰骨を乗せ、脚をまっすぐ後ろへ伸ばして接合部に体重を掛けた赤毛の青年は、ラストスパートとばかりに激しく梨人の肉筒で熱り立った怒張をしごいた。
「あ゛! あっ! あ゛! ア!」
「イきます! イく! 出す!」
「ァ! や! や゛ァ! っぁ!」
「出します! 中っ! 中にっ!」
「ア゛ぁーー…………っ」
最っ高にゾクゾクした!
ーーその時だった。
「何をしている」
地を這うような低い声と共に、たった今梨人に子種を注いでいた青年が蹴り飛ばされる。
凍えるほどの無表情の中で、ふたつの瞳に憤怒の色を浮かべた先代魔王が、冷たく梨人を見下ろしていた。
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