愛は、ここに。

音成さん

文字の大きさ
6 / 11

06.歪な形でそこにある

しおりを挟む

「ん゛……んぅ゛うん……っ、んん゛ーーっ」
「声、おさえてください……っ。シィル様に聞こえてしまいます……!」
「…………っ! ーーっ……、……っん!」
「そう……そうですっ……お上手です……っ、リヒト様……っ」

シィルが公務でいない隙に、自身の世話係を部屋に連れ込んで情事に耽る。もう両手の数では足りないくらい身体を重ねて、赤毛の青年もすっかり梨人との密事に慣れてしまった。
どこを触れば感じるのか、どう声を掛ければ興奮するのか、好きな体位、本気でやってほしくないことーー互いのセックスの好みも、それなりにわかってきた。

梨人は今自分を犯しているこの世話係の青年が、なんという名前なのかすらも知らないのに。

「ハ、はぁ……リヒト様……リヒト様……!」

テーブルに肘をついて尻を突き出し、背後から立ったまま穿たれる。今日はすぐ隣の部屋でシィルが仕事をしている設定で、声が漏れないように梨人は鼻から下を赤毛の青年の手のひらで覆われていた。

「ーーっ! ぐぅ……っ! んん゛ぅ……っ」
「今日は、ゆっくり……しましょう……っ、ね……っ!」
「ぅ……っ! ぁ゛……っ、……! ………っ!」
「時間はまだ、ま、だ……っ! あります……っ」

言葉の通り、じっくり味わうように腰を前後に揺すられる。とんっと奥まで突かれて、ずるずるゆっくり引き抜かれ、また腰を押し付けられる。緩やかな抽挿は、じわじわとした快感をもたらした。だがそれは、長く気持ちがいいと同時に、なかなかイけないということでもある。

「んーー……っ、ん゛! ん゛! んん!」
「リヒト様?」

口元を覆う手を、指先でつんつん突いて外させる。顔だけで振り向いて、潤んだ瞳で見上げれば、梨人に埋められた劣情の証がさらに膨らんだ。

「も……っ、イきた……い……っ」

ダメ押しに咥え込んでいるものをきゅっと締め付けると、梨人を犯す青年は獰猛な顔で笑った。梨人の細い腰を両手で掴み、身を寄せて、興奮に震える声で囁く。

「じゃあ、一緒にイきましょう……っ」

今までのスローペースなセックス全て前戯だったみたいに、激しい快感の波が襲ってきた。がつがつ掘られて、尻たぶに下腹部がぶつかる。梨人の喘ぎ声も、接合部から漏れる卑猥な音も、肌と肌が衝突して立つ大きな音も、全部混ざって奏でられる性交の音が、広い部屋に反響する。もう設定なんか、どこか遠くへ忘れ去られていた。

「あ゛! イく! イ、く……っ! イぐ……っぅ!」
「僕も……っ、イきます……ィ、く……っ」

一足先に中で欲望が弾け、吐き出した精を擦り込むように止まらない抽挿に後押しされて、梨人も絶頂に身を震わせた。





◇◇◇





ゾクゾクする。

「シィル、今回は帰ってくるの早かったんだな」

でも、足りない。

「ああ。夕食に間に合うとなったら、リヒトと共にしたいと思うてな。少々急がせた。私が不在の間、変わりなかったか」

もっと、もっと。

「うん。みんなよくしてくれる」

あの子も悪くはないんだけど。
ちょっと無理矢理感が足りないんだよな。

「リヒト?」

もっと、もっとーー

「腹を押さえて、どうした? 痛いのか?」

……無意識に、腹を擦っていたようだ。

「ううん。食べ過ぎたかな。お腹いっぱいなだけ」

うん、ほんとに。
お腹いっぱいなんだ。



あんたが帰ってくるまで注がれ続けた、あの子の俺への淫欲の白蜜を、まだここに入れたままだからさ。





◇◇◇





……バラしてみるか?

風呂場で尻に溜めていた精液を掻き出しながら、思案する。
思い浮かべるのは、離れていた寂しさを埋めるように、今夜もただ同じベッドに入って眠ることを望んできたかわいい男のことだ。梨人が承諾すると、花を飛ばして喜んでいた。性欲なんて考えたこともない、幼子のように。

「バラしてみるか……?」

今度は、口に出す。口角が、上がる。
シィルの居ぬ間に、この身体は名も知らぬ世話係にさんざん汚されたと。

梨人を本気で好いているというのなら、シィルは怒るだろうか?
いや、悲しむかもしれない。
落ち込むだけ落ち込んで、梨人の心の在り処を問うかもな。
かわいいシィルは、怒りに呑まれて梨人を無理矢理犯すなんてこと、きっとできやしない!


ーーああ! 犯されたい!
ボロ雑巾のように犯されたい!


おとうさん、あなたは本当に罪深い。
俺をこんなに歪めてしまった。

もう戻れやしない。
粉々にひび割れて砕け散ることもできない。
壊れることも許されない。

ただ、歪な形でそこにある。
歪を晒して生きている。



ははっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...