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06.歪な形でそこにある
しおりを挟む「ん゛……んぅ゛うん……っ、んん゛ーーっ」
「声、おさえてください……っ。シィル様に聞こえてしまいます……!」
「…………っ! ーーっ……、……っん!」
「そう……そうですっ……お上手です……っ、リヒト様……っ」
シィルが公務でいない隙に、自身の世話係を部屋に連れ込んで情事に耽る。もう両手の数では足りないくらい身体を重ねて、赤毛の青年もすっかり梨人との密事に慣れてしまった。
どこを触れば感じるのか、どう声を掛ければ興奮するのか、好きな体位、本気でやってほしくないことーー互いのセックスの好みも、それなりにわかってきた。
梨人は今自分を犯しているこの世話係の青年が、なんという名前なのかすらも知らないのに。
「ハ、はぁ……リヒト様……リヒト様……!」
テーブルに肘をついて尻を突き出し、背後から立ったまま穿たれる。今日はすぐ隣の部屋でシィルが仕事をしている設定で、声が漏れないように梨人は鼻から下を赤毛の青年の手のひらで覆われていた。
「ーーっ! ぐぅ……っ! んん゛ぅ……っ」
「今日は、ゆっくり……しましょう……っ、ね……っ!」
「ぅ……っ! ぁ゛……っ、……! ………っ!」
「時間はまだ、ま、だ……っ! あります……っ」
言葉の通り、じっくり味わうように腰を前後に揺すられる。とんっと奥まで突かれて、ずるずるゆっくり引き抜かれ、また腰を押し付けられる。緩やかな抽挿は、じわじわとした快感をもたらした。だがそれは、長く気持ちがいいと同時に、なかなかイけないということでもある。
「んーー……っ、ん゛! ん゛! んん!」
「リヒト様?」
口元を覆う手を、指先でつんつん突いて外させる。顔だけで振り向いて、潤んだ瞳で見上げれば、梨人に埋められた劣情の証がさらに膨らんだ。
「も……っ、イきた……い……っ」
ダメ押しに咥え込んでいるものをきゅっと締め付けると、梨人を犯す青年は獰猛な顔で笑った。梨人の細い腰を両手で掴み、身を寄せて、興奮に震える声で囁く。
「じゃあ、一緒にイきましょう……っ」
今までのスローペースなセックス全て前戯だったみたいに、激しい快感の波が襲ってきた。がつがつ掘られて、尻たぶに下腹部がぶつかる。梨人の喘ぎ声も、接合部から漏れる卑猥な音も、肌と肌が衝突して立つ大きな音も、全部混ざって奏でられる性交の音が、広い部屋に反響する。もう設定なんか、どこか遠くへ忘れ去られていた。
「あ゛! イく! イ、く……っ! イぐ……っぅ!」
「僕も……っ、イきます……ィ、く……っ」
一足先に中で欲望が弾け、吐き出した精を擦り込むように止まらない抽挿に後押しされて、梨人も絶頂に身を震わせた。
◇◇◇
ゾクゾクする。
「シィル、今回は帰ってくるの早かったんだな」
でも、足りない。
「ああ。夕食に間に合うとなったら、リヒトと共にしたいと思うてな。少々急がせた。私が不在の間、変わりなかったか」
もっと、もっと。
「うん。みんなよくしてくれる」
あの子も悪くはないんだけど。
ちょっと無理矢理感が足りないんだよな。
「リヒト?」
もっと、もっとーー
「腹を押さえて、どうした? 痛いのか?」
……無意識に、腹を擦っていたようだ。
「ううん。食べ過ぎたかな。お腹いっぱいなだけ」
うん、ほんとに。
お腹いっぱいなんだ。
あんたが帰ってくるまで注がれ続けた、あの子の俺への淫欲の白蜜を、まだここに入れたままだからさ。
◇◇◇
……バラしてみるか?
風呂場で尻に溜めていた精液を掻き出しながら、思案する。
思い浮かべるのは、離れていた寂しさを埋めるように、今夜もただ同じベッドに入って眠ることを望んできたかわいい男のことだ。梨人が承諾すると、花を飛ばして喜んでいた。性欲なんて考えたこともない、幼子のように。
「バラしてみるか……?」
今度は、口に出す。口角が、上がる。
シィルの居ぬ間に、この身体は名も知らぬ世話係にさんざん汚されたと。
梨人を本気で好いているというのなら、シィルは怒るだろうか?
いや、悲しむかもしれない。
落ち込むだけ落ち込んで、梨人の心の在り処を問うかもな。
かわいいシィルは、怒りに呑まれて梨人を無理矢理犯すなんてこと、きっとできやしない!
ーーああ! 犯されたい!
ボロ雑巾のように犯されたい!
おとうさん、あなたは本当に罪深い。
俺をこんなに歪めてしまった。
もう戻れやしない。
粉々にひび割れて砕け散ることもできない。
壊れることも許されない。
ただ、歪な形でそこにある。
歪を晒して生きている。
ははっ!
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