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2話《エン‥エレは俺が恋するゲームだりゃ!》
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「んん~。んん゙~~……っ」
ねみぃ。ああ……ねみぃ。だが、しかし、起きなきゃならん。今日は一限から講義。しかもとてもじゃねぇけど外せねぇやつ。どうせはじめは起きねぇ。自力じゃなにがあってもあいつは起きねぇ。じゃあ俺が起きるしかねーじゃん。起きて、あのドデカイねぼすけちゃんを叩き起こして、大学まで引っ張ってくしかねーじゃん。あーもう!ほんと!世話の焼ける男っ!そゆとこ嫌いじゃないけどねっ!手のかかる相手、むしろ、好ましいですけどねっ!
ならばしゃっきり目を覚まそう。すぐ飛び起きて布団を畳んで、朝メシをビシバシ作ろう。ジャムとバターでベトベトのトースト。そのまんまヨーグルト。今日は特別にレタスもビリバリちぎってやるかぁ!?
「んんん……っ」
いや……だが……待て。それにしても、やけに布団がふかふかだな。最近干すのサボってたのに、湿気もまるでなくふあっふあ。しかもなんかいい匂いまでしてやがる。はじめ、香水なんか持ってたっけ?花みたいな……柑橘みたいな……うーん、とっても、いいにお~い……♡
「──おい、まだ起きねぇぞ?お前、乱暴な運び方してねぇだろうな?」
「言い掛かりは止めて下さい。私はきちんと丁重にお運びしました。貴方こそそんな乱暴な手付きで大事な来訪者様に触って、恥ずかしくないんですか?」
「あぁ?俺の伴侶になるかもしれねぇ相手だからな。触れるのは逆にマナーだろ?」
「口が軽く手が早い貴方には似合いの低俗なマナーですね。逆に感心しますよ」
「ったく、なんでそうお前はいちいち喧嘩腰なんだよオイ。もっと穏便に話せばいいだろ?相変わらず陰険メガネを気取りやがって」
「面と向かって相手を「陰険メガネ」などと呼ぶ時点で喧嘩腰にもなりますよ。貴方もいい加減、見境なく相手に迫るのを止めたらどうですか?」
「へぇ……そこまで言うってことは、やっと俺へ振り向く気になったか」
「なりません。ちょ……腰を抱くのを止めなさい!」
……。……。
ちょっと……待て……頭の上で……なんか……すげぇ……聞いたことある会話が、聞こえてくる……。明らかに……サラマンダー様と……明らかに……ウンディーネの……口喧嘩……ファンの間じゃ痴話喧嘩とか……ケンカップルとか……当たり前に言われてる……赤と青の二人の……やり合いが……通常運転の……会話が……聞こえてくる……。
なんで……なん……夢……?エン‥エレはボイスがねぇから、そもそも声で会話が聴こえてくるってのがおかしいのに……えぇ……?テレビでギリギリまでエン‥エレ見てたからそのせい……?いや、でも、はじめはもうトゥルーエンドルートに入ってたし……この二人がゴリゴリに出る幕とかなかったし……そもそもこれ来訪者が目覚めてない段階の、明らか冒頭の会話だし……なんで……なん……なんこれぇ……。
「起きるまで待ってやりてぇが、生憎俺は用事があるんでな。ディーネ、後は任せるぞ」
「はぁっ!?いえ、私だって忙しいんですよ!?なんでもかんでも私に押しつけないで下さい!」
「俺だって名残惜しい。折角エターニアでの最初の目醒めだ、是非とも俺を初めにその目へ焼きつけて貰いたい──。だが、その役目をお前に譲ると言ってるんだぞ?光栄な話だろう?」
「だ……だからって今私をそれ程見つめる必要なんてないでしょう……!いい加減にして下さい、サラ……っ!」
「………………。。。。。。」
んおおぉぉ゙……んおおぉぉ゙……ッ。
出た……出ちまったよぉ……明らかな関係性匂わせがよぉ……。俺がブチギレ散らかすドアウトド真ん中が、来ちまったよォ……。いや……わかってる……わかってるぜ……エン‥エレのもうひとつの良さは、「コレ」……。主人公と賢者だけじゃなく賢者同士の絡みや匂わせもある所……特に賢者同士は公式のルートがなくて最後まで描かれない分、外野の人気は相当なモンで……エン‥エレを広めた要素のひとつになってるって……いやいや……そんなエン‥エレ界の常識は……俺だって、当然、理解しとりますよぉ……?でも……けどよぉ……俺は……俺が……サラマンダー様と……恋愛したい勢な、わけでぇ……。だから……そういう意味でも……ウンディーネは……いけ好かない、わけでぇ……!!!!
「だぁぁあ~~!!!!!!!!だから──その──あからさまに──実は仲がいいんです♡アピールの──あだ名呼びを──やめろォ~~~~ッッッ!!!!!!」
「うわっ!」
「わぁっ!」
推しとライバル(※実際はライバルではなく攻略対象だッ)の絡みについぞ我慢できなくなった俺は、勢いよく起き上がってカッと目を見開く。目の前の不届き者どもに文句のひとつでも言ってやろうと思ったからだ。
「おっ、丁度良くお目覚めか!俺を引き止めてくれたんだな?いじらしいじゃねぇか、来訪者!」
「随分お寝坊さんでしたね。お早う御座います、来訪者様」
「えっ。っ。ッ。っ──!!!!!!!????????」
……だが。
実際に視界へ広がった目の前の景色に……俺はただただ絶句する。
そこに居たのはモノホンのサラマンダー様とウンディーネ。ゲーム画面越しに何度だって見てきた、『エント‥エレメント』のキャラクター。そしてそのキャラクターが住まう世界、「エターニア」。
今まではイラストやスチルでしか見ることができなかったそのすべてが、俺の前に、さも当然のように広がっていて。
俺は。
俺は──。
「きゅーん──♡♡♡」
「うわっ!倒れたッ!!」
──あまりに理想的すぎる現実を前に、なにも理解することができずふたたび無常にも気絶したのでした♡
召すッ!!!!!!!!!!!
【TIPS】
・エン‥エレでの『来訪者』起床時の会話はランダムな賢者が二人選ばれ、ここでしか出てこない情報もある。
・ウンディーネの身長は179cm。好きなものは澄みきった静寂。齢28。
ねみぃ。ああ……ねみぃ。だが、しかし、起きなきゃならん。今日は一限から講義。しかもとてもじゃねぇけど外せねぇやつ。どうせはじめは起きねぇ。自力じゃなにがあってもあいつは起きねぇ。じゃあ俺が起きるしかねーじゃん。起きて、あのドデカイねぼすけちゃんを叩き起こして、大学まで引っ張ってくしかねーじゃん。あーもう!ほんと!世話の焼ける男っ!そゆとこ嫌いじゃないけどねっ!手のかかる相手、むしろ、好ましいですけどねっ!
ならばしゃっきり目を覚まそう。すぐ飛び起きて布団を畳んで、朝メシをビシバシ作ろう。ジャムとバターでベトベトのトースト。そのまんまヨーグルト。今日は特別にレタスもビリバリちぎってやるかぁ!?
「んんん……っ」
いや……だが……待て。それにしても、やけに布団がふかふかだな。最近干すのサボってたのに、湿気もまるでなくふあっふあ。しかもなんかいい匂いまでしてやがる。はじめ、香水なんか持ってたっけ?花みたいな……柑橘みたいな……うーん、とっても、いいにお~い……♡
「──おい、まだ起きねぇぞ?お前、乱暴な運び方してねぇだろうな?」
「言い掛かりは止めて下さい。私はきちんと丁重にお運びしました。貴方こそそんな乱暴な手付きで大事な来訪者様に触って、恥ずかしくないんですか?」
「あぁ?俺の伴侶になるかもしれねぇ相手だからな。触れるのは逆にマナーだろ?」
「口が軽く手が早い貴方には似合いの低俗なマナーですね。逆に感心しますよ」
「ったく、なんでそうお前はいちいち喧嘩腰なんだよオイ。もっと穏便に話せばいいだろ?相変わらず陰険メガネを気取りやがって」
「面と向かって相手を「陰険メガネ」などと呼ぶ時点で喧嘩腰にもなりますよ。貴方もいい加減、見境なく相手に迫るのを止めたらどうですか?」
「へぇ……そこまで言うってことは、やっと俺へ振り向く気になったか」
「なりません。ちょ……腰を抱くのを止めなさい!」
……。……。
ちょっと……待て……頭の上で……なんか……すげぇ……聞いたことある会話が、聞こえてくる……。明らかに……サラマンダー様と……明らかに……ウンディーネの……口喧嘩……ファンの間じゃ痴話喧嘩とか……ケンカップルとか……当たり前に言われてる……赤と青の二人の……やり合いが……通常運転の……会話が……聞こえてくる……。
なんで……なん……夢……?エン‥エレはボイスがねぇから、そもそも声で会話が聴こえてくるってのがおかしいのに……えぇ……?テレビでギリギリまでエン‥エレ見てたからそのせい……?いや、でも、はじめはもうトゥルーエンドルートに入ってたし……この二人がゴリゴリに出る幕とかなかったし……そもそもこれ来訪者が目覚めてない段階の、明らか冒頭の会話だし……なんで……なん……なんこれぇ……。
「起きるまで待ってやりてぇが、生憎俺は用事があるんでな。ディーネ、後は任せるぞ」
「はぁっ!?いえ、私だって忙しいんですよ!?なんでもかんでも私に押しつけないで下さい!」
「俺だって名残惜しい。折角エターニアでの最初の目醒めだ、是非とも俺を初めにその目へ焼きつけて貰いたい──。だが、その役目をお前に譲ると言ってるんだぞ?光栄な話だろう?」
「だ……だからって今私をそれ程見つめる必要なんてないでしょう……!いい加減にして下さい、サラ……っ!」
「………………。。。。。。」
んおおぉぉ゙……んおおぉぉ゙……ッ。
出た……出ちまったよぉ……明らかな関係性匂わせがよぉ……。俺がブチギレ散らかすドアウトド真ん中が、来ちまったよォ……。いや……わかってる……わかってるぜ……エン‥エレのもうひとつの良さは、「コレ」……。主人公と賢者だけじゃなく賢者同士の絡みや匂わせもある所……特に賢者同士は公式のルートがなくて最後まで描かれない分、外野の人気は相当なモンで……エン‥エレを広めた要素のひとつになってるって……いやいや……そんなエン‥エレ界の常識は……俺だって、当然、理解しとりますよぉ……?でも……けどよぉ……俺は……俺が……サラマンダー様と……恋愛したい勢な、わけでぇ……。だから……そういう意味でも……ウンディーネは……いけ好かない、わけでぇ……!!!!
「だぁぁあ~~!!!!!!!!だから──その──あからさまに──実は仲がいいんです♡アピールの──あだ名呼びを──やめろォ~~~~ッッッ!!!!!!」
「うわっ!」
「わぁっ!」
推しとライバル(※実際はライバルではなく攻略対象だッ)の絡みについぞ我慢できなくなった俺は、勢いよく起き上がってカッと目を見開く。目の前の不届き者どもに文句のひとつでも言ってやろうと思ったからだ。
「おっ、丁度良くお目覚めか!俺を引き止めてくれたんだな?いじらしいじゃねぇか、来訪者!」
「随分お寝坊さんでしたね。お早う御座います、来訪者様」
「えっ。っ。ッ。っ──!!!!!!!????????」
……だが。
実際に視界へ広がった目の前の景色に……俺はただただ絶句する。
そこに居たのはモノホンのサラマンダー様とウンディーネ。ゲーム画面越しに何度だって見てきた、『エント‥エレメント』のキャラクター。そしてそのキャラクターが住まう世界、「エターニア」。
今まではイラストやスチルでしか見ることができなかったそのすべてが、俺の前に、さも当然のように広がっていて。
俺は。
俺は──。
「きゅーん──♡♡♡」
「うわっ!倒れたッ!!」
──あまりに理想的すぎる現実を前に、なにも理解することができずふたたび無常にも気絶したのでした♡
召すッ!!!!!!!!!!!
【TIPS】
・エン‥エレでの『来訪者』起床時の会話はランダムな賢者が二人選ばれ、ここでしか出てこない情報もある。
・ウンディーネの身長は179cm。好きなものは澄みきった静寂。齢28。
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