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39話《バイバ~イノシ》
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「はい゙~。んじゃ、いってら゙っしゃ~い゙」
ノアくんがそう言って、俺はパソコンの前に立たされる。
俺がここ──画面に映るドットの扉へ『祝福』の力を籠めると、例の現実世界への扉が開くらしい。タイミングは自分で、好きにしろって。
「う、うん。これで、もう……ここへは帰ってこれないんだよね」
「そぉ゙。ま゙、後は僕だけだし。フツーにバイバイってことで」
「ば、バイバイ……」
軽いノアくんの調子になんだか拍子抜けしてしまう。さっきの賢者さん達との別れは、なんだかすごくロマンチックだったのに。
「でも、これでお別れだよ?名残惜しむとか、ないの?」
「別に僕は君゙にとくに思い入れもないしぃ゙。それにゲームをプレイすれば、いつでも僕らには会えるでしょ」
「うん……でも、ここでしか会えないみんなに会えたわけだから。そんなみんなともう会えないと思うと、やっぱり俺は淋しいよ」
「そうは言ってもねぇ゙。実際、キャラとかいう虚像とヒトがこーやって会うのなんて、僕的にはナシなわけぇ゙。造られたフィクションの世界は、外側からヒトが観測して触れてはじめて存在の認知゙を受けられる。それくらいで、ちょーどいいのぉ゙」
「存在の認知……」
「その認知が、僕にとってはヒト相手じゃなくキングさまなワケぇ゙。だから僕はヒトもキャラも対して好きじゃないってことぉ゙。僕の絶対はキングさまだけだからぁ゙」
「そ、そっか。しゃんちゃんは創造主であると同時に……ノアくんにとってはプレイヤーの代わりでもあるんだね」
「そぉ゙。ガチのプレイヤーは僕にはどう頑張っても関われない。キングさまだけが僕に介入できる唯一の存在。そーゆ゙う僕はNPCであって、ただのキャラなんかよりちょおっと格上なんだよねぇ゙」
「格上、かぁ……」
ヒトもキャラも嫌うノアくんにとっては、しゃんちゃんからしか介入されないことがそういう認識になるんだな。俺とは考えが違うけど……でも、それはあくまで俺の見方。こんな考えに共感する人も居るし、こんな子を好きだって……似ているって思う人もいるだろう。ウンディーネさん、みたいに。
だからこそ……ちょっとだけ、思う。
「俺はノアくんも、攻略対象になっても楽しいと思うけど……」
「な゙ッ。」
「マナ先生も面倒見いいギャップキャラだし、需要はめちゃくちゃあると思うんだ。結局パッケージ版でも新規ルートは追加されなかったけど……ほら。ヒトに観測されるのも新しい発見があると思うし、マナ先生とノアくんのカップルだって、ファンの間じゃけっこう人気が……実は俺も、わりと好きで……!」
「うがあぁぁ゙ッ、外の話はするなぁ゙~……ッ!ヒトに好かれるとかマナとかクッソどぉでもいいんだよ゙ッ!とっとと行けぇ゙っ!」
「うわっ!!」
話題を遮るようにげしん、と足を蹴られる。い、痛い……ちゃんと痛いっ!
今更ながらこの世界でも痛覚があることを実感しながら足をさすれば、やっぱり不満げな顔をして、ノアくんは俺に吐き捨てる。
「やっぱ君のことも、嫌いぃ゙~……ッ!バイバイ、はじめ!」
あまりにも雑で乱暴な、ノアくんのお別れのあいさつ。
でもそれもノアくんらしいな、と思って俺は笑う。こんなぶっきらぼうで軽いお別れがあってもいい、って。それを、教えてくれているような気がしたから。
「あはは……うん!バイバイ!」
だから俺も、また会うみたいに手を振る。
ゲームの中で会える。それは、ノアくんの言う通りなんだから。
ああ……いつか、ほんとに。
人もキャラも嫌いで。でも不思議と可愛くって憎めない。
このノアくんにも、会えたらいいな。
それで……あわよくば。
マナ先生とケンカップルしてるところも、見れたら、いいなぁ……!!
【EX‥TIPS】
・「ノシ」は手を振っている仕草の意。
ノアくんがそう言って、俺はパソコンの前に立たされる。
俺がここ──画面に映るドットの扉へ『祝福』の力を籠めると、例の現実世界への扉が開くらしい。タイミングは自分で、好きにしろって。
「う、うん。これで、もう……ここへは帰ってこれないんだよね」
「そぉ゙。ま゙、後は僕だけだし。フツーにバイバイってことで」
「ば、バイバイ……」
軽いノアくんの調子になんだか拍子抜けしてしまう。さっきの賢者さん達との別れは、なんだかすごくロマンチックだったのに。
「でも、これでお別れだよ?名残惜しむとか、ないの?」
「別に僕は君゙にとくに思い入れもないしぃ゙。それにゲームをプレイすれば、いつでも僕らには会えるでしょ」
「うん……でも、ここでしか会えないみんなに会えたわけだから。そんなみんなともう会えないと思うと、やっぱり俺は淋しいよ」
「そうは言ってもねぇ゙。実際、キャラとかいう虚像とヒトがこーやって会うのなんて、僕的にはナシなわけぇ゙。造られたフィクションの世界は、外側からヒトが観測して触れてはじめて存在の認知゙を受けられる。それくらいで、ちょーどいいのぉ゙」
「存在の認知……」
「その認知が、僕にとってはヒト相手じゃなくキングさまなワケぇ゙。だから僕はヒトもキャラも対して好きじゃないってことぉ゙。僕の絶対はキングさまだけだからぁ゙」
「そ、そっか。しゃんちゃんは創造主であると同時に……ノアくんにとってはプレイヤーの代わりでもあるんだね」
「そぉ゙。ガチのプレイヤーは僕にはどう頑張っても関われない。キングさまだけが僕に介入できる唯一の存在。そーゆ゙う僕はNPCであって、ただのキャラなんかよりちょおっと格上なんだよねぇ゙」
「格上、かぁ……」
ヒトもキャラも嫌うノアくんにとっては、しゃんちゃんからしか介入されないことがそういう認識になるんだな。俺とは考えが違うけど……でも、それはあくまで俺の見方。こんな考えに共感する人も居るし、こんな子を好きだって……似ているって思う人もいるだろう。ウンディーネさん、みたいに。
だからこそ……ちょっとだけ、思う。
「俺はノアくんも、攻略対象になっても楽しいと思うけど……」
「な゙ッ。」
「マナ先生も面倒見いいギャップキャラだし、需要はめちゃくちゃあると思うんだ。結局パッケージ版でも新規ルートは追加されなかったけど……ほら。ヒトに観測されるのも新しい発見があると思うし、マナ先生とノアくんのカップルだって、ファンの間じゃけっこう人気が……実は俺も、わりと好きで……!」
「うがあぁぁ゙ッ、外の話はするなぁ゙~……ッ!ヒトに好かれるとかマナとかクッソどぉでもいいんだよ゙ッ!とっとと行けぇ゙っ!」
「うわっ!!」
話題を遮るようにげしん、と足を蹴られる。い、痛い……ちゃんと痛いっ!
今更ながらこの世界でも痛覚があることを実感しながら足をさすれば、やっぱり不満げな顔をして、ノアくんは俺に吐き捨てる。
「やっぱ君のことも、嫌いぃ゙~……ッ!バイバイ、はじめ!」
あまりにも雑で乱暴な、ノアくんのお別れのあいさつ。
でもそれもノアくんらしいな、と思って俺は笑う。こんなぶっきらぼうで軽いお別れがあってもいい、って。それを、教えてくれているような気がしたから。
「あはは……うん!バイバイ!」
だから俺も、また会うみたいに手を振る。
ゲームの中で会える。それは、ノアくんの言う通りなんだから。
ああ……いつか、ほんとに。
人もキャラも嫌いで。でも不思議と可愛くって憎めない。
このノアくんにも、会えたらいいな。
それで……あわよくば。
マナ先生とケンカップルしてるところも、見れたら、いいなぁ……!!
【EX‥TIPS】
・「ノシ」は手を振っている仕草の意。
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