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拓斗と繭人

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「よしこれで──送信、っと……」
 
 書類が散乱する部屋の中、クラウドにどうにか完成させたファイルを共有して、メールで連絡を入れる。すぐに「了解しました、確認後連絡しますね」と返信が来て、ファイルがDLされた旨が画面に表示された。
 
「はぁっ、終わった……!!」
 
 そこで俺はようやく全身を弛緩させて、作業が終わった開放感に声を上げる。多野が本社に帰った当日、先方から突然「申し訳ないですが締切を1週間早めてくれますか」とのお達しが届き、さっき帰ったばっかの多野に泣きつくわけにも行かないと、俺はなけなしのプライドを総動員して今日まで独りきり、その要望に応えるべくがむしゃらに地獄の編纂作業を進めていた。〆切は今日の15時、今は14時55分。ギリギリになったが、遂にこれで一区切りだ。俺は糸が切れた脱力状態で、どさりと床へ倒れ込む。
 
「はぁ、ああ、疲れた……」
 
 こんな真面目に働いたのは人生で初めてかもしれない。1日中PCに齧りついて、追加の資料探しであちこち走り回って、足りない時間で唸って文章考えて。土日なんてここに泊まり込んで、休日返上で作業したくらいだ。風呂に寝床、生活に必要なものが粗方揃ったこのビルに心底感謝したのはまだ記憶に新しい。思えば休日出勤して働いたのも初めてだ。日曜から今にかけてはロクに寝ないまま作業してたから、実質徹夜……徹夜で仕事に取り組んだのも初めてだった。多野が居ないまま闇雲に動いた1週間。心底、初めてばかりの1週間だったなと実感する。
 
「ぁ゛ー……ねみぃ……のに……頭が……冴えて、やがる……」
 
 身体は疲れ切ってるのに達成感でハイになってるのか、目が冴えて仕方ない。かなりエナドリも流し込んだから、まだアドレナリンが出まくってるんだろう。俺はなんとか起き上がって、酷い散らかりようの部屋を見回す。片付けたいのは山々だが、俺が目についたのはオナホだった。今まで四六時中ヤりまくってた日々から急転直下に仕事・作業・拘束の日々。元々社会人てのはこうやって毎日を過ごしてたんだなと実感しつつ、監視の目だけはないのをいいことに、作業に息詰まるととにかく俺は1発抜いて、気分転換をしていた。身体は1日中ヤってた感覚から、なかなか戻ってくれなかったからな。
 俺はオナホを手に取ると、とりあえず仕事が終わった褒美に抜こう、と決めた。オナればアドレナリンも落ち着いて、そのまま寝落ちることも出来るかもしれない。どうせここには誰も来ない。下半身丸出しで寝てたって、咎められることはないだろう。
 隅にあるソファ(殺風景な作業部屋を見兼ねて社員さんの一人が使い終わった備品を譲ってくれたものだ)に向かうと、地べたに座り込んでソファに顔を押しつける。これがここでの俺の基本シコりスタイルだ。椅子に座ったままだとどうしても仕事から意識を切り替えられなくて、色々試した結果このソファでのオナニーに落ち着いた。俺はオナホにローションを流し込んで、まだ萎えたままのチンポにニュッとオナホを挿し込んでいく。
 
「ぁ゛♡お゛ッ……♡」
 
 萎えていたにも関わらず、挿れ込むとすぐにチンポは反応した。それはこのオナホの性能の良さと、頭に浮かべるオカズ、両方の賜物だろう。俺は硬くなってくる内部に、オナホを上下に動かし始める。
 
「ぁ……ッ♡ぅ゛ッ♡まゆ……♡まゆ……ッ♡」
 
 快感が上がってくると、自然とその名前が口から零れ出る。
 ……俺のオナニーは、今や完全に、多野がオカズになっていた。今まで散々見て触って感じてきた多野の痴態が、俺の性欲のほぼすべてを掌握していた。俺の手で、チンポで、言葉で、呆れるくらい全力で感じる多野の姿を、俺は、忘れられなかった。当然だ。ずっと見たかった多野のエロい姿、スケベに乱れる姿、メスになって喘ぐ姿。それをこれまでは毎日毎日、俺自身の手で好きなだけ新しく更新し続けられていたのに、いきなり会社の都合で一切合切奪われて。独りになった俺に遺されたのは、自分でも驚くくらいの、深い喪失感だった。
 そう。
 俺が今まで見て見ぬ振りをして隠していた全部が、結局そこで全部露わになった。多野が居なくなったことによって俺の中に覆われていたもんが全部、呆気なく剥ぎ取られてしまった。それが「これ」だ。この「呼び名」だ。こうやって多野を呼んでる俺が、なによりそれを、証明している。
 ……いや、もう、まどろこっしい言い方はやめよう。
 
 ──俺は、多野が、……好きなんだ。
 
「ぁ゛♡お゛ッ♡くそっ♡まゆ♡まゆ……ッ♡」
 
 多野が好きだ。そんな自分の気持ちをようやく自覚してから、俺は多野のことばかり考えている。柄じゃないと思っても、ダサいと思っても、止められない。多野が好きだ。多野が可愛い。多野が愛しい。多野が。まゆが。好きで、好きで、たまらない。
 
「まゆっ♡まゆ♡ま、ゆ……ッ!♡」
 
 夢中でオナホを動かす。
 頭の中で、多野が、「まゆ」が、俺の下で俺にしがみついて、俺のチンポで喘いでいる。俺とのセックスで感じている。まのくん、まのくん、と必死で俺を呼びながら、俺にキスを求めて、背中に手を回して、必死に、多野が、まゆが言う。きもちいい、まのくん、まゆ、きもちいい。まのくんのおちんちん、きもちいい。まのくん。まゆ。まのくんが、すき。
 ……そんなことを舌足らずに俺へ告げる多野を妄想するのが、決まって俺のオカズになっていた。脳裏に、泣きそうな顔で俺を「好き」だと告げる幻想の多野が浮かぶ。感情と興奮がせり上がる。限界だった。
 
「ッ、お゛♡ん、ぉ゛……ッ!♡♡♡」
 
 今日も同じように、そんな多野の姿で俺は射精した。身体が覚醒してるせいか、いつもよりも多い精液が、ドクドクとオナホに吐き出される。このオナホは俺が最初に「マニュアル」を指導した時、多野に使用したオナホだ。多野もこれで射精して、これで初めて俺から快楽を与えられたんだと思うと、いつだって、どうしようもなく興奮が湧き上がる。さっきあんな速攻で俺のチンポが反応したのも、その理由が1番だ。
 
「はぁっ♡ぁあ゛ッ♡まゆ……っ♡♡♡」
 
 射精をしても、余韻はまったく治まらない。それは脳内物質のせいでもあり、脳内にこびりつく存在のせいでもあるんだろう。俺の中にはまだ多野が居て、それは多野でありまゆとして、俺に無防備で無自覚な好意を見せ続けている。……ここに居た多野と、同じように。
 まゆ。
 あいつを「こう」呼ぶようになったのは、多野が会社に戻ってからだ。多野が消えて露わになったなにもかもは俺の自尊心を木っ端微塵にして、多野へのバカみたいな思慕だけを残した。それがこの呼び名そのものだ。
 まゆ。
 俺だけしか知らない。
 俺だけが抱いた。
 もうひとりの、多野繭人。
 それを多野が「レポート」で俺に差し出した瞬間から、多分、俺の中では何かが変わっていた。でも、俺はそれに知らないふりをして、気にしないふりをしていた。ただでさえ毎日は洪水のような多野の痴態で、そんなものに目をかける必要なんてなかったからだ。でも、その毎日の中で、多野はあらゆるものを俺に差し出していた。いつもの生真面目さ。無防備なスケベさ。そして無自覚な、俺への好意。きっと多野は、この企画を始める前から、俺へそうしていたんだと思う。同期として一緒に入社した時から、俺にそうしてくれていたんだと、思う。でも以前の俺の目は濁って曇っていて、それを見ようとも気付こうともしなかった。けれど、俺の執着する分野に俺が多野を引きずり込んだからこそ、ようやく俺にも、それらが認識出来るものになった。
 ずっと多野は、多くのものを俺へ注ぎ続けてきた。与え続けてきた。俺はそれに、知らないふりをして。気にしないふりをして。でも、注がれて、注がれて、注がれて、注がれて……最後には俺から、あふれて、しまった。
 ……それが、あの、キスの日だ。
 あそこで俺の想いは決壊した。一線を超えて、自覚する形になった。俺は、多野を、好きなんだとわかった。それを知って、それからの世界が丸ごと、変わってしまったように思えた。
 それからの多野が今までより驚くほど精彩に見えて、つまりはそれまでの多野も驚くほど精彩だったのだと、俺は思い知らされた。あの日を境に俺は変わってしまって、きっと、それに、多野も多少は気付いていたように思う。だからこそ普段と同じような俺で居ようと努めて、けれど多野を求める気持ちは止まらなくて、ヤるたびに俺が遺ればいいと思って、俺だけのチンポで感じるマンコになればいいと思って、俺の与える快感が誰より1番になればいいと思って、ただただ無我夢中でヤり続けて、でも不意にヤってる間好きだと言いたくなって、そんな不相応なもん多野に言えるわけねぇって自嘲して、呆れて、嗤って、諦めて、諦めて、諦めて、でも──惚けた多野が自分を「まゆ」と呼んで、まっすぐ俺だけを見て笑った瞬間、ああ、おれは、こいつが、どうしようもなくすきなんだ、と、そう思った。なんだか無性に、泣きそうに、なった。
 そこから俺は多野への想いを無言に抱えて、それでもこんな俺達の関係は誰にも知られていないからと、半ば吹っ切れたように「指導」に託けては多野に触る毎日を送った。多野を見ているだけで触りたくてたまらない欲求を抑えられなかったからだ。毎日目が合う度にキスをして。暇があったら抱き合って。身体を何度も触り合って。ヤって、ヤって、ヤって。他のやつらが見たら付き合ってんだろデキてんだろって呆れるくらい、俺達はふたりきりの空間だからこそ許される時間の中、お互いをただ、貪り合った。いつでも多野は俺を拒むことなく快楽に溺れて、俺の気が狂うほどの可愛さを見せた。ヤってる時、触ってる時、その全部をひとつひとつ切り取ってなにもかもをカメラに収めたくなるくらい、言葉にならない可愛さを、多野は俺に見せてくれた。それが1番に爆発したのはテレセクをした日だ。多野が、俺の声が聞きたいから電話してきた、と言ってきて、どうにかなるかと思った。その嬉しさと可愛さに耐えきれなくて、思わず呻くのを止められなかった。挙句の果てには自分から今までのアナニーは全部俺をオカズにしてると言ってきて、マジで、本当に、本当に、ほんとうに、俺は、爆散するかと思った。多野が可愛くて、可愛くて、愛おしくて、好きで、好きで、好きでたまらなくなって、その後は、正直、自分でも、なにを言ったのかよく覚えていない。
 元々多野から電話が来ただけで飛び上がりそうだったのに、不安と迷いで手探りな毎日の中で飛び込んできた多野の存在、そして久々のスケベなやり取りに、俺が理性を保っていられる筈もなかった。そもそも電話が来た時俺は既にシコった直後で、さっきみたいにまゆまゆ連呼しながらオナニーをしていたせいで本物の多野にもそのまま「まゆ」と言いそうになって、死ぬほど焦っていた。思えばその出だしから俺は躓いていて、何をうっかり口走ってもおかしくない状態だっただろう。だから用事を理由に──勿論仕事がまだ残っていたのもあったが──(あの日、俺は普通にこの部屋に居て、週末ここに泊まり込むことを既に決めていた)──これ以上余計なこと口走らないようにと、電話を切った。当然、電話を切った後も興奮は治まらず、さっき聞いた多野の声や言葉をオカズにして、夢中でオナニーを再開した。
 
「はぁ……うぅ゛っ……」
 
 多野のことを考えると結局ますます意識が冴えて、俺は仕方なく精液を処理すると、オナホを洗いに行くべく立ち上がった。
 思えばはじめから多野は健気だった。素直……ではなかったが、俺が勢いで言った「指導係」に言葉では反発しつつも、その実俺のスケベ指導には実直に従い、俺のあらゆる責めを拒むことなく受け入れ、毎日快楽漬けになりながらも、俺の行為を享受していた。それは今ならクソ真面目な多野の気質から来ていたものだと分かる。でも立場上そんな多野の姿を今まで見たことがなかった俺は、当初、ただ夢中になっていた。今までは俺を見下して呆れてたやつを俺の手で好き勝手出来るようになったんだから、それも当然だった。だから、初めに感じたのは優越感。そして、次に生まれたのは独占欲だ。多野が「まゆ」を誕生させて、初めはまったく別モノだった多野とまゆは、俺とのスケベによって変わっていった多野自身の意識で、シンクロして重なって溶け合って、多野でありまゆという、言葉にはしがたい稀有な存在に変化した。そしてその過程をすべて見ていた俺は、「誰にもこれを渡したくない」と思ってしまった。だってその多野繭人は、俺が関わって、俺がヤったからこそ、産まれたものだったんだから。だからそんなもの、誰かに簡単に渡せる筈がない。差し出せる筈がない。だから多野は俺のものだ。そういう気持ちが日に日に強くなって、俺から消えなくなっていった。
 初めに多野のレポートを見て「書籍化決定」と叫んだ時、割と俺は本気で、多野本人をモデルにしてマニュアルを作ろうと思っていた。あのレポートはそれくらい、俺の企画にピッタリハマる被験者の「まゆくん」だったからだ。でも多野と毎日を過ごす内にあいつのスケベな姿を誰にも見せたくなくなって、あいつの言葉は俺だけが知っていればいいと思うようになって、結局あのレポートは表に出すことはなく、俺のファイルとフォルダの中だけに今もひっそり仕舞われている。文章のサンプルに出したレポートも少し文体を変えて、「まゆ」から名前を変更したくらいだ。自分の執着っぷりにゾッとして、でも、元々俺はこういうやつだなと改めて思ったのも事実だ。俺は良いと思ったもの、好きだと思ったものに対しては、とことん、どこまでも、執拗にしがみつくやつなんだって。
 ……ああ、そうだな。
 俺の中ではとっくに多野も、「その対象」になっていたんだろう。俺が今までエロに命と金と時間を無尽蔵に注ぎ続けてきたように、「多野繭人」も、俺の中ではいつの間にか、自分の全部を注いで貢いでもいいと思う相手になっていた。だからこそ最後に俺を満たした愛情も、きっとそこから、自然と溢れたものだったんだろう。
 ……多野繭人が、好きだ。
 今よりも強く独占欲を抱いていた頃は、『俺』自身から由来する多野が、多野を好きだと感じる理由になっていたように思う。俺で感じる多野。俺に反応する多野。俺が喘がせる多野。それらが、多野を求めて焦がれる理由だったように、思う。
 でも、外部の理由で強制的に多野と離れて、ひとりになって、そうして、どうしようもなくこの身体から溢れてきた淋しさと哀しさに、俺の介在する多野がどうこうなんじゃなく、ただ、俺が多野を好きなんだと思った。ただ俺が、自発的に、ここに生きて存在している多野繭人を、単純に好きなんだと思った。それに俺はようやく気付いて、ああ、それが、誰かを好きになることなのかもしれないと、俺は27年間の人生の中で、初めて知ったように思う。
 俺は初めから、「これ」が期限付きの関係だと知っていた。ただでさえ最初は企画に託けて多野にスケベ出来ればそれでいいと思ってたくらいだ、企画の成功はともかく、俺達の関係がどうこうなんてまったく考慮していなかった。あの時の俺は本当に、なんの後先も顧みなかったやつだったからだ。だから企画の終わりが俺達の関係が終わりになっても、まったく構わなかった。
 そして正直それは……今も、それほど変わっていない考えでもある。
 企画が終われば多野との身体の関係は終わる。もうキスは出来ない。抱き合うのも。ヤることも。何もかも、出来なくなる。その意味も理由も、終われば全部なくなるからだ。惜しむ気持ちはある。手放したくない気持ちもある。多野のことが好きなんだ、そんなの、当然に決まってる。でも、俺が今更多野に好きだなんて言うのはどう考えたってお門違いだ。今までだってあいつに散々甘えて寄っかかって、散々迷惑掛けてきた。俺にだってそのくらいの自覚はある。今更ほいほい都合良く好きだ、付き合ってくれ、なんて言えるわけがない。そんな告白をされること自体、多野は迷惑だと思うだろう。
 ……多野の好意は無自覚だ。あるいは錯覚だと言えるかもしれない。今まで誰ともスケベなことをしてこなかった初心なやつが、なし崩し的に俺とヤって、その初体験の繋がりをそういう感情だと勘違いしているだけだろう。ただでさえ多野はクソ真面目だ、自分の中に生まれたもんを額面通りに受け取ったって、それは何もおかしくない。
 だから俺は、これが終わりで当然、と思っていた。向こうに書類を送って、こっちの仕事はひとまず区切りがつく。書類がOKを貰ったら、〆切のことも含めて多野に話して、どっちにしろスケベは終わりにしようと思っていた。最後の思い出作りに一回ヤっても悪くないとは思ったが、今ヤったら逆に未練が残りそうだからやめておいたほうが良いかもしれない。だからあのテレセクを思い出にする。俺をオカズにしてた、って棚ぼたないい土産も出来たしな。
 自分で仕事が出来た。
 多野を頼らずに済んだ。
 俺の中に残ってるちっぽけな達成感が、多野を諦めようとする俺を、か細く、でも確かに支えている。
 俺達の関係は俺が思いも寄らないほうへ転がって。
 でもそれと同じように、俺自身も、いつの間にか変わっていたんだと思う。
 俺がこうやって真面目に仕事をやるようになるなんて、俺自身想像もしていなかった。そりゃあ最初が底辺だ、今だって平均には遠く及ばないだろう。でも本当に自分が責任を持つ立場ならこんなにもちゃんと自分がやるべきことに向き合う姿勢になれるんだと、俺は初めて知った。……なんだか初めてばっかだな。でも本当だ。この企画が始まってから何もかもが変化しちまったけど、そこには間違いなく、俺自身も含まれている。そしてそれを本当だと、俺は今、心から思うことが出来ている。
 だから、その実感だけでいい。
 その、欠片みたいな自信があればいい。
 そんな言い訳が出来るくらいには、俺は、ほんの少しだけ、たった一歩程度でも、この時間の中で、成長出来たんだと、……思う。
 
「……」
 
 オナホを洗い終わって、それを片手に部屋へと戻る。まだまったく眠気はないが、いい加減寝ちまうか。それとも一旦家へ帰るか……いや、先に片付けだな。週末までに片付けないと、この惨状を見た多野にまた叱られるだろう。でも多野のヒステリーを久々に見られるのは良いかもしれない。最近じゃアヘアヘしてる多野ばっかだったからな。いつもみたいに口煩くて面倒でウエメセで有能な多野を見て、ああやっぱこいつってこんなやつだったって実感したい。ギャーギャー言う多野を往なして、うるせぇなって文句を言って、もういいよって突っぱねたい。そんでまたあれこれ言われて、耳引っ張られて、僕が居ないと駄目って、呆れられながら言われたい。
 ああ。
 ……多野に、会いたい。
 そう思うとなんだかやっぱり泣けてきて、俺は少しだけ目をこすった。やっぱ俺って駄目だなって思って、結局そこに戻るのかよって、ちょっと、笑えてしまった。
 
「ッ──真野君っ!!!」
「……?」
 
 少しだけ濡れた自分の手を見て自嘲気味に笑えば、何故か、そこに、俺を呼ぶ声が響く。それはどうしたって聞き間違いのない声で、けれどここでは絶対に、聴こえる筈のない声だった。いよいよ疲労が限界で幻聴まで聞こえてきたぞ。やっぱり先に寝たほうがいいんだろうか。でも、今の俺はその声をどうしても無視することは出来なくて、ゆっくりと振り返れば、そこには……。
 ──そこには、多野の、姿があった。ぜぇぜぇと息を荒げて、顔を真っ赤にして、なんだか泣きそうな顔で、多野は俺の目の前に……立って、いた。
 
「真野君っ、真野くん、まのくん……ッ!!」
「あっ……ぅ、うわっ!!」
 
 それが現実なのか幻覚なのかを判断する前に、多野は俺へ抱きついてきた。無防備だった俺はその勢いに尻餅をついて、多野の身体を受け止めて倒れ込むような形になった。どすん、と音が立って床に撒き散らしていた書類が舞う。普段なら真っ先に俺よりその光景に言及しそうな多野は、けれど今、まるで俺だけしか目に入っていないように、まっすぐ、俺だけを見つめていた。
 
「僕、ぼくっ、なにも、気付いてなくて……っ、真野君とこうやって近くに居られるのも、真野君に触って貰えるのも、もう、あと、少しだけなんだって……っ!」
「お、おい、多野っ?いやお前、なんで、ここに……っ、んッ!」
「真野君っ、まの、くんっ。ん、んぅっ♡」
「あッ、んっ、ンぅっ!」
 
 俺の言葉なんて何もかも無視をして、多野は俺に唇を押しつけてくる。それは今まで見たことのない、どこか急いて、焦っているような多野の姿だ。俺の質問にも戸惑いにも答えず、ただキスを繰り返して、そのまま俺を勢い任せに床へ押し倒すと、多野は、無造作に、俺の上へ馬乗りになった。
 
「真野君っ、し、しましょう?ぼ、僕と……っ。セックスっ、しましょう?」
「っ。は……っ?た、多野……っ?ぁ、う゛ッ♡」
「僕、もっと、真野君とセックスが、したいんです。もっと真野君に、数え切れないくらい、僕のこと、触ってほしい……っ。あと少しなら、もう終わるなら、僕が、絶対、一生っ、忘れられない、くらいに……っ」
「ぁ゛!♡お、おいっ、多野ッ」
 
 自分のジャケットを脱ぐと、それが皺になるのも構わず床に放り投げて、多野は俺の股間に手を伸ばして揉むように撫でてくる。多野が自分からスケベを誘うようなことをしてくるのは初めてだ。でも初めてのくせにその動きはやたらスムーズで、男を興奮させるやり方を絶妙に心得ていて、それは多野の元々の才能と、多野が自然とそう動くくらい俺がこいつにスケベさを刻み込んだ、両方の理由なんだろう。
 俺は勿論その動きに反応して。でも、身体が反応していても、心はまったく、ついてきてはいなかった。いつだってエロとスケベに命を賭けるくらい全力で突っ込む俺は、それでもその時、自分に降り掛かった圧倒的なチャンスよりも、圧倒的に目の前の多野自身へと意識を向けていた。だって今俺を見下ろす多野は多野じゃなかった。俺の知ってる多野繭人じゃなかった。俺が見出したまゆでもなかった。それは俺の知らない多野繭人で、それはきっと多野自身も知らない、いびつで、心許ない、多野だった。
 
「っおい!やめろって!落ち着けよ、多野……ッ!」
「ッ!ぅ、ま、真野くん……っ」
 
 俺は多野の二の腕を掴むと、その動きを無理矢理制す。こんな多野を、俺は、そのままにはしておけなかった。放っておくことなんて、手を伸ばさないなんて、出来なかった。それはきっと俺が自分自身を慰めのように「変化した」と認めた変化そのもので、今の俺にしか、きっとそれを選べなかった。その選択が俺の中に生まれ、その選択を俺が選べたことそのものが、きっと俺が変わったなによりの証明だった。証明であり結果だった。それこそが今俺が多野へ差し出せる、誰でもない俺の本物の「指導係」への、俺のちっぽけな、成果だった。
 
「なに焦ってんだよ。なんで、そんな必死になってんだ?お前、こういうことするやつじゃねぇだろ?どうしたんだよ。慣れないことすんなよ。お前は、だらしなくて、ダメで、使えねぇ俺を、嗜めてくれるやつだろ?スケベな俺を、叱ってくれるやつだろ?なんで、そんな、無理してんだよ。おまえは。多野は。そんなことっ……。しなくてっ、……良いのに」
「っ……。でもっ……だって……っ。だっ、て……ッ、」
「っ……?」
 
 俺に腕を掴まれたまま、抵抗することもなく固まって、多野はもう半分泣いた顔で俺を見ていた。揺れる肩も、震える唇も、濡れた瞳も、それは多野が今まで俺に決して見せてこなかった、不安と恐れだった。
 ……それはもしかしたら多野も。注がれて、注がれて、注がれて。あふれてしまった、結果なんだろうか。
 
「だ、だって……っ。意味がなきゃ。理由が、なきゃ。ぼく、真野君から、もう、触ってもらえなく、なっちゃう。企画が、終わったら。この仕事が、終わったら。僕。もう。真野くんと。なにも、できなく、なっちゃう、から……っ」
「っ、は……?」
 
 な……なんだよ。……なんだよ、それ。なに、そんな、弱っちい顔俺に晒して、そんな、俺と同じようなこと、言ってんだよ。おまえは。多野は。俺よりずっと仕事、出来るやつなのに。俺よりずっと、頭良いやつなのに。俺よりずっと、色んなやつらから求められて、評価されて、自信もあって、俺なんかとは全然、土台も土俵も違うやつなのに。お前。どうして。そんな。……俺が、なにもかも、諦めてるみたいに。今までの全部。蔑ろにするようなこと、言うんだよ。
 
「……なんだよ、それ」
「っ……?」
「……なんで、お前、わかんないんだよ」
「へ、っ……?」
「お前が死ぬほどエロくてスケベで、っ……しぬほど、可愛くて。俺がそういうお前に、いつだって四六時中サカって、毎日それお前にぶつけてヤってたの、なんで、多野、なんも覚えてないって顔、してんだよ」
「ま、真野、くん……っ?」
「意味も、理由も、いるかよ。そんなもん、必要、あるかよ。そんなもんがないと俺は多野とヤれないって、多野に触れないって、そんなバカな話、あるかよ」
 
 自分でも同じことを思ってたのに。意味が必要で。理由が必要で。それが無くなってしまうから、俺達の関係はもう終わり。俺も、そうやって、諦めようとしていたのに。それなのに、同じことを多野から言われると、どうしようもなくやるせなくてたまらなくなる。なんでそんな悲しいこと言うんだって、否定したくてたまらなくなる。違うのに。俺はそんなこと、ちっとも思っていないのに。多野だから。まゆだから。ただそれだけ。ただそれだけで。俺は、こんなにも多野に、興奮するのに。
 
「相手に欲情するって、理屈じゃ、ねぇんだよ。俺は……っ、お前とヤりたいから、ヤるんだよっ!」
「あっ!」
 
 多野を乱暴に引き寄せて、今までの体勢とは逆に、その身体を床へと押し付ける。多野を見下ろす。驚いた顔をしている。ただ俺を見ている。可愛い、と思う。多野だ、と思う。
 俺の。
 ……すき、な。
 多野繭人だ、と、思う。
 
「っ……まゆ」
「!!!!」
 
 言葉にした。
 声に、した。
 そう呼びたかった。
 そう伝えたかった。
 まゆ、と。
 そう言って。
 俺のくだらない愛情のぜんぶが詰まっているそのたった一言を、ちゃんと、形にしたかった。
 やっと。
 はじめて。
 多野へと伝えたその呼び名に、多野が、息を呑む音が聞こえてくる。信じられない。嘘だ。聞き間違いだ。そう心の中で叫んでいるのが俺にも伝わってくる。本当だ。嘘じゃない。聞き間違いなんかじゃない。俺はそれを伝えるように、もう一度、はっきりと、多野を呼ぶ。
 
「まゆ。……まゆ」
「ッ♡ぁ♡や……っ!♡ま、まゆっ♡まゆって呼ぶのっ♡やめて、くださいっ♡」
 
 俺の呼び掛けに、多野はさっきと違ってあからさまな抵抗を見せた。逃げるように身を捩って、何度も首を横に振る。それでも顔は赤らんでいるし、脚に当たる股間は反応しているのが丸分かりだ。さっきの俺と同じように、身体が心を追い越して、自分でも制御出来なくなっているのは明白だった。
 
「なんでだよ。お前、ずっと、自分のこと、レポートにまゆって書いてたろ?」
「で、でもっ♡あ、あれは♡レポートの、まゆでっ♡ぼ♡ぼく、じゃっ♡」
「お前だよ。繭人だよ。だって、多野、自分でもまゆって言ってたろ?」
「えっ。へ、っ……?」
「ローションプレイん時も。電話の時も。多野はまゆ、って。自分で、言ってた。それは、つまり、お前が、もうちゃんと……。自分をまゆだって、認めてるって……こと、だろ?」
「あ、っ……!」
 
 俺の言葉に、多野は、目を開く。
 ……なん、だよ。なんでそんな顔、するんだよ。なんで、まゆって言ってたことを知らされただけで、そんな、驚いた顔、するんだよ。そんなに嫌なのか?多野、本当は「まゆ」が、嫌だったのか?そんなにまゆが嫌いなのに、お前、あんなレポート、ずっと真面目に書いてたのか?……なんだよ。俺。俺はずっと。好きだったよ。ずっと。まゆが、好きだった。多野の中にいるまゆが。多野と同じまゆが。多野繭人、が。ずっとずっとずっと。好きで、好きで、……もう戻れないくらい、今も、好きだって思ってる。なのに、お前がそんな顔、するなよ。まゆを否定するような、そんなさみしい顔、すんなよ。俺は好きなのに。こんなに。こんなに。お前のこと。多野のこと。まゆのこと。ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ。俺以外の誰にも、渡したくないって、そう思っちまうくらい、好き、なのに。……それ、なのに。
 
「俺。っ……俺は。まゆのこと、好きっ、……だよ」
「まっ。まの、く」
「好き、なんだよ。まゆも。多野も。どっちも、お前で。どっちもお前だから、俺は多野繭人が、好き、なんだよ。好きにっ……なったん、だよ」
 
 それがさみしくて悔しくてたまらなくて、俺は気付けばそう言っていた。多野がそう思っていても、俺はこう思ってるんだって、それを伝えたくて仕方なかった。怖さも、諦めも、その時はなにも感じなくて、それは、俺が、俺以上に、それを多野へ伝えたいと思っているからなんだと思った。伝えたい気持ちが勝っているから、こんなにも自然と、自分の気持ちを言えたんだと思った。そうだ。どっちもなきゃだめだった。どっちもあるから好きになった。多野が見せてくれたふたつの多野が、俺へ、多野を好きにさせてくれた。クソ真面目で。クソスケベで。どっちも本当で。本物で。そんな多野だから、こんなにも好きだと思うようになった。それを否定してほしくない。だから俺が肯定したい。多野がどう思っていても。こんなにも好きな多野を。こんなにも好きになれた多野を。俺だけは。命を賭けても。肯定、したい。
 
「だから、まゆを嫌いなんて、言うなよ。そんな顔、すんなよ……っ」
 
 俺も泣きそうだった。もう泣いていたかもしれない。わからなかった。でも、伝えたくて伝えたくて伝えたくて、ただそれだけでも伝えようと声をふり絞れば、それはひどく切実で、いつか多野が俺を決壊させた声に似ていた。苦しくて、切なくて、それでもただ本気だと、こんな声になるんだと思った。俺の言葉に、多野はもう泣いてしまったような顔で俺を見た。そして震える口を開いた。そこから出てくる、掠れて、高くて、でも同じくらいどうしようもなく切実な声は、いつか多野で俺が決壊した声、そのものだった。
 
「ちがっ……ちがい、ます」
「え……っ?」
「きらいじゃ、ない。……きらいなんかじゃ、ない……っ!」
 
 多野はシャツごと、俺の胸を掴む。くしゃりとシャツが皺になって、多野が作る不格好な亀裂になる。そこから堰を切ってあふれるように、多野の言葉がこぼれ出る。その本心が、こぼれ出る。
 
「……だって。ぼくは。真野君が居たから、まゆを、見つけたんです。まゆはっ……真野君が見つけてきた、もうひとりの、もう消えない、ぼく、なんです。だから。そんなの。きらいにっ……なるわけ、ない」
「多野……」
「ぼく。ぼく、だって。真野君が。っ……好き、です。すき。すき……っ。自分でも、なにも、わからなかったのに、こんな、こんなにっ、いつの間にかっ、真野君の、こと、すきに、なってた……っ」
「……」
 
 ……すき。
 それこそ幻のような、夢のような、嘘のような言葉を、多野は告げる。俺が一度は押し込めて隠して諦めようとしていたその想いを、ひとつの迷いも戸惑いもなく、俺へと告げる。
 
「まの、くん」
 
 シャツを掴んでいた手がほどかれて、多野の両手が俺の胸へと当てられる。それはゆっくりと腹をなぞって、下へ下へと落ちていく。それはなだらかで深い願望。俺を押し倒した時から、いや、もしかしたらそのずっと前から、多野の中で揺蕩っていた欲望。俺が見つけた、多野が育てた、もう決して消えない欲望。それは俺達が重ね合った時間の、確かな証明。
 それを、その間違いのない「成果」をもう一度俺へと差し出すように、多野は、俺へと、甘く、愛おしく、この上なく──いやらしい顔で、媚び諂った。
 
「ぼ、ぼくにっ……さわって、くれますか?意味も、理由も、なくても……っ。まのくんがすきで、ただそれだけ、でも……っ。ぼ、ぼくを、また……っ♡たくさん、いやらしくて、すっ、すけべで♡えっちな、まゆに……っ♡して、くれますか……っ?♡♡♡」
「ッ──、」
 
 確かに多野の口から、確かに多野の言葉で捧げられる、間違いのない淫猥な欲求に、一気に、全部が、熱を帯びた。燃え上がって、盛って滾って、それは一瞬で限界までせり上がって、俺はもう、なにも、止められなくなった。
 
「まゆっ!!!」
「ぁ、んッ!♡」
 
 我慢なんて出来なくて、多野に覆い被さって、勢い良くその唇を塞ぐ。たかが1週間程度。でも、こんなに、こんなにも、久々だと感じる多野の唇。そこに触れると、それだけで多野と繋がっている実感が襲ってきて、俺は壊れそうになる。理性なんか保てない。俺のままでいられない。なにひとつ、隠しておけない。
 
「まゆ、まゆっ、まゆ……ッ♡俺……っ、俺のことっ、すき、なのかっ?」
「ぁ♡あ♡す、すき♡すき、です♡すきだって、やっと……っ♡まのくんのことがすきだって♡ぼく、やっと、気付けたっ♡ぼくっ、こんな♡こんなにっ♡まのくんのことがっ♡すき、だったん、です……っ♡」
「っ……」
 
 それが自分の中にあった感情の在り方だったんだとようやく正しく気付いたように、そのひとつひとつを強く噛みしめるように、多野は言う。その感慨と幸福を体現したような笑顔に、やたら無性に胸が詰まる。嬉しくて。でも悔しくて。ああ、俺、多野には、ずっと、こんなバラバラで、逆さまな想いを抱え続けていたなと、そう思う。
 
「ッ……俺は、ずっと、お前のこと、好きだったよ……っ。お前が今気付く前からっ、ずっと、ずっと……っ!好き、だったん、だよ……ッ!♡」
「う゛♡じ、じゃあっ♡なんでっ♡なんでもっと早く言ってくれなかったんですかっ♡まのくんが言ってくれたらっ♡そうすれば、ぼくっ♡」
「ッ言えるかよっ!ずっと、俺はっ、お前に、迷惑掛けてたのに……っ。ずっと、お前に、おんぶに抱っこだったのに……っ。そんな都合のいいこと、俺が、言えるわけ、ねぇだろっ!」
 
 俺がなけなしのプライドを振りかざせば、多野は少しだけ目を開いて。でも、それをすぐに、呆れたような笑顔に変える。まるでそんな俺の虚勢を、軽やかに笑い飛ばすように。
 
「……、──あははっ……。馬鹿、ですね、まのくん……っ」
「は、っ……?」
「まのくんが駄目なことなんか、最初から、ぼく、ぜんぶ、知ってる、のに……。ぜんぶ知ってて、それでも、まのくんとずっと、一緒に、居たのに……っ」
「っ……」
 
 少しだけバカにしているようで。笑っているようで。でもやたら、優しげで。それは多野なのに、多野じゃないようで。でも……。
 
「ま、まのくんは♡ぼくが、いないと♡ほんとうに、だめなん、ですから……っ♡♡♡」
「ッ──こ、こっの……っ!♡」
 
 ……でも、そんな言葉をここぞとばかりに俺へ向ける多野は、やっぱり多野でしかなくて。そんなこいつの在り方がやっぱりどうしようもなく嬉しくて、悔しくて。だから俺も俺のまま、どうしたって真野拓斗にしかなれない俺のまま、多野をぐっと押さえ込む。今からはもう俺のぜんぶ、おまえにぶつけてやるよって。
 そうやって。
 指導じゃなく。
 告白──するように。
 
「ぁ、ひゃんっ!♡」
「まゆ♡じゃあ、触らせろよっ♡まゆのぜんぶッ♡まゆの、なにもかもっ♡ダメな、俺にッ♡おまえが俺のもんだって、教えて、くれよっ♡」
「ぁ♡あっ♡うぁ♡は、はい♡して♡して、ください♡ぼくの、ぜんぶ♡まゆの、ぜんぶ……っ♡もう、まのくんの、ものなんだって♡まゆにもっ♡いっぱいっ♡教えて、ください……っ♡♡♡」
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