THE NEW GATE

風波しのぎ

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2巻

2-8

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 それは唐突に起こった。
 虫も野生動物もいない夜の亡霊平原は異様なほど静かだ。だからこそいち早くシンは気づいた。

「ん? 何の音だ?」
「クゥ?」

 シンの頭上で脱力していたユズハも、動物特有の優れた聴覚で異変を感じ取ったらしく、耳をピンと立てている。
 それは風にそよぐ草の音のようでもあった。それだけならシンも気にしなかっただろうが、同時に何か、生き物がつぶれるようなぐしゃりという異音が響く。
 立ち止まり振り返ったその先で、シンとユズハは異様な光景を目にした。

「なんだ……あれ」
「クゥ……」
「ん? お前らどうし……た」

 シンの動きに気づいたヴィルヘルムが振り向いて、同じものを目にして言葉に詰まる。
 最後のスカルフェイスを倒した場所に、先ほどまではなかったはずの黒い球体が浮いていた。そして今まさにペッカーホロウを呑み込もうとしている。
 視界の端にあるマップ画面を見れば、直前までは存在していなかったはずの巨大な赤いマーカーが、シン一行を示す白と青のマーカーの前に表示されていた。
 ペッカーホロウは30セメルほどの黒い球体にどんどん吸い込まれていく。
 明らかに体積が合っておらず、ゴキリ、グシャリと響く音は、ペッカーホロウの肉体を圧縮するときに生じているらしい。
 捕食されているペッカーホロウは断末魔を上げることもせず、なんの抵抗もしない。その体の表面に浮かんでいる顔は皆笑顔。まるで吸収されることを喜んでいるようだ。

「うう、気持ちわるい……」

 ゆっくりと人の顔が押しつぶされていく光景に、ラシアは口元を押さえてしゃがみこむ。

「どうなってやがる。なんだありゃあ!?」

 ヴィルヘルムがラシアに駆け寄り、シンは2人と黒い球体の間に立つ。
 さしたる時間もかからず、ペッカーホロウは球体に完全に食われた。
 続いて突如とつじょとして起こった大きな揺れが地面を震わせる。

「うおっ!?」
「クゥッ!?」

 とっさにバランスを取って転倒をまぬがれる。何が起こったのかと周囲を見渡すと、亡霊平原のあちこちで紫色の光が天に向かって噴き上げているのが見えた。
 スカルフェイスが倒れていた場所からもきらめく光が空へと昇っていく。

「綺麗……」

 ラシアがつぶやく。
 突如として発生したその現象は、実に幻想的で美しかった。
 目の前の黒い球体さえなければ、シンも純粋に楽しんでいただろう。だが今、そんな暇はない。
 視線を斜め上にわずかに上げる。マップ画面から赤いマーカーが消えていくことに気づいたのだ。

「これは……」

 謎の球体を警戒しつつも、【遠視】のスキルを使って赤いマーカー、つまりモンスターのいる方向に目を凝らす。
 すると、ゲルバイソンやエイヌジャッカルが身体中から紫色の光を噴き上げているのが見えた。キラキラと光るそれは、ゲーム時にアンデッドモンスターを倒したときに生じるエフェクトにもよく似ていた。
 しばらくするとそれらのモンスターが次第に輪郭りんかくを失い、大気に溶けるように消える。
 そして、その光は空中で弧を描き、黒い球体に吸収されていく。

「魔素を吸ってやがる」

 ヴィルヘルムが吐き捨てるように言った。

「魔素を?」
「ああ、あの光はアンデッドを動かしてる魔素だ。それがなくなったんで、体を維持できなくなったモンスターが消えたんだろうよ」
「なるほど」

 しばらくすると、大気中に存在した魔素がすべて球体に吸収された。
 球体は空に舞い上がり、後退しつつ地上から10メルほどの高さで停止する。
 球体を中心にどす黒いオーラが広がっていく。
 だんだんと形をなし、スカルフェイスのような骨が形成され、さらに数倍の大きさに膨れ上がる。
 漆黒の鎧が覆い、骨と鎧の間をオーラが満たしていく。
 その間、わずか10秒。
 今やシンの前には、全長10メルを超えるスカルフェイスが姿を現していた。
 鎧にはオーラからできたとは思えない細やかな装飾がなされ、頭部に収まっているのが骸骨でさえなければ勇猛な騎士を連想させただろう。
 その身からのぼるのは禍々まがまがしきオーラ。アンデッドであるという確たる証拠。
 そして、緊張に身を固めるシンたちの前でその双眸そうぼうに火がともる。
 ――――『スカルフェイス・ロード レベル804』
分析アナライズテン】が発動し、その名とレベルをシンに知らせる。
 そのレベルは【THE NEW GATE】においても上位に位置づけられる数値だった。

「レベル804。ダンジョンの、ボスか?」

 シンの自問にヴィルヘルムに激しく反応する。

「おい、今言ったレベルは本当なのか!?」
「ああ、間違いない」
「そんな……それって国を滅ぼすようなモンスターのレベルですよ!?」
「クルルゥゥ!!」

 ユズハが威嚇いかくするようにうなり声を上げ、ありえない数値にヴィルヘルムとラシアは動揺を隠せない。
 500年前の『栄華の落日』以降、魔都と化した大都市――『聖地』に留まるモンスターを除けば、確認されている中でもっともレベルが高いモンスターも、600には届かなかった。
 そしてそのモンスターですら、当時複数の国を滅ぼしたと言われている。

「ふ、封印がありますし出てこられないですよね?」
「どうだろうな」

 ラシアの不安げな声にシンが答えたとき、ついにロードが動いた。
 数メルの長さはありそうな腕を曲げ、こぶしを握る。そして軽く膝を曲げると、勢いよく空に向かってアッパーカットの要領で剛腕を繰り出した。
 腕が伸びきると同時に響くガシャリという乾いた音。空を覆っていた見えない結界が砕けていくのが、舞い散る魔素によって照らされ、シンたちの目に映る。

「こりゃあ、封印はもう駄目だな」
「ああ、たぶん今の一撃で粉々だ」
「そ、そんな……」

 高レベルモンスターをとどめていたはずの封印があっけなく砕かれたのを見て、力が抜けたのか、ラシアは尻もちを突く。
 封印を維持していた魔素すら吸い込むロードの視線がシンたちを捉えた。
 ヴィルヘルムがごくりとつばを呑んだ。

「こっち見てんぞ、おい」
「だな」

 目玉があるわけではないが、シンには確かに視線を向けられているのがわかった。
 その圧力に顔面蒼白となって震えるラシアを抱え、ヴィルヘルムは逃げる準備を始める。

「GuuuuUUUUUU――――――――GaaaAAAAAAAA!!!」

 しかし、まるで逃がさんとでも言うようにロードが雄たけびを上げた。
 物理的な圧力を感じるほどの声量にシンが身構え、ユズハは体を縮め、ヴィルヘルムが膝をつき、ラシアは耳を押さえる。

「ぐっ、逃がさねぇってか?」
「いや、違う。周りを見ろ!」

 シンが声を上げたのとほぼ同時に、地面から白い骨が次々と突き出す。
 それは明らかに人型モンスターの腕だった。地面をがっしりつかむと本体を地面から引きずり出す。
 出てくるのはどれも無骨な鎧に身を包んだ骸骨。言うまでもなくスカルフェイスだ。
 それもジャック級からクイーン級、キング級――1体で大騒ぎになるような個体まで次々と地面から現れる。それぞれの個体の大きさは通常より1回りも2回りも大きく、キング級ともなれば8メル近い。
 平原を埋めつくさんばかりの大量のスカルフェイスは、すでに1個の軍隊のようだ。それぞれの個体から放たれるオーラが混じり合い、平原全体が黒く染まっている。
 スカルフェイスの出現は平原全体で起こっており、シンの周囲はすでにスカルフェイスで溢れかえっていた。

「ヴィル! どうしよう、ねぇヴィル!!」
「落ち着け! 騒いだってどうしようもねぇ! おいシン、とっとと囲みを破って逃げんぞ!」
「いや、俺は残る」
「ああ? 何言ってんだ、てめぇ。死ぬ気か!」

 やけに落ち着いた物言いにいらだったヴィルヘルムがシンの肩をつかむ。振り向かせようと力を入れたものの、シンはまるで巨大な岩塊のように微動だにしなかった。
 そして、シンは静かに【制限リミット】を解き放つ。

「うおっ!?」
「きゃあっ!」

 シンから放たれる力の奔流ほんりゅうにヴィルヘルムとラシアが目をむいた。

「こいつをこのままにはできない。俺が道を開くから、2人はそこを通って先に王国に向かっててくれ」
「この力……お前は一体?」
「それについて話してる時間はない。それに、個人的にもこいつに用ができたんだ。巻き込みたくないから、悪いができるだけ離れていてくれ」

 そう言って両手に魔力を溜めていく。そのあまりの密度にヴィルヘルムは反論できなくなった。

「ちっ、しかたねぇ。ラシアとその狐は俺が連れていく。拠点のアイテムは回収しとくか?」
「無理はしなくていい。なくなって困るものじゃないしな」
「そうだな……戻ってきたらしっかりと事情を聞かせてもらうぞ!」
「ああ、わかってる。身体強化のバフもかけとくから、いつもよりスピードが出る。こけるなよ?」
「はっ! 誰に言ってやがる! ってこら、狐が離れねぇぞ」

 ヴィルヘルムがユズハを引っ張ると、シンの顔が歪む。

「あだだだだっ! おいこらユズハ! ひっつくな」
「クゥ! クゥ~!!」

 嫌がって鳴くユズハ。シンを置いていけないとでも言うように、必死にしがみついてくる。

「おい、どうすんだ」
「ユズハ……」

 念話により、シンにユズハの感情――離れたくないという強い気持ちが伝わってきた。

「…………はぁ、しかたない。絶対に離れるなよ?」
「クゥッ!」

 改めてシンの頭上で一鳴きしたユズハはやる気満々である。


「話はまとまったか。なら早くやれ」
「ああ待たせた! じゃあやるぞ!!」

 シンはヴィルヘルムにバフをかけ、拠点のある方向に向かって魔術スキルを放つ。
 雷術系魔術スキル【ライトニング・バンカー】。
 直径数メルもある極太の雷撃が2筋、スカルフェイスの群れに向かって突き進み、一瞬で炭に変える。
 シンはスキルを維持したまま腕を左右に開き、電撃を操って包囲網に穴を開けていく。

「行け!」

 シンの声を合図にヴィルヘルムが大地を蹴った。シンのバフによって底上げされた脚力によって、残像を残す勢いで突破口を駆け抜けていく。

「きゃあああああああっーーーーーーー…………」

 あまりの速度にラシアは悲鳴を上げるが、それもすぐに聞こえなくなった。
 ここは封印の端のほうなので、ヴィルヘルムの速度をもってすれば、包囲網の外へ出るまでたいした時間はかからないだろう。
 雷撃をまぬがれたスカルフェイスから剣や槍が投擲とうてきされるが、ヴィルヘルムは速度を維持したまま『ヴェノム』で打ち払っていく。

「行ったか」
「クゥ」

 2人の姿が見えなくなったのを確認して【ライトニング・バンカー】をく。すでに数十体のスカルフェイスをほふっていたが、スキルが切れた途端に大量の敵がその穴をふさいだ。
 相手はスカルフェイス・ロードに、配下のジャック級、クイーン級、キング級が数知れず。
 こちらを睥睨へいげいしているロードは、逃げるヴィルヘルムとラシアにはまるで注意を向けていなかった。
 シンの知識にスカルフェイス・ロードという名はない。レベル800を超える、まったくの未知のモンスターということになる。レベルだけで実力を判断するのは危険だ。
 だが未知の相手ということは、シンが元の世界に帰るための鍵になるような何か、物なり情報なりを得られる可能性がある。よって、シンに逃げるという選択肢はない。

「さて、こっちも始めるか」
「クゥー!」

 ユズハの声を頼もしく感じながらシンは刀を構え、スカルフェイスの大軍へと駆け出した。
 それは一言で言うなら蹂躙じゅうりんだった。
 骨は砕け、剣は折れ、鎧はただの鉄のかたまりとなって地に落ちる。
 大地には深い亀裂が何本も走っていた。
 それは魔術ではなく、シンの振るう刀にえぐられたものだ。

「シッ!」

 スキルを発動させることなく、刀を振りぬく――たったそれだけで10体を超えるスカルフェイスがコアを真っ二つに斬り裂かれ、魔素となって消えていく。
 剣や鎧が砕けているのはそのおまけにすぎない。
 月光が降り注ぐ平原で刀が弧を描くたび、まるで砂で出来た城が崩れるように、スカルフェイスが倒されていくのだ。
 普通の冒険者なら、1体倒すのに何十人もの犠牲を覚悟しなければならないキング級ですら、今この場にあっては多少丈夫なだけの木偶でくにすぎない。
 まるで草を刈るように無造作に、だが確実にスカルフェイスをほふっていく。

「クォォオオオ!!」

 攻撃するのはシンだけではない。シンの頭上に陣取っているユズハも、口から青白い炎を吐いて敵を灰にしていた。
 モンスター専用スキル【狐火】フォックス・ファイヤー。エレメントテイルの場合は青い炎を出す。
 今のユズハには難しいようだが、本来の姿――レベル1000の成体なら尾で多彩な攻撃を繰り出す。エレメントテイルは尾の1本1本が火、水、土、風、雷、光、闇の魔術スキルと物理攻撃、神術をそれぞれ担当しており、相手からすれば実質複数のモンスターを相手にしているような戦闘を行うのだ。
 ユズハの1本だけある尾は神術系スキルを担当しているモノらしく、【狐火】フォックス・ファイヤーを強化しているようだ。プレイヤーの使えるスキルではないので、あくまでユズハから伝わってきたイメージからの想像だが。

「まったく、数が多いな」
「クゥ」

 すでに100体以上のスカルフェイスを倒しているシンとユズハだが、場所自体はほとんど動いていなかった。モンスターの数が多く、しかもそれぞれの個体が通常より大きいため、撃破されて出来た隙間すきまを瞬く間に埋めてしまうのだ。
 砂を手で掘り進んでいるような、掘ると同時にまた砂が流れ込んで、延々と同じ作業をしているような気分になってしまう。
 ボスと思しきスカルフェイス・ロードは大量のスカルフェイスを出現させた後、亡霊平原の中央まで下がっていた。平原は端から端までが数十ケメルある。シンがいるのはかなり端のほうなので、視界にとらえられる範囲にロードの姿はない。
 移動したのはシンの消耗を誘うためか、何かをしかける準備でもしているのかもしれない。
 相手がどう出るか考えながらシンは刀を振るい、ユズハは炎を吐く。黒いオーラで染められた平原の中で、シンの周辺だけが、切り取られたかのように地肌をさらしていた。

「あまり無理はするなよ?」
「クゥ!」

 はたからみれば黒い濁流だくりゅうに呑み込まれる寸前にしか見えない1人と1匹は、この状況には似合わない呑気な声で会話をしていた。
 しゃべっている間にもシンの斬撃がスカルフェイスを襲い、黒い濁流を逆に押し返していく。
 結界のごとく放たれる斬撃を突破できる敵はこの場には存在していなかった。
 ヴィルヘルムと戦った個体のように、ほとんどのスカルフェイスが達人級の足運び、剣筋、技のえを有しているが、できるのはほんのわずかの時間を稼ぐことだけ。
 いっそ哀れとも言えるほど勝負になっていなかった。

「ダメか。敵の湧く範囲が広すぎる」

 探知系スキルを併用し周囲の情報を集めていたシン。
 シンが派手に暴れているおかげで平原に存在する多くのスカルフェイスがこちらに群がってきていたが、一部は平原の外に出ていっていた。
 その中にはキング級と思しき大きな反応もある。このままでは被害が出てしまいそうだ。

「派手にやる。しっかりつかまってろ!」
「クゥッ!」

 一際強く『朱千鳥』を振り、周囲のスカルフェイスを蹴散けちらす。
 その空白を利用して左手で新たな武器を握ったうえで、『朱千鳥』を持つ右手をまっすぐに後ろに伸ばし、投擲とうてきの姿勢を取った。
『朱千鳥』の刀身にこれまでとは比べ物にならない雷光が走る。紅い雷をまとった刀身は、まるでそれ自体が発光しているかのような強い光を周囲に放っていた。時折聞こえる金属が軋むような音は、あまりにも多くの魔力が注がれたことによる刀身の悲鳴だ。
 ステータスが向上したことで、伝説レジェンド級の武器ではシンの魔力に耐えきれなくなっていた。
 光に混じる高密度の魔力を本能が感知したのか、スカルフェイスたちも接近することに躊躇ちゅうちょする。
 そして、その躊躇がシンにより大きな溜めを作る余裕を与えた。
 刀術雷術複合スキル【飛燕ひえん雷切らいきり】。
 武芸スキルと魔術スキルの混成技。その強烈な一撃が、シンの手から放たれる。
 もはや人外とも言える膂力りょりょくで投擲された『朱千鳥』は、衝撃波をまきちらしながら、スカルフェイスの群れを何の抵抗もなく引き裂いていく。
 その刀身からは四方に紅い雷光が伸び、進行上にいるスカルフェイスを片っ端から灰にしていく。その様はまるでヒュドラのようでもあった。
 雷光によって形成された赤きヒュドラが超高速で黒い波を蹂躙じゅうりんしていく。まるで、スカルフェイスが自ら雷光のあぎとに身を捧げているようにすら感じられた。
『朱千鳥』が飛んでいったあとには幅10メル以上の道が形成され、衝撃波と雷によって地面までえぐられている。
 その道をシンは一気に走り抜ける。
 目指すは平原の中心にいるスカルフェイス・ロード。
 あれを倒すか、もしくはダンジョンコアを破壊すれば、この騒動も収まるだろうというのがシンの予想だ。

(シュニーがいてくれたら違った対応ができるんだがな)

 そう一瞬考えるが、ないものねだりをしてもしょうがない。今はできることをするだけだと意識を切り替えた。
 新たに取り出した左手の武器を鞘から抜き放ち、肩に担ぎながら疾駆しっくする。
 その手に握るは神話ミソロジー級の大太刀、名を『波文蛭巻はもんひるまき』という。日本一の大太刀が名の由来ゆらいだ。
 柄まで含めれば全長は3メルを超え、その刀身は闇を打ち払うように月光を反射してきらめいている。人によっては『祢々切丸ねねきりまる』という名を思い浮かべるかもしれない。
 そんな『波文蛭巻』は高い対アンデッド能力を持っている。長大な刀身による高威力と槍にも劣らぬ攻撃範囲を誇る攻撃がスカルフェイスに牙をむく。

「ふっ!」

 単なる薙ぎ払い。だが、スカルフェイスの吹き飛ぶ量はこれまでの比ではなかった。
『波文蛭巻』はもともと、STRが800以上なければ満足に振ることもできない武器であり、自重だけで低レベルの竜の首を落とすほどの切れ味を持つ。
 それがカンストプレイヤーを超えるシンの膂力りょりょくで振られたとなれば、威力は計り知れない。
 刃が空気を切り裂き、衝撃波が周囲の物体を軒並のきな木端こっぱへと変える。スカルフェイスにあらがすべはなかった。もとより力の桁が違う。スカルフェイスにとってはもはや災害だ。大規模な嵐、地震、洪水など、およそ逆らうことも許されぬ圧倒的暴力。
 今のシンはまさにそれであった。
 先ほどまでの遅々とした進み具合はなんだったのかと言いたくなるような速度で、ロードに向かって突き進んでいく。
【飛燕・雷切】によって生まれたスペースをスカルフェイスが埋めていくが、足止めらしい足止めもできない。刃物を振る轟音ごうおんとともに、粉々に砕け散るのみだ。
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