THE NEW GATE

風波しのぎ

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4巻

4-11

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「ん?」

 何度か転移を繰り返しているうちに、シンはあることに気づいた。
 ギリーワイズ戦以降、ルートが段々、カルキアの中心部に近づいているのだ。

「どうした? 何かおかしなことでも?」
「いえ、少し門から遠ざかってるなと思っただけです」

 ルートは完全にランダムだ。なので中心まで行って、一気に門の近くに転移するというパターンもあった。
 現状が門までのレース仕様なのか、中心部へのレース仕様なのかはわからないが、一方通行である以上、中心部に寄ったとしても、そこから門に戻るだけだ。

「確かにな。まあこのあたりは聖地でも未知の領域だから、何かわかればもうけものといったところか……」

 情報よりも命が大事だが、と続けて、リオンはシンの後についてくる。
 転移した先の通りを抜ける際は、住宅の庭に生えた木の下やへいの陰を利用し、徘徊するモンスターに見つからないように移動する。
 細道を使うことはできないが、こういった小技は可能なのだ。
 幸い、倒壊していない家屋のおかげで身を隠す物には事欠かない。建物の陰、庭先の塀、ときにはルートを逆走し、モンスターの死角を突く。
 しかし、それでも感知してくるモンスターは存在した。音や熱のような、視覚に頼らない感知能力を持っているモンスターもいるからだ。

(スキルをほいほい使えないっていうのもきついな……隠密ハイディング

 リオンに気づかれないように、シンはスキルを発動させる。無系統に分類される魔術スキル【隠密ハイディング】だ。
 補助系武芸スキルの【隠密ハイディング】よりも効果は下がるが、一定範囲内ならパーティのようなある程度の人数まで気配や音などを隠蔽することができる。
 スキルを使用した甲斐かいもあって、蛇や蝙蝠こうもり型のモンスターに発見されずにすんだ。
 ただ、思い切りスキルが使えないというのは厄介だな、とシンはあらためて思った。
 上級選定者といえども、何十個もスキルは持っていないとシュニーに聞かされた。
 あのときはあまり気にしていなかったが、リオンのような人物と一緒にいると、やりにくいことこの上ない。
 ただでさえ、武器や称号について詳しいのはなぜかと興味を持たれているのだ。武芸、魔術、補助と多様なスキルが使えることまで知られれば、どんな追及が待っていることか。

(なんで異世界に来てまで、縛りプレイをしなきゃならんのか)

 隣にいるのがシュニーやティエラ、ヴィルヘルムといった面子メンツなら、こんな面倒にはならないんだけどな、と思いながらシンは走る。
 かなりのハイペースではあるが、リオンも選定者だけあって息切れなどはしていない。
 そして、何度か転移を繰り返し、このままいけるかと思ったところで、難敵が現れた。


「ギルスライか……」

 先ほど三つ巴の戦いを繰り広げていたのとは別の個体だろう。
 レベルは684と、カルキア内で見た中でもトップクラスだ。動きがランダムで法則性がないためかち合ってしまった。
 スライムは序盤に出てくる雑魚ざこキャラか、手ごわいボスキャラかに大別できるモンスターである。
 そして厄介なことにこのギルスライは、スライムの中でもとくに戦闘力の高いモンスターだった。
 不定形のゲルのような形状だからか、物理攻撃がほとんど効かない。
 加えて、体を触手状に伸ばしてむちのように打ちつけたり、槍のように突き刺したり、巻きつけて捕獲したりと、こちらの陣形を乱す攻撃までしてくる。
 おまけにギルスライの体から分泌ぶんぴつされる体液には、武器や防具の耐久力を減らす効果まである。戦闘が長引けば長引くほど、手間のかかる典型的なモンスターと言えた。
 たとえ見た目が4メルほどの半透明な水饅頭みずまんじゅうのようでも、決して油断してはならないのだ。

「スライムか。ただでかいだけなら問題あるまい。足踏みせず一気に突破してしまおう」
「なっ!? おいこら、なに突っ込んでんだ!!」

 しかしどうやらリオンは、スライムと言えば雑魚という認識しかもっていなかったようだ。
 慌てて制止するシンの声が聞こえなかったのか、上級選定者の身体能力でもって一息に距離を詰めていく。

「ふんっ!! ――ぐあっ!? なんだこれは!?」

 ギルスライにムスペリムを振り下ろしたリオンは、その異様な手応えに動きを止めてしまった。
 確かにギルスライも普通のスライムと同じく、コアを破壊すれば倒せる。だが、それが簡単にはできないからこそ、シンも様子を見ていたのだ。
 相手はレベル600超えのモンスター。リオンの動きが止まった隙を見逃すほど甘くはない。
 即座に反撃に移るギルスライ。たいした相手でもないと考えたのか、触手状に伸ばした体でリオンの四肢ししを拘束する。
 予想外の速さに、リオンは反応することができなかった。

「ったく、言わんこっちゃない!」

 ギルスライの体液によってリオンの防具が溶けていく音が聞こえる。そのままにしておくわけにもいかないので、シンも接近して禍紅羅を一閃させた。
 禍紅羅がまとうは鎚術系武芸スキル【砂塵爆さじんばく】――オーラを茶色に染めた禍紅羅の一撃が、リオンを捕らえていた触手を爆砕ばくさいする。
 今のシンのステータスはかなり抑制されており、ギルスライに何とかダメージを与えられる程度。
 しかし、細くなった触手部分までは、本体と同等の物理耐性を持っていなかったようだ。
 物理防御力の高い相手に有効な【砂塵爆】を使ったのもよかったのだろう。

「ちょっと離れるから動くなよ!」

 解放されたリオンを片手で抱えて、シンはその場から飛び退く。
 シンの脚力をもってすれば、一気にギルスライの攻撃範囲から逃れることも可能だった。
 シンたちのいた場所に、一呼吸遅れてギルスライの触手が突き刺さる。
 オリハルコンを混ぜた舗装材ほそうざいの使われた道路は、中級クラスのドラゴンが暴れてもひびしか入らないという強度がある。
 だというのに、ギルスライの繰り出した触手による刺突しとつはその舗装を貫通していた。

「オリハルコン舗装を貫通しやがった……」

 シンの防御力なら、数値上は生身で受けても問題ない攻撃だ。しかし、舗装の硬度を知っているだけに、思わず顔が引きつってしまう。
 ダメージがないとはいえ、触手を引きちぎるほどの一撃を繰り出したシンを、ギルスライは脅威きょういと判断したのか。リオンのときとは違い、手加減はしてくれないようだ。

「シン、あれはなんなのだ!? 本当にスライムなのか!」
「説明するから、まずは落ち着け。あれはギルスライっていって、物理攻撃にやたらと強いモンスターだ。間違っても、その辺の草原にいる雑魚スライムと一緒にするなよ?」

 また突撃されても困るので、シンはリオンにどういう相手なのか簡潔に説明した。
 さすがに自分がかなわない敵にまで突っ込まれては困ってしまう。

「……すまない、迂闊うかつだった。ここは聖地だというのにな」
「まあ、普通のスライムしか知らないなら仕方ない。ギルスライは見た目こそ柔らかそうだが、斬撃だろうと打撃だろうと、生半可な攻撃は無効化してくる厄介な相手だ」
「ああ、身に染みた。まさかこれが弾かれるとはな」

 スキルなしとはいえ、ムスペリムの攻撃をかえしたのだ。深刻そうにうなずくリオンに、これなら大丈夫かととりあえず安心するシン。
 ムスペリムを構えながらギルスライを睨むリオンを横目に、今後の方針について考える。
 ギルスライを引き離すのは難しくないだろう。防御力は高いが俊敏性しゅんびんせいは低い相手だ。
 問題があるとすれば、その追尾能力。
 五感に頼らないモンスターは、相手の魔力や気配のようなものを感知して追いかけてくるものが多い。中でもスライムはとくにその能力が高く、逃げ切ったと思っても、実はついてきていた、なんてことも多い。
 場所が場所だけに、下手に放置していくほうが危険だろう。倒したほうがよさそうだと、シンは判断した。

「あいつはかなり感知能力が高い。俺たちはすでに標的にされているから、逃げたところでずっと追ってくるだろう。ここで倒してしまおうと思うんだが、どうだ?」
「後の安全を考えるなら異論はないが、シンはあの防御を突破できるのか?」

 スライムのかたさを身をもって体験したリオンは、シンに疑わしげな視線を向けてくる。
 ムスペリムに付与されている属性が炎か雷なら話は別だったのだが、こればかりは言っても詮無せんないことだ。
 光属性はアンデッドや死霊のようなモンスターには実に効果的だが、それ以外のモンスターにはたいした効果がないことが多い。
 つまりギルスライにとって、リオンの攻撃はただの物理攻撃でしかなかったのである。

「とっておきがある。俺がコアまでの道を作るから、一番強いスキルでコアを破壊してくれ。コア自体はかなりもろいからいけるはずだ」

 コアを持つモンスターは総じてコアへの直接攻撃に弱く、とりわけスライム系のモンスターはそれが顕著けんちょだ。
 そのせいかゲーム時代、コア以外の防御力が高いのはバランス調節の結果だとすら言われていた。
 なのでチャンスさえあれば、リオンのスキルなら、武器の性能もあって問題なくコアを壊せるだろうとシンは判断した。

「シンのとっておきか。いいだろう。この命預けるぞ」

 不安などないかのように、リオンはギルスライに向き直る。ムスペリムを担ぐように構え、いつでも踏み出せるように準備する。
 シンがいなければ今頃リオンはギルスライに倒され――否、食われていただろう。必死に抵抗したリオンをあざ笑うかのような触手の拘束力は、思い出すだけで恐ろしい。
 しかし、あれほど強固だった拘束を、シンはたった一撃で吹き飛ばした。そのシンが任せろと言うのだ。
 ここで行かねば女がすたると、リオンは全身に力をみなぎらせ、同時に意識から雑念を取り払っていく。
 この世界においてメンタルの改善は、技の威力、精度の向上につながる。アーツ、スキルを問わず、本来の威力をわずかに上昇させるのだ。
 リオンはシンの合図を待ちながら、自らが放つスキルに意識を集中させていた。

「期待には応えないとな」

 シンが取り出したのは1枚のカード。表面には炎をした、青い模様が描かれている。

解放リリース! 【フレア・バースト】!!」

 叫ぶのと同時に、シンはカードをギルスライに向ける。するとカードがひとりでに破れ、直径30セメルほどの青白い球体が出現する。
 そして次の瞬間、球体から1メルはあろうかという熱線が発射された。
 中心は白く、外に向かうほどに青く見えるそれは、ギルスライのコアめがけて空中を突き進む。
 かわせないと判断したのか、ギルスライはフレア・バーストが当たる正面の体積を増やす。
 そこへ、空気をがしながら熱線が突き刺さった。

「――ッ!? ――――ッ!!!」

 必死に耐えるギルスライだが、もともとその体は魔術への耐性が低い。レベルによる強化を加味しても、フレア・バーストに耐えきることはできなかった。
 青白い熱線が消えると、射線上にあった体の部分だけを蒸発させた、ギルスライの姿があった。
 熱線がコアまで破壊することはなかったが、半分ほど露出している。
 元の体積の4分の1以上が一度に吹き飛んだせいか、ギルスライは熱線を受けた直後の状態から動かない。

「今っ!」
「任せろっ!!」

 その隙を見逃す2人ではない。シンの声に反応したリオンがムスペリムを構え、一気にギルスライへと突き進んだ。
 フレア・バーストの威力に驚きはしたものの、敵を倒すことに集中していたリオンは、その驚きを頭の片隅かたすみに放置して一歩を踏み出していた。
 高まった集中力は、リオンの能力を十全に発揮させる。
 今まででもっとも速くギルスライの前へと到達し、残像を残して振り下ろされたムスペリムが、わずかな手ごたえとともにコアを両断する。

「ッ!?」

 弱点を真っ二つにされたギルスライは一度ゲル状の体をブルリと震わせ、その生を終わらせた。その後には、地面に広がるゲル状物質と、2つに割れた宝玉。

「とっとと宝玉を回収して離れるぞ。戦闘音を感知して、他のモンスターが近づいてきている」
「わかった。先導を頼む」


 地面に転がった宝玉を走りながら拾い上げ、2人は正解と思しきルートをひた走る。

「ときにシン。先ほどから言葉遣いがやけに親しげだな」
「あ……」

 まるで今思い出したかのようにリオンは指摘した。
 シンは表情を歪める。その顔には、はっきり「しまった!」と書かれてあった。
 リオンが無謀むぼうにも飛び出したのを注意した勢いで、ついそのまま話し続けてしまったのだ。

「少しは、私たちの間の壁がなくなったのかな?」
「あ、いやすいません。戦闘中だとつい言葉遣いが荒くなってしまって」
「む、別にそのままで構わんぞ。お互い命を預け合う状況だ。変にかしこまっていては連携も取りにくいだろう」
「そうは言っても、やっぱりこういうのはきっちりしておかないと……」

 シンの感覚からすると、王族や貴族という特権階級が存在する社会において、それに属する人間に馴れ馴れしく話す平民などそういない。

「ダメだ。ここは聖地だぞ? どんな些細ささいなことが死につながるかわからんのだ。先ほども遠慮していたせいで、私を止めるのが遅れたのだろう? 私個人のミスで私だけが死ぬのなら、それは自業自得じごうじとくだ。だが、私のミスでシンまで危機に陥っては死んでも死にきれん。この際だ、お互い変な遠慮はなしにしよう。私のことはリオンでいいぞ」
「えっと……」

 言葉遣いの問題が、いつの間にか生死を分けるほどの重大事項になっていた。
 ギルスライの件は、別段シンがリオンに何か遠慮していたわけではないのだが、リオンの中ではそう解釈されているようだった。
 さすがに命に関わるという話までされては、特別な理由もなしに断ることはできない。
 いつの間にか、距離を置き続けるのが難しい空気が出来上がっていた。

「……わかったよ。ただ、こういう場合は王族の命を優先するべきなんじゃないか?」
「シンの言うことも正論だが、ここで私だけ残されたところで、無事脱出できる確率などたかが知れている。互いが生きていることに意味があるんだ。繰り返すが、これからは遠慮はなしだぞ」

 うまい断り文句が浮かばなかったシンは、しぶしぶリオンの条件を呑んだ。
 顔をしかめるシンと嬉しそうに微笑むリオンは、実に対照的だった。

「脱出するまでの間限定だからな」
「む、まあ仕方あるまい」

 他に誰もいないからできるのだと、釘を刺すのは忘れない。

「……じゃあこの機会に言わせてもらおう」

 少々しゃくだったので、シンは少しばかり反撃に出ることにした。

「見えそうだぞ。いろいろと」
「うん?」

 シンの言ったことが理解できなかったのか、リオンは首をかしげた。

「ギルスライに捕まったとこ、見てみ?」
「捕まった? ――きゃあっ!」

 シンの言葉にあらためて自分の格好を確認したリオンは、かわいらしい声をあげてその場にしゃがみ込んだ。ギルスライに捕まっていた部分の装備に加えて、着ていた衣服まで溶けたことにようやく気づいたのだ。
 はっきり言ってしまえば、無事なところはほとんどない。腕と脚はほとんどむき出しで、ホットパンツなどかなり際どい状態になっている。
 無事なのは胴体部分だけ。ジャケットと竜の皮を用いた鎧の二重装備だったおかげか、完全に溶けるのは防げたようだ。
 とはいっても、これもところどころ穴が開いており、リオンが女性であることを考えればとても人に見せられる格好ではなかった。
 ギルスライの装備耐久力減少効果のある体液は、最後までしっかりと職務を遂行していったようだ。
 ファンタジー生物の体液ゆえか、不思議と肌には傷一つないのが不幸中の幸いかもしれない。といっても、シンはリオンの上げた声のほうが気になっていたのだが。

「きゃあ?」
「……見ないでくれ」
「あー、悪い……とりあえず、これ羽織っとけ」

 見えそうで見えないリオンの格好は、非常に目に毒だった。リオンもこれは恥ずかしかったようで、頬を染めて身を縮めている。
 仕方がないので、シンは着ていた上着をリオンに羽織らせた。

「とりあえず、そこの家に入ろう。ここでじっとしてるのはまずい」
「……わかった」


 急にしおらしくなったリオンに調子を狂わされながら、シンは近くの比較的まともな廃屋を指差した。周囲にモンスターはいないが、屋外よりはましだろう。
 タイムアタックレースの最中でも、一軒家程度の広さの廃屋に入ることは可能だった。
 念のため、シンはリオンに気づかれないように【防壁バリア】を発動させる。そして、懐からアイテムカードを取り出した。もちろん、実際はアイテムボックスからなのだが。

「とりあえず、これに着替えとけ。今の状態よりましなはずだ」

 取り出したアイテムカードを具現化させ、リオンに差し出す。アイテムボックスのやしになっていた装備アイテムたちだ。
 それほど強力なものは渡せないのでランクは低いが、シンによって強化されているので例外なく市場に出回っているものの数倍の性能がある。
 渡したのは岩虫糸いわむしいとで作ったシャツと、ブラックバッファローの皮を使ったジャケット、そして鬼蜘蛛糸おにぐもいと製のズボンだ。
 見た目としてはシンプルな白地のシャツと茶色のジャケット、黒地のズボンといったところだ。

「すまない……シンはいつもこんな備えをしているのか?」
「一応な。俺がいたところには、備えあればうれいなし、ってことわざがあるんだよ」

 リオンに通じるかわからなかったので、念のため、出身地で使われていたことにした。

「良い言葉だな。それにしても、こんなにたくさんアイテムカードを持っているとは」
「知り合いにちょっとな。悪いが、これについちゃ一切情報を教える気はないぞ。そういう約束だ」

 自前なのではなく、個人的なつながりから手に入れたかのようにほのめかしておく。

「わかっている。アイテムボックス持ちなど、選定者でもそういないんだ。無闇に詮索しようとは思わない。羨ましいとは、思うがな」

 アイテムボックスの有用性は、そこいらのスキルの比ではない。とくにその輸送力は商売、軍事といった分野で非常に役に立つのだ。
 執拗しつように詮索しないのだから、リオンはマシなほうだろう。

「ところでシン。借りておいて、こういうことを言うのはいささか失礼だとは思うのだが、もう少しゆったりした服はないだろうか?」
「あれ、どこか破れてたりしたか?」
「いや、な? 少しきつくて」
「きつい? ……ああ」

 リオンの言葉を反芻はんすうして、シンはその言葉に込められた意味に気づく。
 リオンに渡した装備のサイズは、シンの体格に合わせて固定してある。低級の装備にはサイズ調節機能がついていないので、怪しまれないようわざとその機能を停止させたのだ。
 ただ、そのせいで不具合が出た。主に胸囲に関して。

「…………」
「おい、どこを見ている?」
「イエベツニ?」

 シンの視線の先には、強引にボタンを掛けたせいで、今にもはちきれそうなリオンの胸元があった。しかも、掛けたといっても胸の下半分だけ。上半分は開きっぱなしで、今も深い谷間が覗いている。
 一般的な量産型の衣服なら、ここまで合わないことはなかっただろう。しかし今回、リオンが着ているのはシンの体格に合わせたものだ。
 サイズ調節機能は体のラインに沿って調整されるので、男性としては細身に分類されるシンをベースにした状態では、胸元にまったく余裕がない。
 平均程度の大きさなら問題なかったのだろうが、リオンのような標準よりも大きな双丘を抱えているといろいろと足りないのだ。
 加えて袖も長さがありすぎて、指の付け根まで隠れていたりする。
 ボロボロの装備だったころよりは見られる格好になったわけだが、長すぎる袖から指だけを出し、胸元を隠すように身をよじる姿は、さっきまでとは違った意味で扇情的せんじょうてきである。

「すまんが服のサイズはどうしようもない」
「むう、仕方がないか」
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