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二章 巫女の舞
34.パウさまとアミルの話-3
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「これは秘されている事だが、先代の魚の巫女がアツマで産んだ子が鳥の愛し子だったそうだ。鳥の愛し子が現れたのも久方ぶりのことだ」
「先代の巫女はあなたなのでは?」
「その辺りはルルティアが知っておるから後で聞くといい。先代の魚の巫女が鳥の愛し子を産んだことを蛇の長が知れば、奴が当代の魚の巫女であるルルティアに蛇の愛し子を産ませようと思ってもおかしくはない」
アミルは膝の上に置いた手を強く握りしめる。
「ヤツならやりかねません」
「ルルティアが狙われることを危惧した先代の魚の巫女が、このことをワシとルルティアの父アリイにだけ秘密裏に教えてくれた。アリイはそれ以来、蛇の長の動向を注意深く調べているはずだ」
パウさまの深い青い目がアミルの濃い藍色の目をひたと見すえる。
「おぬし、ルルティアを守れるか?」
「それは……でも、俺よりももっと相応しい相手がいるのでは?」
アミルの脳内を背の高いメガネの男がチラとかすめる。
「いいや、おぬしだ。だからおぬしに伝えた」
パウさまはさらに強い眼差しでアミルに問いかける。
(ルルティアを守る? 俺が? 俺にそんなことができるのか? だって俺は、俺の力は――)
アミルの様子をうかがっていたパウさまが、急に胸を押さえて苦しそうにうずくまった。
「うぐ……むぅ……」
「パウさま!」
アミルがパウさまの身体を支えると、ふわりとパウさまの身体に近づいたアクアさまが淡く水色に光り天幕の中を照らす。
「あぁ……ありがとう」
パウさまがアクアさまに向かって弱々しく微笑んだ。
パウさまは肩を支えるアミルの手に自分の手を優しく重ねた。
皺のある小さな手が冷たくなったアミルの手をじんわりと温める。
「一方的に話して悪かったな。ワシにはあまり時間が無いのでな。おぬしはワシに何か聞きたいことはあるか?」
「……なぜ俺が猫の愛し子なのでしょうか?」
「それはワシにはわからん」
パウさまは静かに首をふった。
「ただ加護は『ある』それだけだ。おぬしがおぬしの父や母の子として産まれたように、おぬしがおぬしであるように、ただ『そう』であるというだけだ」
パウさまがバズを見て微笑む。
「たとえ意味があったとしても人にわかるようなものでは無いさ」
天幕の中に沈黙が訪れた。
バズは黙ったままパウさまとアミルを見つめている。
「納得いかんか?」
「いえ。ありがとうございます」
パウさまは目をつぶると眉間のシワを深くした。
「ふむ……そろそろ限界か。ヌイを……その鈴で……」
「パウさま!!」
パウさまが弱々しく指した先にある鈴を手に取り、アミルは強くそれを振って鳴らした。
すぐに天幕の入り口がバサリと勢いよく開き、ヌイとルルティア、それにお付きの二人が入ってきた。
「パウさま」
ヌイがパウさまにかけ寄り床に横にならせ、お付きの女性に何やら指示を出す。
「貴様、パウさまに何をした!!」
「アミル!」
お付きの男性がアミルの胸ぐらをつかむのを、ルルティアがあわてて止めた。
「やめい……いつもの……発作だ……」
横になったパウさまが微かな声で男性を止めた。
ヌイの指示ですぐにアミルとルルティアは天幕から出された。
「パウさま……」
ルルティアは青い顔をしたまま手を組んでパウさまの無事を祈っていた。
ルルティアを守ってくれ――別れ際に見た深い海の色をした目はアミルにそう告げていた。
「先代の巫女はあなたなのでは?」
「その辺りはルルティアが知っておるから後で聞くといい。先代の魚の巫女が鳥の愛し子を産んだことを蛇の長が知れば、奴が当代の魚の巫女であるルルティアに蛇の愛し子を産ませようと思ってもおかしくはない」
アミルは膝の上に置いた手を強く握りしめる。
「ヤツならやりかねません」
「ルルティアが狙われることを危惧した先代の魚の巫女が、このことをワシとルルティアの父アリイにだけ秘密裏に教えてくれた。アリイはそれ以来、蛇の長の動向を注意深く調べているはずだ」
パウさまの深い青い目がアミルの濃い藍色の目をひたと見すえる。
「おぬし、ルルティアを守れるか?」
「それは……でも、俺よりももっと相応しい相手がいるのでは?」
アミルの脳内を背の高いメガネの男がチラとかすめる。
「いいや、おぬしだ。だからおぬしに伝えた」
パウさまはさらに強い眼差しでアミルに問いかける。
(ルルティアを守る? 俺が? 俺にそんなことができるのか? だって俺は、俺の力は――)
アミルの様子をうかがっていたパウさまが、急に胸を押さえて苦しそうにうずくまった。
「うぐ……むぅ……」
「パウさま!」
アミルがパウさまの身体を支えると、ふわりとパウさまの身体に近づいたアクアさまが淡く水色に光り天幕の中を照らす。
「あぁ……ありがとう」
パウさまがアクアさまに向かって弱々しく微笑んだ。
パウさまは肩を支えるアミルの手に自分の手を優しく重ねた。
皺のある小さな手が冷たくなったアミルの手をじんわりと温める。
「一方的に話して悪かったな。ワシにはあまり時間が無いのでな。おぬしはワシに何か聞きたいことはあるか?」
「……なぜ俺が猫の愛し子なのでしょうか?」
「それはワシにはわからん」
パウさまは静かに首をふった。
「ただ加護は『ある』それだけだ。おぬしがおぬしの父や母の子として産まれたように、おぬしがおぬしであるように、ただ『そう』であるというだけだ」
パウさまがバズを見て微笑む。
「たとえ意味があったとしても人にわかるようなものでは無いさ」
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バズは黙ったままパウさまとアミルを見つめている。
「納得いかんか?」
「いえ。ありがとうございます」
パウさまは目をつぶると眉間のシワを深くした。
「ふむ……そろそろ限界か。ヌイを……その鈴で……」
「パウさま!!」
パウさまが弱々しく指した先にある鈴を手に取り、アミルは強くそれを振って鳴らした。
すぐに天幕の入り口がバサリと勢いよく開き、ヌイとルルティア、それにお付きの二人が入ってきた。
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「やめい……いつもの……発作だ……」
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ヌイの指示ですぐにアミルとルルティアは天幕から出された。
「パウさま……」
ルルティアは青い顔をしたまま手を組んでパウさまの無事を祈っていた。
ルルティアを守ってくれ――別れ際に見た深い海の色をした目はアミルにそう告げていた。
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