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三章 幸運の猫

35.島の案内-1

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 ヌイが付き添ったままパウさまはコモハナ島のパウさまの家まで運ばれていった。
 アミルはいつになく真剣な顔で黙ったまま考えこんでいて、ルルティアは話しかけることができなかった。

 あれから数日経ってもパウさまは体調が思わしくなく伏せったままだった。
 会いに行くことも止められてしまったので、気晴らしにカプ島の祠にでも向かおうかとルルティアがトボトボ歩いていると、アミルが道の向こうからやってきた。

「ルー! ちょうどよかった。今あんたに会いに行くところだったんだ」

「アミル。何か用?」

 先日のアミルの様子が気になったけれど、今日のアミルはいつもと同じようで、でも少しどこか違うようでもあった。

「島を案内してもらおうと思ってさ」

「どこに行きたいの?」

「あんたの好きなところを教えてくれよ」

「え、良いけど……なんで?」

「もっとあんたのことを知りたくなった」

「えぇ……?」

 思いがけない提案にルルティアはドギマギしてしまう。
 ルルティアが一番好きなところはカプ島の祠だけれど、そこはアミルは良く知っているのでルルティアは港に案内することにした。

「連絡船が到着する日はもっと市が立ってにぎわっているんだけど」

 今日の屋台はまばらで、あるのは港周辺で働く人を相手にしている店ぐらいだった。
 その中の一つの屋台で果物のジュースを買って飲みながら港をながめる。

「アイラナ周辺は複雑な海流があって満月とその前後の日以外に大型の船は行き来できないんだけど、実は小さな船を上手く使えば海流を越えられるの」

「へー。なんで普段はそれで行き来しないんだ?」

「海流を越えてもその後の大海を小船じゃわたれないでしょ? だから小船と大型の船を乗り継がないといけなくて、わざわざそれで行き来するにはちょっと使い勝手が悪いんだよね」

 小船で運べるわずかな物のために大型の船を動かすのはさすがにもったいないから、とルルティアが苦笑する。

「だから本当にどうしてもって緊急の時にしか使われないの」

「なるほどな」

 ルルティアが指をさしてあれこれ説明するのを、アミルは楽しそうに聞いていた。

「そうだ。言ってなかったけど祭のあんたの舞良かったよ」

「ほんと?」

「あぁ、すごくキレイだった」

「あ、ありがと」

 多少はからかわれるかと身構えていたら素直にほめてくるので、ルルティアは動揺して顔が赤くなってしまった。

(なんかいつもと違う……?)

 気恥ずかしくなって下を向いて黙っていると、ガタイの良い漁師の集団がガヤガヤと騒ぎながら後ろを通りかかった。
 ルルティアに気づいた漁師の一人がルルティアの頭をわしゃわしゃとなでまわす。

「お、ルルティアさまじゃねーか。アクアさまも元気にしてるか?」

「きゃっ!」

 アクアさまは魚の精霊なので、漁師たちはみな信心深くアクアさまもルルティアのことも敬ってくれていた。
 別の漁師がルルティアの隣にアミルがいるのに気づいた。

「おいおい。最近、島に来た吟遊詩人っておまえだな。何を企んでる?」
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