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三章 幸運の猫
41.別れ-2
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カプ島に着くとアミルはリュートを抱えて祠の前に座り、その横にルルティアがたたずむ。
昼間にも踊った鎮魂の舞の旋律をアミルのリュートが静かに奏で始めた。
ルルティアは腕をふって鈴を鳴らした。
シャラン、シャラン
それは不思議な感覚だった。
アミルのリュートの音色と歌声がルルティアの鈴の音と重なり、ルルティアの身体を優しく包みこむ。
いつもは舞を舞っている時はアクアさまと一緒に水の中に深く潜っていくような気がしていた。
しかしアミルの歌声に包まれると、すべてが満たされてこのまま世界と一つに溶けてしまいそうな心地がした。
アクアさまとバズは祠の近くで大人しくしていた。
鎮魂の舞が終わる。
パウさまに祈りはきちんと届いただろうか。
「次は俺からパウさまに」
アミルが今度は異国の曲を奏でだした。
アミルの歌はルルティアの知らない言葉で紡がれていたが、その声色からアミルがパウさまの鎮魂を深く祈ってくれているのが伝わった。
アミルがルルティアを見て目配せをしたので、ルルティアは音に合わせておもむくままに身体を動かしアミルの歌と一緒に舞った。
ポロンとアミルのリュートが終わりの音を告げ、ルルティアの手がシャランと鈴の音を立てながらゆっくりと下がる。
ルルティアはハァハァと息を整えてから、顔を上げてアミルに微笑んだ。
「ありがとう、アミル。パウさまもきっと喜んでくれてると思う。パウさまはずっと心臓が悪くてね、アクアさまの癒しの力でも痛みを少しだけ楽にすることしかできなくて……」
「ルー」
アミルがルルティアの言葉を遮った。
「ほら」
アミルがリュートを置いて両手を広げる。
ルルティアが立ったまま動けないでいると、アミルはルルティアの腕をつかんでグイと引っ張り腕の中に抱きよせた。
「もう我慢しなくて良い」
アミルが優しくルルティアの耳元でささやく。
「…………う、うぅ」
ルルティアの目から大粒の涙がボロボロこぼれ落ちる。
ルルティアはアミルの背に手を回して声を上げて泣きだした。アミルはルルティアが落ち着くまで背中を優しくなで続けた。
ひとしきり泣いてルルティアの気持ちが落ち着いた頃、ようやくルルティアは顔を上げた。
「ありがとう、アミル」
「うん」
ルルティアを見てアミルは夜空色の目を細めて柔らかく微笑んだ。
ドクンッ
そのとたんにルルティアの胸が激しく鳴り始めた。
「ん? ルー?」
ルルティアの様子がおかしくなったのに気づき、アミルが心配そうにのぞいてくる。ルルティアは激しく動揺していた。
(どうしよう、どうしよう。番とか運命の相手とかそんなのはわからない。でも、でも。私――アミルが好きだ)
はっきりとルルティアは自分の気持ちを自覚した。
それと同時にドクン、ドクンと心臓が激しく胸を打ち身体に熱がたまる。
「ルー、どうした?」
(熱い、熱い、身体が熱い)
ドクンッ
ドクンッ
ドクンッ
その瞬間、ルルティアのオレンジの髪色がサァーッと青に染まり、胸の間のウロコがじんわりと広がってその身体は薄い水色のウロコに包まれた。
昼間にも踊った鎮魂の舞の旋律をアミルのリュートが静かに奏で始めた。
ルルティアは腕をふって鈴を鳴らした。
シャラン、シャラン
それは不思議な感覚だった。
アミルのリュートの音色と歌声がルルティアの鈴の音と重なり、ルルティアの身体を優しく包みこむ。
いつもは舞を舞っている時はアクアさまと一緒に水の中に深く潜っていくような気がしていた。
しかしアミルの歌声に包まれると、すべてが満たされてこのまま世界と一つに溶けてしまいそうな心地がした。
アクアさまとバズは祠の近くで大人しくしていた。
鎮魂の舞が終わる。
パウさまに祈りはきちんと届いただろうか。
「次は俺からパウさまに」
アミルが今度は異国の曲を奏でだした。
アミルの歌はルルティアの知らない言葉で紡がれていたが、その声色からアミルがパウさまの鎮魂を深く祈ってくれているのが伝わった。
アミルがルルティアを見て目配せをしたので、ルルティアは音に合わせておもむくままに身体を動かしアミルの歌と一緒に舞った。
ポロンとアミルのリュートが終わりの音を告げ、ルルティアの手がシャランと鈴の音を立てながらゆっくりと下がる。
ルルティアはハァハァと息を整えてから、顔を上げてアミルに微笑んだ。
「ありがとう、アミル。パウさまもきっと喜んでくれてると思う。パウさまはずっと心臓が悪くてね、アクアさまの癒しの力でも痛みを少しだけ楽にすることしかできなくて……」
「ルー」
アミルがルルティアの言葉を遮った。
「ほら」
アミルがリュートを置いて両手を広げる。
ルルティアが立ったまま動けないでいると、アミルはルルティアの腕をつかんでグイと引っ張り腕の中に抱きよせた。
「もう我慢しなくて良い」
アミルが優しくルルティアの耳元でささやく。
「…………う、うぅ」
ルルティアの目から大粒の涙がボロボロこぼれ落ちる。
ルルティアはアミルの背に手を回して声を上げて泣きだした。アミルはルルティアが落ち着くまで背中を優しくなで続けた。
ひとしきり泣いてルルティアの気持ちが落ち着いた頃、ようやくルルティアは顔を上げた。
「ありがとう、アミル」
「うん」
ルルティアを見てアミルは夜空色の目を細めて柔らかく微笑んだ。
ドクンッ
そのとたんにルルティアの胸が激しく鳴り始めた。
「ん? ルー?」
ルルティアの様子がおかしくなったのに気づき、アミルが心配そうにのぞいてくる。ルルティアは激しく動揺していた。
(どうしよう、どうしよう。番とか運命の相手とかそんなのはわからない。でも、でも。私――アミルが好きだ)
はっきりとルルティアは自分の気持ちを自覚した。
それと同時にドクン、ドクンと心臓が激しく胸を打ち身体に熱がたまる。
「ルー、どうした?」
(熱い、熱い、身体が熱い)
ドクンッ
ドクンッ
ドクンッ
その瞬間、ルルティアのオレンジの髪色がサァーッと青に染まり、胸の間のウロコがじんわりと広がってその身体は薄い水色のウロコに包まれた。
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