【R18/完結】猫は魚を食べちゃいたい(※性的な意味で)〜愛され巫女の運命の番は美形で意地悪な吟遊詩人〜

河津ミネ

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六章 愛の歌

88.新たな巫女-1

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 バズがいなくなってから少しずつアミルはバズの加護の力を失っていった。
 回復力も人並みになり、素早い動きや高い跳躍、強い力なども使えなくなった。
 アミルに残ったのはアクアさまを見ることができる力くらいだった。
 アミルは元々バズの力を隠して生活していたので別段不便は感じなかった。
 ただ町角でくつろぐ猫の姿が目に入るたび、アミルは胸の奥の方がわずかに痛んだ。
 そんな時は決まってルルティアがアミルに寄り添った。

「アミル……大丈夫?」

「ん? あぁ。一体化できなくなって好きなだけルーを抱けなくなったのが残念だな。もう一回ルーと思う存分やっときゃ良かった」

「……バカ」

 アミルの強がりを優しく笑ってくれる人が隣にいてくれる、それだけで何事も耐えられる気がした。
 実際のところルルティアはアクアさまの力を借りて一体化できるので、アミルの体力が続く限りは思う存分相手をしてくれた。
 とはいえあまりやり過ぎると、最後は快感でわけがわからなくなったルルティアが本気で泣き出してしまうので加減は必要だったが。

 アミルはあれから一度だけラムールの土地に渡った。
 ノウスが用意してくれたナビーラの眠る地には、ナビーラだけじゃなく父と母の名前も刻まれた石碑が置かれていた。
 アミルはラムールの大半を覆う砂漠の砂の上に立ち周囲に意識を広げてみたが、バズの気配は感じられなかった。
 この土地に眠っているのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
 ただいつかバズがまた誰かと友だちになれるといいなと心から願った。
 アミルは砂の大地に両手をついて静かに額をつけると、バズにお礼と別れの言葉を告げた。
 そうして顔を上げてから砂漠の大地を見渡す。
 ラムールにはルルティアも来たがっていたけれど大事な時期だったので留守番してもらった。
 それでもいつかルルティアにもこの景色を見てもらいたいとアミルは思った。


 *****


 ラムールの土地から戻ってしばらく経った頃、アミルは病院の廊下を歩き回っていた。

「ウロウロしてないで落ち着いたらどう?」

「まるで君が猫みたいだな」

 落ち着かない様子のアミルに、付き添っているウラウとヌイが声をかける。
 すると扉の向こうから声があがった。

「オギャア!」 

 その声を聞いた瞬間、アミルはドアに張り付いて声をかけた。

「ルー! ルルティア!!」

 しばらくしてから扉がゆっくりと開いて、アミルだけ中に入るように促された。
 床のマットの上には髪を乱し少しやつれた姿のルルティアが横たわっていた。
 かたわらにしゃがんでいた産婆の腕の中には小さな赤ん坊が抱かれている。

「女の子だって」

 ルルティアはアミルを見ると嬉しそうに微笑んだ。
 その笑顔があまりにも美しくて愛おしくて、アミルは胸がいっぱいになった。

「ありがとう……ルー」

 言いたいこと伝えたいことはたくさんあるはずなのに、声に出せたのはそれだけだった。
 ルルティアのすぐそばに跪いてその手を握り胸に抱いた。
 アミルは目の前がぼやけてしまってルルティアをはっきり見ることができなかった。
 アクアさまが淡く水色に光りながらルルティアの上をただよい癒している。

「ねぇアミル。ウロコ……ウロコはある?」
 
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