【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

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一章 できそこないの魔女と俺様令息

6.-2

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 ――古来、魔女と聖女は同じもので、人々は魔女も聖女も等しく『魔女』と呼んでいた。

 メモリアは淡々と話し始める。


 *****


 かつてこの国には魔女の住む地があった。

 そこでは人々の安寧のため、魔女が日々祈りを捧げていた。
 その祈りは多岐に渡り、赤子の健やかな成長であったり、病や怪我からの回復、または獲物や作物の安定した収穫を願うものだったりした。

『魔女様ありがとうございます』

 人々は魔女に感謝を捧げ、敬い奉った。

 しかしそのうち魔女の力を巡って醜い争いが起こるようになる。
 魔女は自らを守るため、人々を呪う力を得ていく。
 力のある魔女が呪いの祈りを捧げれば、相手の身体を朽ち果てさせることができたという。

 そして次第に祝福を与える者は白い魔女、呪いを与える者は黒い魔女と呼ばれるようになる。

 魔女の住む地を含む周辺を統べるアロガンシア王家は、魔女の力を巡って争いが起こることを良しとしなかった。
 そして魔女の力を味方にすべく、王宮に礼拝堂を建てて魔女を身の内に引き込んだ。

『魔女の力を我々に貸せ。代わりにその身を護ってやろう』

 魔女はその力をアロガンシア王家のために使うことを約束し、王家は魔女の身の安全を護ることを約束する。
 こうして魔女と王家は協力するようになった。

 しばらくたったある時、アロガンシア王国が他国に攻め込まれ、当時の王は黒の魔女に協力を求めた。
 偉大な黒の魔女の呪いの力で、アロガンシア王国は戦に勝利する。
 しかし黒の魔女の力はあまりにすさまじく、その力を恐れた王は黒の魔女を幽閉してしまう。

『魔女の力は危険だ。このような力を自由にしてはならない』

 感謝されこそすれ幽閉されるなど許せぬ黒の魔女は、王に呪いをかけ怨嗟の声をあげながら死んでいった。

『すべてを忘れて無かったことに』

 黒の魔女は王に忘却の呪いをかけ、呪いを受けた王は人々から忘れ去られその身が朽ち果てるまで誰にも気づかれることはなかったという。
 王が死んでもなお呪いは次の王に引き継がれ、ようやく王の一族は王家の血が呪われたことを知る。
 次代の王は黒の魔女の亡骸を封印し、あらゆる手段で呪いを解こうとしたがそれは叶わなかった。
 その次に王位を継いだ王も、そのまた次に継いだ王も呪いを解けないままだった。

『呪いが消えぬ。呪われた王が死に、その子らがすべて死んでもなお呪いが消えぬ』

 王家は呪いを解けぬ黒い魔女を迫害するようになる。
 そしてその一方で、祝福を与える白い魔女を聖女と呼び敬い始める。
 呪いを与える黒い魔女は迫害を恐れ身を隠すようになり、今では祝福を与える白い魔女だけが聖女として王家に仕えるようになったのだった。


 *****


「ここにはそう記されています」

 メモリアは机の上の本の表紙の上に手を置きながら、ふ、と息を吐いて長い話を終えた。
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