【R18/完結】私のことは忘れてください〜できそこないの魔女は俺様な侯爵令息に溺愛される〜

河津ミネ

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一章 できそこないの魔女と俺様令息

6.-3

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 メモリアの話によると、古の魔女と呼ばれる黒い魔女によって王家には忘却の呪いがかけられているらしい。
 そしてルーパスにかけられた忘却の呪いを身に移しているせいで、ソフィアは忘れられやすいと言う。

(つまりルーパス殿下の身体を覆っているあの黒いもやの正体が忘却の呪い……?)

 昔から人に忘れられやすいのが当たり前で、それが王家に対する忘却の呪いのせいだと言われても、なんだか実感がわかない。

「今でも聖女らは王家に祝福の祈りを捧げ、王家の呪いの効果を弱めています。聖女も魔女も元々は同じもので、ただその能力の方向が違うだけです。ですから聖女には呪いの耐性がありますし、逆にソフィア様には祝福があまり効かないはずです」

「そうなんですか」

 聖女が祝福を与える相手は聖官らが厳しく管理しており、誰でもが気軽に祝福の祈りを受けられるわけではない。
 もちろんソフィアも聖女の祝福を受けたことがなく、自分に祝福が効きづらいかどうかは知らなかった。

「それにしても……魔女は迫害されていたんですね」

 魔女が迫害されていた過去があることなど、まるで知らなかった。
 聖女や聖官たちの態度を考えると、もしかすると彼らはそれを知っていたのかもしれない。
 しかしそんなことを教えてくれる人は、ソフィアの周りにはこれまでひとりもいなかった。

「身を隠したっていうことは、王宮に私しか魔女がいないのはそのせいなのでしょうか?」

「そうですね。迫害を受けて王宮には魔女がいなくなりました。実は聖女も魔女も生涯独身を強いられますから、そのことを隠す者も多いのです。さらに聖女は崇められるのに対して、魔女は迫害されるとなればよけいに名乗りをあげるものはいないのでしょう」

「では本当はもっと魔女がいるというのですか?」

「はい。大きな声では言えませんが、私も何人か会ったことがございます」

「えぇ!」

 まさか魔女が自分以外にもいると思わなかった。

「でも、魔女が他にもいるのならば私も会ってみたいわ。私のように呪いを移すことができる魔女もいるのかしら……」

「レオルド様に相談してみましょう」

「えっと、それはレオルド様に申し訳ないから大丈夫です。あの、私の言ったことは忘れてください」

「そうですか。ソフィア様に頼まれればレオルド様は喜ばれると思いますが」

「まさか」

 メモリアがレオルドのことを誰よりもわかっているように言うので、なぜか少し胸の奥が痛んだ。
 そんな理由のわからない痛みには気づかないふりをして、魔女として王宮に来た頃のことを思い出す。

「……ノランおじさんは」

「ソフィア様を引き取った方ですね」

「えぇ。父の遠縁の方でどうやら外国暮らしが長かったらしいです。だからきっと魔女のことをよく知らなかったんですね。もし両親が生きていたら、私は魔女である事を隠していたのかもしれません……」

 思わずこぼしてから、これでは魔女であることに不満があると言っているようなものだと気づく。

「あの、ごめんなさい。いま言ったことは秘密にしてもらえますか?」

「私は何も聞いておりません」

「ありがとう、メモリアさん」

 無表情のまま片目をつぶるメモリアを見て、ほっと胸をなで下ろした。
 メモリアはいつも無表情だけれど、あんがい話の分かる人なのかもしれない。
 こんな人を従者として信頼関係を結ぶレオルドは、いったいどんな人なのだろうか。
 他人と関わることなく生きてきたソフィアは、メモリアとその向こうにいるレオルドに少しずつ興味を持ち始めていた。
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