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Chapter-02『新たなる神姫、深紅の力は無窮の愛が為に』
第一章:深紅の欠片、目覚めの刻は足音もなく忍び寄る/05
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「アンジェ、どうしたんだ……!?」
隅の方に蹲る彼女、頭を抱えたその背中は……どう見てもただごとではない。
それを見た瞬間、戒斗は血相を変えて彼女の傍に駆け寄っていった。それこそ比喩抜きにカウンターを飛び越えたぐらいの、それぐらいの勢いで戒斗はアンジェの傍に駆け寄り、彼女の肩に手を触れながら呼び掛ける。
「あはは、なんでもないよ……大丈夫」
するとアンジェは蹲ったままで戒斗の方に視線を向け、彼に対して苦笑い気味にそう言った。
だが……その顔色はどう見たって大丈夫ではない。顔はまさに顔面蒼白ってぐらいに青く、口振りこそ気丈に振る舞っているが……しかし、顔には隠しきれない辛さが滲み出ていた。
「大丈夫なわけあるか……!!」
そんな彼女の様子を見て、戒斗は彼女に負けず劣らずの真っ青な顔でそう言うが。しかしアンジェは「本当に、大丈夫だよ……」と薄い笑顔で言葉を返す。
「ここ最近、たまにこういうことがあるんだけど……でも、すぐに治るから」
「すぐに治るって、でもな……!?」
「本当に、大丈夫だから。……うん、もう治ったよ」
心配そうな顔をする戒斗に、アンジェはニッコリと微笑みかけて。すると彼女は立ち上がり、うーんと大きく伸びをする。
そんな風に伸びをする彼女の横顔からは、もうさっきまでの辛そうな色は消えていた。顔色も元通りに戻っているし、見ている限り別に体調が悪そうでもない。今までのあの深刻な様子が嘘だったみたいに……伸びをするアンジェの姿は、外から見ている分には健康そのものだった。
「さーてと、確かまだやることあったよね……」
そうしてアンジェは伸びをすると、そのまま何事も無かったかのように店の手伝いを再開していく。
「……アンジェ」
そんな彼女の背中を、戒斗は複雑そうな顔で眺める。
本人が大丈夫だというのなら、大丈夫なのだろうが……それでも心配は心配だ。一度、無理にでも病院に連れて行って検査を受けてもらうべきだろうか。きっと有紀ならいい医者を知っているはずだ。彼女に紹介してもらえばいい…………。
「ふんふんふーん……♪」
そんな風に複雑そうな顔で思考を巡らせる戒斗に背中を向けながら、アンジェはいつものように店の手伝いをこなしていく。
………………そうして彼に背を向けながら、アンジェは考えていた。
(さっきみたいな、あの耳鳴りみたいな甲高い感覚……本当に、何なんだろう)
今も微かに頭の中で鳴り続けている――――――この鐘の音のような感覚は、一体。
(第一章『深紅の欠片、目覚めの刻は足音もなく忍び寄る』了)
隅の方に蹲る彼女、頭を抱えたその背中は……どう見てもただごとではない。
それを見た瞬間、戒斗は血相を変えて彼女の傍に駆け寄っていった。それこそ比喩抜きにカウンターを飛び越えたぐらいの、それぐらいの勢いで戒斗はアンジェの傍に駆け寄り、彼女の肩に手を触れながら呼び掛ける。
「あはは、なんでもないよ……大丈夫」
するとアンジェは蹲ったままで戒斗の方に視線を向け、彼に対して苦笑い気味にそう言った。
だが……その顔色はどう見たって大丈夫ではない。顔はまさに顔面蒼白ってぐらいに青く、口振りこそ気丈に振る舞っているが……しかし、顔には隠しきれない辛さが滲み出ていた。
「大丈夫なわけあるか……!!」
そんな彼女の様子を見て、戒斗は彼女に負けず劣らずの真っ青な顔でそう言うが。しかしアンジェは「本当に、大丈夫だよ……」と薄い笑顔で言葉を返す。
「ここ最近、たまにこういうことがあるんだけど……でも、すぐに治るから」
「すぐに治るって、でもな……!?」
「本当に、大丈夫だから。……うん、もう治ったよ」
心配そうな顔をする戒斗に、アンジェはニッコリと微笑みかけて。すると彼女は立ち上がり、うーんと大きく伸びをする。
そんな風に伸びをする彼女の横顔からは、もうさっきまでの辛そうな色は消えていた。顔色も元通りに戻っているし、見ている限り別に体調が悪そうでもない。今までのあの深刻な様子が嘘だったみたいに……伸びをするアンジェの姿は、外から見ている分には健康そのものだった。
「さーてと、確かまだやることあったよね……」
そうしてアンジェは伸びをすると、そのまま何事も無かったかのように店の手伝いを再開していく。
「……アンジェ」
そんな彼女の背中を、戒斗は複雑そうな顔で眺める。
本人が大丈夫だというのなら、大丈夫なのだろうが……それでも心配は心配だ。一度、無理にでも病院に連れて行って検査を受けてもらうべきだろうか。きっと有紀ならいい医者を知っているはずだ。彼女に紹介してもらえばいい…………。
「ふんふんふーん……♪」
そんな風に複雑そうな顔で思考を巡らせる戒斗に背中を向けながら、アンジェはいつものように店の手伝いをこなしていく。
………………そうして彼に背を向けながら、アンジェは考えていた。
(さっきみたいな、あの耳鳴りみたいな甲高い感覚……本当に、何なんだろう)
今も微かに頭の中で鳴り続けている――――――この鐘の音のような感覚は、一体。
(第一章『深紅の欠片、目覚めの刻は足音もなく忍び寄る』了)
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