14 / 14
第十三章
ブルームーン
しおりを挟む
「いらっしゃい」
「蓮志さん、こんばんは」
「こっち座って」
星空は、蓮志に促されるようにカウンターの席に腰掛けた。
「何飲む?」
「じゃぁ蓮志さんの一番好きなカクテルってありますか?」
「わかった、作るね。楽しみにしてて」
いつものように繊細で丁寧な所作に見惚れてしまう。
「はい、お待たせ」
星空の目の前に運ばれてきたのは、澄んだ青に薄紫が混じったような綺麗なカクテルだった。
「これは?」
「ブルームーンだよ」
「綺麗な色ですね。それと美味しいです」
「良かった。ちなみに、星空くんはカクテル言葉って知ってる?」
「初めて聞きました」
「このカクテルの意味には、叶わぬ恋っていうのがあるけど、完全なる愛っていう意味もあるんだよ」
「そうなんですか、なんか俺と蓮志さんみたいですね」
「たしかに。星空くんに対する気持ちを込めたのかも。このカクテルの矛盾した言葉の中に儚さを感じて好きだなって思うんだよね。それを星空くんにも知って欲しかった」
「そうなんですね。俺もこのカクテルのこと知れて良かったし、好きなカクテルだなって思います」
すると、星空は不意に自分の腕がグラスに当たりそうになり少しずらすと、コースターの下から何かが見えるのに気付いた。
「……蓮志さん、これって?」
「ああ、それはスペアキーだよ、星空くん、俺と一緒に暮らさない?」
「俺、嬉しいです…蓮志さんのこと幸せにします…」
「おいおい、プロポーズかよ~!」
笑いながら奥の入り口から出てきたのは、洋平だった。
「部外者は入ってこないでください~」
蓮志が冗談を言うのが珍しくて星空は笑った。
「俺からも実は報告があるんだよね~」
「え、何?」
「実は、瑠夏ちゃんと付き合いました~。はい、拍手!」
「おめでとうございます~!」
「それは良かったけど、自ら拍手求めに行くのなんか嫌ですね~」
「おいおい、蓮志そんなこと言うなって~。本当は俺のこと好きなくせに~」
「洋平さんのポジティブさはまあ嫌いじゃないですけど笑」
「え、両思い?じゃぁ結婚!?」
「そんなわけないじゃないですか」
「あ~瑠夏ちゃんと結婚したいな~」
「話聞いてないな、この人」
「よし!今日はめでたいし、サービスするよ!気にせず飲んで~!」
「やった、ありがとうございます!」
「「乾杯」」
ここは沼に落ちるといわれているバー。______&bar
ここに来たのも運命だったのかもしれない。
あの時、バーの扉を開けてから世界が色づき始めた。
もうあの頃の自分はいない。
生きてる限り世界は変えられる。
好きな人となら、沼でもどんな闇でも落ちて良いと思える。
何があっても愛し続けるから。
「蓮志さん、こんばんは」
「こっち座って」
星空は、蓮志に促されるようにカウンターの席に腰掛けた。
「何飲む?」
「じゃぁ蓮志さんの一番好きなカクテルってありますか?」
「わかった、作るね。楽しみにしてて」
いつものように繊細で丁寧な所作に見惚れてしまう。
「はい、お待たせ」
星空の目の前に運ばれてきたのは、澄んだ青に薄紫が混じったような綺麗なカクテルだった。
「これは?」
「ブルームーンだよ」
「綺麗な色ですね。それと美味しいです」
「良かった。ちなみに、星空くんはカクテル言葉って知ってる?」
「初めて聞きました」
「このカクテルの意味には、叶わぬ恋っていうのがあるけど、完全なる愛っていう意味もあるんだよ」
「そうなんですか、なんか俺と蓮志さんみたいですね」
「たしかに。星空くんに対する気持ちを込めたのかも。このカクテルの矛盾した言葉の中に儚さを感じて好きだなって思うんだよね。それを星空くんにも知って欲しかった」
「そうなんですね。俺もこのカクテルのこと知れて良かったし、好きなカクテルだなって思います」
すると、星空は不意に自分の腕がグラスに当たりそうになり少しずらすと、コースターの下から何かが見えるのに気付いた。
「……蓮志さん、これって?」
「ああ、それはスペアキーだよ、星空くん、俺と一緒に暮らさない?」
「俺、嬉しいです…蓮志さんのこと幸せにします…」
「おいおい、プロポーズかよ~!」
笑いながら奥の入り口から出てきたのは、洋平だった。
「部外者は入ってこないでください~」
蓮志が冗談を言うのが珍しくて星空は笑った。
「俺からも実は報告があるんだよね~」
「え、何?」
「実は、瑠夏ちゃんと付き合いました~。はい、拍手!」
「おめでとうございます~!」
「それは良かったけど、自ら拍手求めに行くのなんか嫌ですね~」
「おいおい、蓮志そんなこと言うなって~。本当は俺のこと好きなくせに~」
「洋平さんのポジティブさはまあ嫌いじゃないですけど笑」
「え、両思い?じゃぁ結婚!?」
「そんなわけないじゃないですか」
「あ~瑠夏ちゃんと結婚したいな~」
「話聞いてないな、この人」
「よし!今日はめでたいし、サービスするよ!気にせず飲んで~!」
「やった、ありがとうございます!」
「「乾杯」」
ここは沼に落ちるといわれているバー。______&bar
ここに来たのも運命だったのかもしれない。
あの時、バーの扉を開けてから世界が色づき始めた。
もうあの頃の自分はいない。
生きてる限り世界は変えられる。
好きな人となら、沼でもどんな闇でも落ちて良いと思える。
何があっても愛し続けるから。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる