元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

文字の大きさ
8 / 14

第8話 異世界で咎められる事なく、久々に料理

しおりを挟む
「えっと、ウチのカマドは家の外――軒下にあるんだけど、構わないのかね?」
「はい、大丈夫です! 貸していただいて、本当にありがとうございます!」
「いや、気にしないでおくれ。お湯を沸かすくらいにしか使っていないからさ」

 リアムさんが探してくれた家でカマドを使わせてもらえる事になったんだけど……こんなに立派なのに、お湯を沸かすだけにしか使っていないなんて勿体ない。
 ……まぁそれはさておき、料理の準備をする為に、奥さんに声を掛ける。

「ちょっと食材を買いに行ってきます。すぐに戻りますので」
「ん? どんな材料が欲しいんだい? この村で採れるものなら、大抵のものはウチにあるよ」
「そうなんですね! では、あそこにあるお店で使っているのと同じ、緑色の豆を使いたいのですが」
「あぁ、ウォルトのところだね。あの家は……スカイ・ビーンズを育てていたね。ちょっと待ってな。納屋から取ってくるよ」
「ありがとうございます! えっと、もしも小麦粉があれば、お代を支払いますので、使わせていただければと」

 奥さんが小麦粉も調理器具も好きに使って良いと言って、探しに行ってくれたので、作るメニューは決まった。
 ちなみにあえて同じ食材を使うのは、一手間加えただけで味が格段に変わるという事を知ってもらいたい為だ。
 奥さんを待っている間に、水魔法で鍋に水を注ぎ、火魔法でカマドに火を点ける。
 底の深い鉄鍋でお湯を沸かしていると、奥さんが戻ってきた。

「スカイ・ビーンズと小麦を粉にしたものだよ。売る程あるから、気にせず使っておくれ」
「ありがとうございます」

 流石は農家さんと言うべきか、十キロくらいのお米が入っていそうな袋で豆が出てきた。
 こんなには使わないけど……でも、いろいろ作ってみようかな。
 そら豆みたいな親指大の豆をサヤから取り出し、まずは水で洗ったら、借りたナイフでつ一つ小さな切り込みを入れていく。

「わぁ……アリスは、細かい作業も丁寧にするんだねー」
「細かいっていっても、そんなに大した事はしていないよ?」
「そ、そうかなー?」

 いや、私も大豆やグリンピースみたいな小さい豆にはしないけど、この大きさだしね。

「アリスさん。お湯が沸きそうです」
「ありがとうございます」

 リアムさんに呼ばれ、鍋に塩代わりのアース・プラントを入れたら、さっきの豆を投入っ!
 三分くらい待って……もう良いかな。
 お湯を捨て、湯がいた豆を取り出したら、薄皮を取っていくんだけど、ここでさっきの切り込みが活きてくる。

「へぇ。さっきの切れ目から、簡単に薄皮が剥けるもんなんだねぇ」
「はい。そして、まずは一品目……スカイ・ビーンズの塩茹でです。よろしければ、どうぞ」
「ん? ……へぇ! 薄皮が無いだけで、随分と感じが変わるもんだ! それに、味が違うような……鍋に入れていた草の味かい?」
「えぇ。よく見ると、草がたくさん生えている場所に生えているので、よく洗って使ってください」

 奥さんが料理に興味を持ってくれたのか、それともカマドで何をするのかが気になるのか。
 奥さんが調理の様子を見ているので、是非とも覚えてもらえると、私も嬉しい。
 ただ豆を茹でただけだけど、ほんの少しの手間で味は変わるからね。

「俺も良いですか? ……旨いっ! さっきのと同じ豆とは到底思えませんね!」
「うん! 食べ易くて良いねー!」
「だよねー。次は少し違うのを作るからねー」

 リアムさんやタマちゃんも味をみてくれたので、お次は塩茹でした豆の残りを半分に分け、一方を水で溶いた小麦粉の中へ。
 スプーンですくって形を整え、お湯を捨てた鉄鍋で焼いていく。
 本当は油で揚げたかったんだけど、無いものねだりをしても仕方が無いので、焦げ付かないように気を付けて、両面焼いていく。
 焼き上がったらお皿に移し、細かく切ったアース・プラントを散らして……出来上がりっ!

「次は、小麦粉と一緒に焼いてみたの。特に料理名は無いんだけど、冷めない内にどうぞ」

 かき揚げにしたかったけど、キャベツの代わりに豆を使ったお好み焼きと言えば良いのだろうか。
 一つ一つを小さく、薄く作っているので、一口で食べられるけど……熱いので気を付けて。

「これは……凄いね! 小麦の粉をパン以外で食べたのは初めてだよ!」
「これですっ! このお腹に溜まる感じ……食事って感じがします! あの初めて作っていただいたサンドイッチを思い出しますね!」
「うん! これも美味しいっ! けど、リアムが言ったサンドイッチって!? そっちも気になるよー!」

 奥さんたちが美味しそうに食べてくれたので、最後の一品。
 半分残しておいた豆と、料理前にタマちゃんと採ってきた大葉みたいな葉っぱをみじん切りにしていく。
 これを水と混ぜれば良いんだけど、この奥さんならアレがあるかも!

「あの、牛乳かクリームってありますか?」
「ん? クリームっていうのは知らないけど、牛のミルクなら……ちょっと待ってておくれ。お嬢ちゃんの事だ。きっと何か美味しいものにしてくれるんだろ?」
「はい。任せてください」

 奥さんが家の中から牛乳を持って来てくれたので、潰した豆と葉を混ぜ合わせ、よーくかき混ぜる。

「出来ましたっ! 冷製スープですっ!」
「これは……爽やかな香りがするね。さっきの葉っぱだね?」
「はい。実は、あの葉っぱは薬草の一種で、お腹を治してくれたり、熱冷ましの効能もあるんですよ」
「えっ!? 普通、薬草って苦かったりして食べられるようなものではないのに……こんなに美味しく飲めるのかい!?」
「そうなんです! 医食同源っていう言葉がありまして、日々の食事から健康を……」
「ま、待っておくれ! これ……もう一度作ってくれないかい! どうしても食べさせてあげたい子供がいるんだっ!」

 元は、私が料理を作りたいっていうのと、同じ食材でも調理方法で味が大きく変わる……という事を示したかっただけなのに、奥さんが突然慌てだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

処理中です...