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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

挿話1 新聖女シャルロット

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「シャルロット様! シャルロット様! 起きて下さい! 朝のお祈りの時間です!」

 あぁぁぁっ! 何なの!? 今、何時だと思っているのよ!
 確かにソフィアは朝からお祈りをしていた。
 私も朝当番の時は早起きして、謎の儀式に付き合っていた。
 だけど、これ……本当に毎日するの!?
 ソフィアは本当に毎日していたの!?
 私が朝当番の時だけしていたんじゃないのっ!?

「シャルロット様っ!」
「あぁもぉっ! 起きるわよっ! 祈れば良いんでしょっ! 祈ればっ!」

……

 眠い。とにかく眠い。
 気合で朝のお祈りを終わらせたけど、朝食を済ませたら、とにかく眠たくなってきた。
 午前の治癒活動……実際、聖女である私は、微笑を浮かべながら、侍祭たちが怪我人に治癒魔法を使っているのを眺めているだけなんだけど、何もしていないからこそ、本当に眠い。
 何もかもを投げ出して眠りたいと半ば本気で思いながら、あくびを噛み殺していると、

「シャルロット様。冒険者が呪われた装備を手にしてしまい、手から離れないそうです。我々では対応出来ませんので、解呪魔法をお願い致します」

 突然とんでもない話が舞い込んできた。
 呪いのアイテムの解呪!? そんな事出来る訳ないじゃない!
 私は初級の治癒魔法しか使えないのよ!?
 こんなのどうしろっていうのよ!

「聖女様……お願いします。この装備の呪いを解いてください」
「え、えっと……どういう呪いに掛かっているのかしら」
「この悪魔の盾なんですけど、俺の意思に関係無く、俺の声そっくりで喋るんです。しかも、変な事ばっかり言うので、事情を知らない周囲の人と揉め事が起きっ放しなんです」

 冒険者が左手に持つ盾を見てみると、何やら顔みたいなデザインで、目や口がある。
 この口が喋るの!? ホント?

「おい、ウスノロ! やるなら、サッサとやれよ。ビビってんのか!?」
「ち、違いますからね! 今のは、この盾が勝手に喋っただけで、俺は何も言ってないですから!」

 私には、目の前の男性が喋っているようにしか見えなかったけど、一つは盾が喋っているらしい。

「……まぁいいでしょう。では……そうですね。その……解呪を……」
「よろしくお願いいたします……って、どうして突然小声になるのですか?」
「しゅ、集中しないといけないので、話し掛けないでください。……クリアランス!」

 私が発した言葉と共に、白い光が……出ない!
 くっ……やっぱり、聖女になったから、急に魔法が使える訳ではないか。

「あ、あの……今のは一体?」
「残念ながら、その呪いは普通の呪いよりも強力なようです。こちらも、それに合わせて強力な解呪の準備をしますので、二週間後にまた来てください」
「に、二週間!? その間、ずっとこの盾と一緒に過ごすんですか!?」
「仕方ありません。ですが、別に死ぬ訳ではないのですし、大丈夫ですよ」
「そ、そんなぁー」

 がっくりと肩を落として帰って行く男性から、「ふざけるな!」とか「インチキ聖女」とかって聞こえてくるけれど、あれは盾の発する言葉……よね?
 とりあえず、二週間で侍祭の誰かに、解呪の魔法を使えるようにさせなきゃ。
 そして、解呪の依頼は今後全てその子にやらせるのよっ!
 魔法が得意な侍祭は誰だろうかと、さり気なくチェックしながら午前の治癒活動が終わる。

「やっとお昼ね。少しだけ……少しだけ仮眠を……」

 昼食も取らずに、自分の部屋に戻ると、

「シャルロット様! バティスト王子様が来られました」
「はぁっ!? どうして!? 何の約束もしていないわよっ!?」
「とはいえ、既にお待ちですので、いらしてください」

 ベッドに入った直後に再び起こされる。
 正直、無視したい。
 だけど流石にそうもいかないので、大急ぎで身なりを整えて移動すると、

「やぁ、愛しのシャルロット。どうしても君に会いたくなってしまってね。公務を抜け出してきたよ」
「そ、それは光栄ですわ、バティスト様。しかし、公務を抜け出したりして大丈夫なのですか?」
「もちろん。信頼出来る部下に、上手くやっておくように言ってきたからね」

 それって、つまり仕事を押し付けてきたって事よね?
 大丈夫なの!?

「それより、見てくれたまえ。希少なオリハルコンを手に入れたから、それを使ってボタンにしてみたんだ。どうだい? 凄く良いだろう」
「そ、そうですわね。王子の素晴らしさに、拍車が掛かりますわ」

 え? そんなどうでも良い話をする為に、わざわざ私の時間を削りに来たの!?
 それからも、王子のどうでも良い話が延々続くけど、頑張って笑顔で頷く。
 どーでもいい! そんな話どうでも良いから、早く帰ってよ!

「……おっと、そろそろ戻らないとマズいな。じゃあ、また来るよ」
「はい。お待ちしておりますね、バティスト様」

 やっと帰った。
 王子の下らない話のせいで、貴重な休憩時間が減ってしまった。
 だけど、これも王族になって、何もせずに湯水の如く国のお金を使う為よ。
 その為に、何の取り柄もない王子に近付いて聖女になったんだから。
 それに、ソフィアが聖女として出来ていた事なのだから、私にだって出来るはずよっ!
 頑張れ私! 頑張れ私っ!
 とにかく、少しで良いから仮眠を……

「シャルロット様。お昼のお祈りの時間です」

 いやぁぁぁっ!
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