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その日、シルヴィンは王宮に泊まった。いつものように客間には案内されず、何故か王太子の部屋へと案内された。
「本日はここでお休みください。殿下からお風呂に入って待つようにとご指示がございました。
今からお風呂の準備をします。」
侍女はペコリとお辞儀をすると部屋から出ていった。

お茶を嗜みながらゆっくりとディアスの帰りを待つ。
風呂にも入り体はポカポカとして眠気を誘う。しかし、シルヴィンはディアスを祝うため待ち続けた。
本日の主役であるディアスが部屋に帰ってきたのは12時を回った頃だった。

「ディー、おかえり。お疲れ様。」
「シル、シル、シル…」
ディアスはシルヴィンを抱きしめてつぶやく。よほど疲れているようだ。
「今日は早く寝た方がいいね。」
シルヴィンはそう言ってディアスの腕から逃れようとする。

「待ってくれ。まだ誕生日プレゼントをもらってない。」
「本当だ。ディーは物じゃなくて、お願いを聞いてほしいって言ってたよね。」
「ああ。」
「お願いって何?」
シルヴィンはコテンと首を傾げる。
ディアスの綺麗な唇が意思を固く決めたようにキュッと結ばれ、そして開いた。

「シルが…、シルヴィンがほしい。シルのことを抱きたい。」

シルヴィンは明け透けなお願いに目を丸くし、扇情的なディアスの眼差しを見てクラクラとした。

「ディー、僕ディーのことが大好きだよ。ディーのお願いなら何でも叶えたい。
僕を抱いてほしい。」
「シル…。」

2人は深く口づけをした。
シルヴィンはディアスの熱い眼差しに絡められ、もう逃げられないことを悟った。
ディアスの大きな手がシルヴィンの腹を這った。



暖かい日差しに目を覚ます。シルヴィンは今が何時なのか見当もつかなかった。体のあちこちがギシギシと痛む。
身をよじり起きあがろうとするが、ディアスに拘束され動けない。
「シル…おはよう。」
ディアスが微笑んだ。今まで見た中で最も美しい笑みだった。

「今日は王城でゆっくりした方がいい。マリンバルト公爵家には連絡を入れてある。」
時計を見ると昼の12時を回っていた。ディアスに求められるまま応じていたらこんな時間になってしまっていた。

「こんな時間まで2人で寝室にこもっていたら噂されちゃうね。」
「俺はシルとならそれでもいい。」
「僕は恥ずかしいよ。」
少し恨みがましくディアスを見つめるとディアスはしょぼんとした。まるで飼い主に叱られている犬のようだ。

シルヴィンはディアスの頭にキスを落とした。
「ディー、大好きだよ。」
ディアスはシルヴィンをギュッと抱きしめた。


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