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プロローグ
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しおりを挟む魔王城。その最奥の玉座の前で、俺は静かに佇んでいる。
いや、佇んでいるというのはおかしいか。だって俺、立ちっぱなしだし……うん。もう、二年間も立ちっぱなしだ。
俺の前後左右には、高さ二メートル程の四つの紫色の水晶が立っている。これが俺の肉体を封じていて、そのせいで完全に身体を動かせなくなっているんだな、これが。
全く……確かに俺は、この不毛の地に跋扈する闇に属する連中を力尽くで束ね、魔王を名乗った。でも、人間の世界に侵攻する前に勇者を派遣して俺を封じるってどういうことだ?
俺、人間にはまだ何の害も与えてないのに。
確かに、この地の治世が落ち着いたら次は人間の世界を征服って考えはあった。けれども、それにしたって手を出す前に討伐に来るなんて、酷いと思うぞ。
まあ、勇者といっても、そんなに強くはなかったんだけど。
六人組だったけか。
勇者と戦士、それに聖職者と魔術師そんな四人と五、六歳くらいの男女の子供が二人。子供は顔が似てたから多分双子だと思う。
うん、何で子供が? って確かに思った。思ったけども、子供に何が出来るって軽く考えて無視してた。そんで、余裕で倒せる力量しかなかった勇者達の相手をノリノリでしてました。
それがいけなかったんだよな。まさか、害が無いと思ってた子供に、こんな力があったなんて想像もしていなかった。
俺が勇者達を圧倒していたら、聖職者の女が子供達に何か囁いた。そしたら子供達が両手を俺にかざしてきやがってね。
よく分かんないけど、不味いと思ったよ。二人の子供から不穏なスキルの気配がしたから。だから慌てて右手を前に出しながら一歩踏み出した。そしたら、紫の水晶が足元からモコモコと伸びてきて、こんな馬鹿みたいな格好で固まっちまった。
伸ばした右手、一歩踏み出した左足、慌てた表情。どう見ても間抜けな格好だ。どうせ固まるならもっとカッコいい格好にして欲しかった。やり直しを要求したい。
と、まあ、そんなこんなで俺は封印されて二年も経ってしまっている。
その間、俺の部下も何人か、ここの様子を見に来たことはあったんだがな。皆んな、俺の姿を見て鼻で笑って消えていきやがった。
俺って人望なかったんだな。
確かに、皆んなを力尽くで従わせた覚えはあるけど、一人くらい助けようとする奴がいてもいいんじゃないか?
と言っても、弱肉強食がモットーのこの不毛の地では、他人の力を当てにする奴は馬鹿を見るのが当たり前。わざわざ、俺に支配される為に助ける奴なんかいないことは、分かってはいるんだけど。
ということで、俺は部下達が助けてくれるんじゃないかという淡い期待はサッサと捨てて、封印から逃れる為にこの二年間、試行錯誤してた訳なんだが……
ついさっき、この二年間の努力が徒労だったことに気付きました。
いやー、この封印、魔法属性なら魔力が圧倒的に高い俺に破れない訳がなかったんだけど。コレ、スキルだもん。
魔法なら、掛かっている魔法に費やしている魔力以上の魔力を使用した魔法をぶつけて相殺なんてことが出来ないこともないんだけど、スキルって、その者の才覚のみでこの世界の理に干渉する力だから、物によっては力押しではどうにもならない。
試行錯誤した結果、俺が封じられているスキルの能力は、この前後左右に立つ紫水晶の中にある物の時間を止めるってものだって、今さっき判明した。
肉体の時間が止められているものだから、魔力を体の外で変換しないといけない破壊系の魔法を発動することは出来ないし、この強靭な肉体を使って物理的にこの紫水晶を壊そうなんてことは以ての外。
つまり、この結界って内側からは絶対壊れないんだ。
だが、世の中には完璧な物なんて存在しない。確かに、この封印は強力で内側からの破壊は不可能だが、外からなら壊せるはず……外からならね。
あー! もう! 協力者がいない時点で詰んでるじゃないか!
大体、なんで肉体の時間だけ止めて、意識は放ったらかしなんだ? 意識も止められていたら、何も知らずにこんな悔しい思いをしなくて済んだのに! こんな暗くて陰気な所で無駄に二年間、寂しく過ごしちゃったじゃないか!
いや、別に寂しかったわけじゃないんだからね。俺、魔王だし、一人でほっとかれてるからって寂しいわけないじゃん。
などと、一人で口説いていても事態が好転するわけもなく……
仕方がない。奥の手を使うしかないか。
奥の手ーー禁呪転生術。
この魔法なら、魂を新しい肉体に移すだけだから、肉体の時間が止められていても使える。しかも、魂のカケラをこの肉体に残しておけば、新しい肉体とこの肉体を精神で繋げたままに出来るはず。そうすれば、精神や魂に付随する力であるスキルや魔力も新しい肉体で使用出来る……よね、多分。
いやー、今まで誰もやったことのない魔法だからなぁ……確証は無いんだよな。でも、他にこの状況を打破出来る手段も無いし……
せっかく鍛え上げたこの肉体を手放すのは惜しいけど、新たな肉体でこの封印を外から破壊すれば、きっとこの肉体に戻れる!
うん、そう信じて、実行するしかないか。
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