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第1章 最弱勇者の試行錯誤編
第4話 異世界突入!……処方箋は大事です
しおりを挟む「え~と、それはスキルポイントを使い切ったって事?」
健一が恐る恐るといった感じで聞いてくる。俺は無言でゆっくりと頷いた。
「……スキル名は?……」
「……米印十個……」
「………………………まさか、シークレットスキル?」
「シークレットスキル?」
「うん。多分、発動条件を満たしたり、特殊な条件を満たすとシークレットが解けると思うけど……」
「という事は、今のままではスキルの効果を確認出来ないって事か?」
俺の言葉に深刻な顔で健一が頷く。
「不味いのはレベルアップが条件のタイプと戦闘が条件のタイプ。両方とも戦闘スキルを持たない博貴では、条件を満たすのは厳しいから詰んでしまうかもしれない……ごめん、僕がちゃんと確認しとけば……」
「いや、予備知識も無いのに相談しなかった俺が悪い」
まさか、 異世界に足を踏み入れる前に異世界生活が詰むかもしれないとは……
俺はその場で崩れ落ちた。
「ま、まぁ、あっちに行けば何か解決策があるかもしれないから、そう気を落とさないで……」
そう言いながら健一が俺の肩に手を置くが、はっきり言って今はその気遣いが心に虚しく響く。
「……取り敢えず健一は、他の皆が俺みたいならないように見ててくれ」
「……分かった」
健一は頷くと皆の方を向く。俺は少し離れ、意味も無く体育座りをしてそんな健一たちの光景を見詰めた。
ブルーなときに体育座りをすると、何か凄く悲しくなる。
俺達以外の四人は健一から俺の陥った状況を聴いたのだろう、同情的な視線を此方に向けてきた。ただ、井上会長だけは、無価値な物を見るような冷たい視線に感じたのは、俺の気のせいでは無いと思う。
結局、みんなは健一の意見に従い、バランスの良いパーティになる様にスキルを取得していった。又、能力値は全部を10づつ上げたようだ。
井上会長は【初級剣術】を軸として物理攻撃力や物理防御力を上昇させるスキルを。窪先輩は【初級手技】、【初級足技】を取得し格闘家タイプに。喜多村先輩は【初級短剣術】、【気配察知】、【罠発見】などを取得し、遊撃手タイプに。ヒメは【初級光術】に魔術上昇系スキルを取得し、回復役に。そして健一は【初級風術】、【鑑定】などを取得し、後衛魔術士タイプになったようだ。
〔皆様、キャラクターメイキングは終了した様ですね。では、異世界に転移した後の注意点をお教えします。冒頭にもお伝えしましたが、皆様には異世界レイムシアの風の国ファルテイムに転移してもらいます。正確には風の国の外れ、魔物の森の中央部に建てられたログハウスへの転移です〕
?? ログハウス? 何でそんなところに?
〔ログハウスには生活に必要な設備、食料、一般的な装備品そして、地下ダンジョンへの入り口などを準備しております。皆様には先ず、そのログハウスを拠点として一年間、戦闘訓練をしてもらいます〕
成る程、一年間の準備期間がある訳ね。そりゃあ、レベルゼロで『勇者です!』と力説しても説得力は無いか。だとすると、俺の今の状況を打破する期限も一年間という事か……
〔一年後、私が風の国の王都に勇者の降臨を伝えます。それで王都からの迎えが来るはずです。皆様はそれまでに勇者に相応しい強さを身に付けてください。因みに、ダンジョンは地下百層の構成になっており、今までの勇者は平均レベル120から130程上げております〕
「答えてくれないのを承知で聞くけど、地下百層のダンジョンって、最下層まで行くのにどれだけの日数がかかるの?」
〔地下ダンジョンについては、ログハウスの下り階段を降りていただくと、直ぐに魔法陣が描かれた広間へと出ます。この魔法陣はダンジョン十層ごとに設置された転移魔法陣と繋がっており、既に攻略した階層はここからショートカットする事が出来ます〕
……答えた?! いや、日数を答えた訳じゃないから、会話は成立してないか……偶々、健一の質問の答えに似た様な説明が来ただけだな。
一瞬、質問に答えたと思い驚いたが、会話が成立してないと思い当たり落ち着きを取り戻す。俺はこの注意事項を聞き逃す訳にはいかない。
なんせ、必要最低限のスキルに能力値オール1、HP5で異世界に挑まないといけないのだから……何が命取りになるか分かったものではない。
〔異世界ではHPが0になると死亡し、MPが0になると気絶します。HP、MPはステータスを開かなくても、視界の右上に表示されますので、HP、MPの管理は慎重に行って下さい〕
死亡ね……その辺の説明が無いって事は、死んだ後の救済は無いと考えるべきか。
〔又、HP、MPの回復方法としましては、休憩、回復魔法、ポーション、MPポーションの類いがあります。休憩とは、ダンジョン、フィールドなどで座るなり、仮眠を取るなりしますとHP、MPが時間と共に回復する行為の事で、回復魔法は、それぞれ覚えた時に効果をご確認下さい〕
……HP5でダメージを受けて回復する余地はあるのかな?
〔最後にポーション、MPポーションですが、これは転移したての勇者がよく勘違い為さるのですがポーション、MPポーションは薬です。一度に大量摂取したり、連続使用しますと中毒を起こし、行動不能や能力値低下などの状態異常を引き起こしますので御注意下さい〕
体力回復用の薬ね……大きな治療効果のある薬は、体力の無い人には毒になるケースもあるって聞いた事あるけど、HPが5しかない俺が飲んでも大丈夫なのかな?
……いやいや、さっきから考え方が後ろ向きになり始めてる。こんな考え改めないと、本当にあっちで死にかねない。
〔ポーション、MPポーションは陶器に入った状態で出現しますので、陶器一本が一回分の分量、一回飲んだら三十分以上時間を空けてご使用下さい。又、ポーションは身体に振りかけても効果が出ますが、その回復量は半減する上、中毒の条件は同じです〕
「なんかポーションの説明、生々しいよね」
井上会長がボソッと呟く。
「ゲーム慣れしてる人だと、高レベルでHPが高い時にMPや効果の高いポーションを節約する為に、ランクの低いポーション大量摂取でHPフル回復って良くやりますからね」
「それ現実でやったらお腹がタプタプにならない?」
「「「「………………………」」」」
健一のあるある話しにヒメが身も蓋もないツッコミを入れ、みんな押し黙ってしまった。
〔最後に、経験値は同じパーティ内であっても戦闘行為を行わなければ入りません。ダンジョン地下一層に出現する魔物はグリーンスライムのみですが、グリーンスライムは見掛けは液体の様ですが物理攻撃は普通に効きますので、ここで最低でもレベル3位まで上げる事をお勧めします。
ーーでは、これから異世界へと転移させていただきます。ご武運を!〕
再び周りが光に包まれるーー
光の眩しさに瞑ってしまった目をゆっくりと開ける。
成る程、ログハウスだな……
目を開けて飛び込んで来たのは、確かにログハウスの室内だった。壁、天井が丸太で組まれた八メートル×八メートル程の部屋で、部屋の中央には大きな一枚板のテーブルがあり、向かい合う様に三脚づつ椅子が備え付けられている。おそらくリビングとして使う部屋だろう。
この部屋には三つの扉があり、それぞれ外と厨房、廊下に繋がっていた。折角なので皆で建物内を確認していく事にする。
廊下に出ると廊下は結構長く、その左右に扉が並んでいる。扉を一つ一つ開けていくと、トイレ、風呂、洗面所、洗濯室などの水回りの他に、製作室、鍛冶場、物置、武器庫ととにかく広い。更には二階へ続く階段を見つけ上ってみると、二階には十畳程の部屋が六部屋あった。部屋を確認して見ると、机、ベッド、クローゼットが備え付けられており、ここが個室だと分かる。
そして、最後に一階廊下の突き当たりにある扉を開けてみる。その部屋は床が土になっていた。窓などがなく妙に薄暗い部屋で、その部屋の中央にはぽっかりと地下への階段が口を開けていた。
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