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第2章 最弱勇者卒業編
第13話 ナビゲーター……一人は寂しいのです
しおりを挟むログハウスに戻り、休憩がてら夕食にしたのだが、そこで問題が発生した。
調理した料理をリビングのテーブルに並べ、一人席に座る。会話などある筈も無くただ、食器にナイフやフォークが当たるカチャカチャという音だけがランプに照らされた薄暗いリビング内に響いていた。
ーー寂しい。何だこの悲しくなるような情景。
昨日の夜はスライムを初めて倒せて有頂天になってたから気付かなかったけど、今、すっごい寂しい状態なんじゃないか?
今までも健一達がダンジョン攻略中、一人での食事はあったのに、あの頃は生きるのに必死で気付かなかった……心にゆとりが出来て寂しさに気付くなんて……
わびしい夕食を済ませ、レベルアップ確認の為ステータスを開く。
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名前 桂木 博貴 Lv 4
人間種 人間
状態 正常
HP 105/105
MP 120/120
体力 21(+10)
筋力 24(+12)
知力 34(+20)
器用度 28(+16)
敏捷度 21(+10)
精神力 30(+16)
魔力 24(+12)
〈ノーマルスキル〉
初級炎術Lv10(1)
初級光術Lv10(1)
初級斧術Lv10(1)
料理Lv10(1)
恐怖耐性Lv10(2)
鑑定Lv10(1)
地図作製Lv10(5)
解体術Lv10(1)
ワールドクロックLv10(1)
〈オリジナルスキル〉
スキルポイントアップLv10(30)
SP 107
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ほほう、また能力値が約二倍になったな。これでゴブリンにも安全に対応出来るだろう。さてーー
能力値を確認し満足した後、取得可能スキル一覧を開く。
先ずは前回取れなかった【気配察知】(2)を取得して、ついでに【危険察知】(1)も取っておく。ーー因みに、【気配察知】は生き物の気配を察知するスキルで、【危険察知】は罠や自然災害など身の危険が近くで起こりそうな時に、前以て察知する事が出来るスキルらしい。
取る予定だったスキルを取り、後は何を取ろうかと一覧を物色していると、一覧の最後の方に見覚えの無いスキルがあった。
【ナビゲーター】? 前まで無かったよな、何か条件でも満たしたのか?
スキル内容を確認してみると、ナビゲートします。とだけ記してあった。
随分大雑把な説明だな、何をナビしてくれるんだろ? ダンジョンの攻略手順なら有り難いけど。
情報の重要性は理解してるけど、情報収集の手段が自分で検証するくらいしかないんだよな。今日みたいに下層の魔物の強さが分からなくて何度も死闘を繰り返すなんて事はしたく無いし、取得ポイント3だ、取ってみるか。
スキルポイントに余裕がある俺は、他の人はこんなサポート系スキルに手を出さないんだろうな、と思いつつ、【ナビゲーター】を取得する。するとーー
〔マスター、初めまして、私は、スキル、ナビゲーター、これから、宜しく、お願いします〕
えっ、喋った! いや、脳内会話だから正確には喋った訳では無いのだろうけど。
〔はい、私は、マスターと、念話が、可能、です〕
あっ、答えた。会話が可能なんだ……
(それじゃ君は何をしてくれるスキルなんだい?)
〔私は、マスターを、サポート、する為の、スキルです〕
(ああ、成る程……しかし、このイントネーションが滅茶苦茶で単語ごとに区切られる喋り方、なんとかならない?)
〔すみません、私の、処理速度、では、これが、限界です〕
(処理速度って……まあ、いいか……それじゃあ、ちょっと質問してもいいかな)
〔はい、私の、持ってる、データの、範疇、でしたら、お答えします〕
(じゃ、先ず何で今回【ナビゲーター】が一覧に現れたんだ?)
〔それは、私の、取得可能条件、スキルを、十個、取得する、を、満たした、からです〕
(ああ、そんな条件もあるのか。じゃあ次に、今持ってるスキルの上位スキルの出現条件は分かる?)
〔はい、【初級炎術】の、上位スキル、出現条件は、魔力が、150、以上、【初級光術】の、上位スキル、出現条件は、精神力が、150、以上、【初級斧術】の、上位スキル、出現条件は、筋力が、150、以上、【料理】の、上位スキル、出現条件は、器用度が、100、以上、【鑑定】の、上位スキル、出現条件は、知力が100、以上、【危険察知】の上位スキル、出現条件は、精神力が200、以上、【ナビゲーター】の上位スキル、出現条件は、【ナビゲーター】、【地図作製】、【ワールドクロック】、【森羅万象の理】、【千里眼】、【第六感】、の取得、です〕
(えっ、【ナビゲーター】の上位スキルもあるの?)
〔はい、最上位、サポート、スキル、【共に歩む者】、です〕
(ふーん、でも一覧に載ってないスキルもあるみたいだけど?)
〔はい、【森羅万象の理】は、【鑑定】の、最上位、スキル、【千里眼】は、【十里眼】の、最上位、スキル、【第六感】は、【危険察知】の、最上位、スキル、です〕
(ん、分かった。それじゃ最後に、さっきゴブリンと戦った時、レベルが二つ上がったんだけど、ゴブリンの経験値ってそんなに多いの?)
〔レベルが、二つ、上がった、という事は、マスターは、レベル、2で、ゴブリンと、戦った、という事、でしょうか〕
ああ、そうか。ゴブリンと戦った時はまだ【ナビゲーター】を取得して無かったから状況が分からないのか。
(ああ、俺がレベル2でゴブリンがレベル5だった)
〔……なんて、無茶を……、分かりました。私が、マスターの、スキルに、なった、からには、そんな、無茶を、しない、ように、しっかりと、サポート、します〕
スキルが何か決心なされた様だけど、質問には答えて無いよね……
(ねぇ、君の決心は分かったから、経験値について答えてくれるかな)
〔……失礼、しました、ゴブリンの、件、ですが、マスターと、ゴブリンの、レベル差が、大きかった、為、経験値に、プラス補正が、掛かった、のです〕
(経験値のプラス補正……という事は、その逆もあり得るのか?)
〔はい、目安、としては、レベル差が、二分の一、以上で、経験値が、半分、十分の一、以上で、得られる物は、殆ど無いと、思って、下さい〕
(へー、そうなんだ……!)
【ナビゲーター】との会話中、急に外が気になり、そちらの方に顔を向ける。視線の先には外に通じる扉があるのだが、その扉の十メートル程先が気になる。
〔マスター、スキル、【気配察知】に、反応が、あります。反応の、正確な、位置は、【地図作製】で、確認、出来ます〕
【ナビゲーター】が有意義な情報をくれる。【ナビゲーター】が思った以上に優秀な事にニンマリしながら、脳内地図を開く。
自分を表す赤い点から少し離れた所に、青い点がある。
(魔物か?)
〔いえ、魔物は、この、ログハウスには、近づけませんし、地図表示も、黄色に、なるので、違うと、思われます。地図表示、青は、その他の、生物です〕
(その他のって随分とザックリだな……小動物って事は?)
〔この、距離で、小動物は、【気配察知】に、反応、しません〕
ふむ……魔物はここに近付けないって事だから除外するとして、俺に危害を加える程の動物だったら、ログハウスに篭ればやり過ごせるだろう。問題は人間だった場合か、俺の様子を窺っているとしたら……俺にとって良い理由では無いだろうなあ。
(確認しといた方が良いんだろうな)
〔はい、放置、していても、状況は、好転、しない、でしょう〕
(だろうね)
【ナビゲーター】の確認を取り、俺はゆっくりと立ち上がった。
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