理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

文字の大きさ
17 / 172
第2章 最弱勇者卒業編

第15話 一緒に……パンツは大事です

しおりを挟む
   
   
   
「俺と一緒に来るか?」

   エルフの子がスープを食べ終わったのを確認して話し掛けたけど、首を横にかしげられた。
   頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見える。
   う~ん、誘い方が大雑把すぎるのか?   だったらーー

「俺と一緒に強くなるか?」

   今度は行動目標を混ぜて誘ってみる。
   ここでこの子と別れれば、この子はこの森で命を落とす事になるだろう。それではこの子を救った事にはならない。
   ならば、この先この子が生きていける力を、俺と共に育ててみても良いんじゃないかと思っての発言だが、結局はこの子の意志次第なんだよな。
   エルフの子は俺の提案を聞き、少し考える素ぶりを見せた後、

「ん!   強くなりたい」

   と、力強く頷いた。

「よし、じゃあ一緒に行くか?」

   言いながら手を差し出すと、エルフの子は手を掴んで立ち上がった。
   二人でログハウスのリビングに戻り、物珍しそうに辺りをキョロキョロとするエルフの子に声を掛けようとして、その場で固まってしまった。
   やっぱり名前が無いと呼びづらいな。おいとか、お前とかじゃなんか偉そうだし、エルフの子って呼ぶのもなぁ……
   名前を付けるという選択肢もあるが、一応その前に確認してみるか。

「ねぇ、さっき名前は無いって言ってたけど、お父さん、お母さんからは何て呼ばれてたの?」

   話し掛けるとエルフの子はキョロキョロとしていた顔をこちらに向けた。

「お父さんとお母さん、ティアって呼んでた」
「ティア……ティアか。じゃあ君の名前はこれからティアでどうかな?」

   そう提案するとエルフの子は『ん!』と、嬉しそうに頷いた。

「よし、じゃあティア、腹はまだ空いてるか?」

   そう聞くと、ティアは余りの激しさに首が取れるんじゃないかと心配になる程凄まじい勢いで、こくこくと、頷いた。

「分かった、分かったから!   今持って来くから、席に着いてまってて」

   ティアの反応にたじろぎながら厨房に入ると、スープを新たらしく装い、バスケットにこぶし大のパンを五、六個入れる。更にコップに牛乳を注いでリビングで大人しく座っていたティアの前に並べてやった。
   ティアは目の前に食事が並べられると、それに釘付けになっていたが、食事に手を付ける前に俺の方を向いたので、『どうぞ』と進める。すると、凄まじい勢いで食事を始めた。

(なあ、ナビさん)

   ティアの壮絶な食事風景を眺めながら、ナビさんに話し掛ける。

〔何でしょう?マスター〕
(ティアは女の子、だよね?)

   多分そうではないかとは思うのだが、一応、ナビさんに確認してみる。

〔はい。ティアは、エルフ種、エルフの、女性と、認識、出来ます〕
(だよね……)

   はあ、女の子か……だとすると、問題がもう一つ増えるな。
   そう、ティアとダンジョン攻略するにあたり、いくつかの問題点に気付いたのだが、ティアが女の子だとすると、俺には難易度の高い問題点がもう一つ増えることになる。健一達との約束があるから、攻略は迅速に進めたいので、明日もダンジョンに入りたいのだが……
   今夜中に解決出来るかな?
   問題の解決方法を思案してると、ティアが用意した食事を全部平らげていた。

「ティア、おかわりは?」
「お腹いっぱい」

   ティアが満足そうに答える。

「そうか、じゃあ、風呂に入ってきて」
「……お風呂?   ……入る」

   良かった。風呂ってなあに?   なんて聞かれたら、幼女に風呂の入り方を教えるイベントが発生するところだった。俺にそっちの属性は無いが、親戚でもない、今日会ったばかりの幼女と風呂なんてハードルが高すぎる。
   ティアを風呂に案内して、体を吹く布と、着替えに俺のTシャツを渡す。このTシャツはこの世界に来た時、自室に十枚程準備されていた物だ。因みに、ズボンや上着なども準備されていた。
   ティアが風呂に入った後、洗濯しようと彼女の服を見たが、それは最初の印象通り、服とは呼べない物になっていた。
   森を彷徨っているうちに木の枝などに引っ掛けてしまったのだろう。あちこち破れ、ティアが森でどれ程過酷な生活をしていたかを物語る物だった。
   そして、その服がティアの唯一の所持物である。
   郷のエルフどもは、ティアに何の装備も持たせず森に追放した事になる。何とも胸糞悪い話だ。
   ティアを風呂に案内した後、エルフの郷の住人に怒りを覚えながら、二階に上がる。
   かつて健一達の自室だった部屋を一通り確認するが、やはり全員着替えは持って行ったようだ。ちなみに、桃花さんの部屋だけ『女の子の部屋に入るなんて博貴君のエッチ』という書き置きが置いてあり、脱力感でエルフへの怒りがどっかに行ってしまった。
   しかし服が無いんじゃあ、一から作るしか無いという事か。まあ、どっちにしてもここにはティアに合う服など無いから、手直しは必要だったが。
   一階に降りながら、【裁縫】(1)をレベル10で取得し、製作室に入るとソーイングセットを出して布とゴムも準備した。
   先ずはティアが女の子と判明した時に出た問題点から片付けようと思うんだが……女の子の下着なんて、どうやって作ればいいんだ?
   【裁縫】スキルで得た知識で考えるが、女の子の下着の構造など解る筈も無く、良いアイデアなど出る訳が無い。仕方がないので、苦肉の策で一着仕上げてみたが……
   出来上がったのは、トランクスの足を出す部分にゴムを入れたーー俗に言う『カボチャパンツ』というやつだった。
   うむ……取り敢えず作ってみたけど『こんなパンツいやっ!』とか言われたら、精神に取り返しのつかないダメージを受けないだろうか?
   言い様の無い不安を感じながら、出来上がったパンツを両手で広げ眺めていると、『ひろにぃどこ~』と言う声が廊下から聞こえてきた。どうやらティアが風呂から上がったみたいだが、『ひろにぃ』って俺の事か?
   製作室のドアを開け廊下に顔を出すと、丁度リビングから廊下に出てきたティアが俺を見つけて駆け寄って来る。そして俺の側まで来ると、俺を指差し、『ひろにぃいた』と謎の指差し確認をした。
   う~ん、子供のやる事はよく分からんが可愛いからいっか。
   風呂から出たティアは、俺のTシャツをワンピースの様に着て、ボサボサだった金髪はサラサラなストレートヘヤーになっていた。しかし、そのせいで元々目を隠していた前髪は更に顔を侵食して、鼻の頭辺りまで達している。
   ああ、髪も何とかしないと。まぁ、髪に関しては人の事は言えないけど。
   この一年で俺の髪も大分伸びていた。前髪は邪魔にならない程度に適当に切っていたが、後ろ髪は肩甲骨の下辺りまで伸びていて、それを首の辺りで縛って纏めている。
   取り敢えず俺の髪はいいけど、ティアのは何とかしないとな。それとパンツか……
   俺は変な覚悟を決めながら、ティアを製作室に招き入れる。

「ティア、これ履くか?」

   言いながらティアに恐る恐るカボチャパンツを手渡してみたが、ティアはカボチャパンツを広げて小首を傾げた。

「知らない?   パンツ。こうやって履くの」

   言いながらパンツを履くジェスチャーをすると、ティアは俺の真似をしてパンツを履いた。

「どうだ?   履き心地は」
「ん……大丈夫」

   何が大丈夫なのか分からないが、問題無いみたいだからそれ以上の追求はしない。という事で次は髪だな。
  パンツの不安を解消し、安堵しながらティアを椅子に座らせ【理容】(1)をレベル10で取得する。鋏は専用の物では無いが、持ってみると問題は無さそうだ。
   前髪を目の上辺りで切り揃えながら、ティアに話し掛ける。

「ところでティア。ひろにぃって何だ?」
「ヒロキでお兄ちゃん……ひろにぃ」

   当たり前だと言わんばかりにドヤ顔で答える。
   まぁ、懐かれたってことだよね。よそよそしくされたり、警戒されてる訳じゃ無いんだから良しとしよう。

「そうか、まぁ呼び名はそれでいいよ」
「ん!」

   ティアは満足そうに満面の笑みを浮かべた。

   
しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...