理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第2章 最弱勇者卒業編

第19話 第2層攻略……ティアさん、何するんですか?

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「ティア、攻撃は出来ないか?」
「ダメ」

   ダンジョンの暗闇に紛れ見えない敵を見据えながらティアに聞いてみたが、同じく闇をジッと見ているティアに即答された。

「えっ、なんで?」
「あっちのが長い!」
「???」

(ナビさん?)

   ティアの言葉の意味がいまいち分からず、ナビさんに助けを求める。

〔ティアの、【初級弓術】より、ゴブリン、アーチャーの、【初級弓術】の、レベルが、高く、射程で、負けて、いると、思われます〕
(そういう事か。じゃあ、俺があの矢を受けたらどの位ダメージを受ける?)
〔5、前後かと〕
(了解)

   5前後のダメージなら問題無し!   ここで防御を固めても一方的に攻撃を受けるだけだ。

「ティア。俺の後に付いて来て」
「ん!」

   ティアに一言告げて、皮の籠手を付けた腕で顔と胸を庇いながら前方に走り出す。
   シュッ……カッ!
   走り出すとほぼ同時に顔を庇った右腕の籠手に矢が刺さるが、防具の上だったせいかダメージは殆ど無い。
   少し走ると、後ろでティアが止まる気配がした。恐らくティアの射程に入ったのだろう。そしてーー
   シュッ……ドッ!

「ギャッ!」

   スライムとは違う、矢が当たる重い音と共に濁った声の悲鳴が聞こえてくた。

   ティア、ナイス!
   心の中でティアに賞賛を送り、一気に間合いを詰めるーー
   ゴブリンアーチャーは間合いを詰めるとザコだった。俺とティアでボコボコにしてあっさり倒す。

「ん……玉出ない?」

   ゴブリンの死体を観察してたティアが少し不満そうだ。戦利品が欲しいのかな?

「ああ、ちょと待ってて【解体術】」

【解体術】を使用してゴブリンの死体をチリにする。後にはゴブリンの核と爪が残った。

(今度は爪か。昨日は牙だったよな……ナビさん、この爪とか牙って何に使えるの?)
〔魔物の、角や、爪、牙、などは、薬、錬金、などの、材料や、武器、防具の、強化材に、なりますが、ゴブリンの、と、なりますと、殆ど、ゴミです〕
(はあ?   ゴミ?)
〔はい。薬の、材料には、なりませんし、強化材に、使っても、効果は、微々たる、ものです。アイテム、としての、ランクは、屑級、ですから〕
(アイテムのランク?)
〔はい。アイテムには、ランクが、あります。【鑑定】の、上級スキル、【鑑定の極意】なら、確認、出来る、のですが、下から、屑級、粗悪級、通常級、稀少級、伝説級、古代級、神級と、あり、更に、それぞれの、級が、-、無印、+と、ランク分け、されて、います。ゴブリンの、爪や、牙は、屑級と、なっています〕
(それで、殆どゴミってわけね)

「ティア、核以外はゴミだから拾わなくていいよ」
「ん……弓は?」
「弓かぁ」

   ティアに言われ弓を見てみると、以外と綺麗な弓だった。身長がティアと近いゴブリンが使っていただけに、サイズもティア用に丁度いい。

「ふむ……【鑑定】」

   一応、【鑑定】を掛けてみる。

   バルティの弓   必要筋力5   攻撃力12

   あれ?   結構いい弓だな。昨日のゴブリンソルジャーが持ってた錆びたショートソードは何だったんだ?   でも、バルティってなんだろ?   分からない事はナビさんに聞くに限る。

(ナビさん。バルティって何?)
〔バルティとは、バルティの木、の事です。バルティの木は、しなやかで、加工された、木材は、弓に、良く、使われます〕
(ふーん、つまり一般的な弓って事ね……ってあれ、でも武器庫に置いてある木製の弓は『木の』って名称しか付いてなかったよ)
〔はい。武器庫に、置いてある、物は、木製、皮製、鉄製の、最低ランクの、材質の、物しか、置いて、いません〕
(つまり、本当の初期装備しか置いてないのか)

「ティア。この弓はティアが使ってもいいよ」
「ん♪」

   ティアは上機嫌で木の短弓をマジックバッグに仕舞い、バルティの弓を持って自慢する様に高らかに掲げた。
   うん。喜んでくれた様で良かったね……左手は腰に当てて、右手で弓を掲げる様は偉そうだけど。
   エルフはこんな見方によっては、高慢に見える様な仕草をいちいちするのか?   と疑問に思いながら、ティアと共に二層の探索を続ける。
   二層には、ゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、ゴブリンランサー、ゴブリンタンカーなどが現れたが、それぞれが単独で出てくるうえ、ティアのサーチアンドデストロイ(殺してはいないけど、見つけ次第速攻で弓を射る)と、俺の魔法と斧でサクサクと倒して行く。
   後方支援が一人入っただけで、こんなに戦闘が楽になるとは思わなかった。ティアがある程度HPを削ってくれるので、危険な近接戦闘を最小限に出来るため、こちらのHPの減りが殆ど無い。
   全く、ティア様様である。
   そしてーー二層の【地図作製】が半分程埋まり、使えそうなドロップアイテムでマジックバッグの空きも殆ど無くなった頃、宝箱を発見。
   一層で見つけたのと同じ、如何にも!   というフォルムの宝箱である。
   【危険察知】が反応しないので罠は無いようだ。俺が近づき蓋を開けようとすると、ティアが服の肘の辺りをクイ、クイと引っ張った。

「どうしたティア」

   振り返ると、ティアは左手で俺の肘の辺りの服を摘み、右手で自分のお腹をさすりながら、

「お腹空いた」

   と、か弱い声で呟いた。
   時間を確認すると、十一時五十六分。ティアの腹時計は高性能のようだ。

「よし、じゃあ、この宝箱を開けたら、上に戻ってお昼にしよう」
「ん、じゃ早く」

   急かすティアに促され宝箱を開けると、両刃の短剣が一本入っていた。

   鋼の短剣   必要筋力   7   攻撃力   15

   おっ、結構いい武器。【初級短剣術】持ってないから使えないけど。
   鋼の短剣を回収し、急かすティアと共にログハウスに戻った。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   昼食後、再び第二層に戻り【地図作製】埋めを再開する。
   第二層の奥の方には新たにゴブリンソーサラーとゴブリンヒーラーが出現する様になった。しかし、ゴブリンの魔力が低いのか魔法によるダメージはそれ程でもなく、更に他のゴブリンより防御力が低いので思いの外あっさりと倒せた。
   ただゴブリンソーサラーが初めて現れた時ーー

「ん、待つ」

   ゴブリンソーサラーを前にして、ティアが俺の服の裾を背後から引っ張った。

「ギャギギギ!」

   ゴブリンソーサラーが何かを叫び、それと同時に俺の正面、三メートル程離れた辺りの地面が不自然に隆起する。そこから現れた長さ二十センチ程の円錐形の土の針がこっちに向かって飛んできた。
   ガッ!

「痛!   ティア何するの?   そんなに引っ張られたら避けられないよ」
「ごめん。でも、もうちょっと待つ」
「待つって何を……」

   ガッ!

「痛!   だからティア、ダメージは大した事ないけど痛いんだって」
「ん、もう少し」
「だから、何を……」

   ガッ!

「痛い。ティアだから何を……」
「ん!   もう、大丈夫」

   そう言ってティアはやっと服の裾を離してくれた。

   ーーという事があった。あれにどの様な意味があったのか未だに分からないが、取り敢えずそれ以外はスムーズに攻略が進む。そして、第二層の地図が埋まり第三層へと続く階段の前へと辿り着いた。
   ーー俺、ティアになんか恨みでもかってるんだろうか?
   


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