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第2章 最弱勇者卒業編
第18話 ティアの成長速度……俺の影が薄いです
しおりを挟む少し湿っぽい空気の中、薄暗いダンジョン第一層を歩いていく。
前方に【気配察知】の反応が現れる。
あっ、スライム。
シュッ……サクッ!
俺がスライムと認識した瞬間、背後から矢が飛んでいき恐らくスライムに当たったのだろう。恐らくというのは、【気配察知】の反応でスライムがいる事は分かるのだが、ダンジョンの暗がりの所為で、まだその姿を視認してないからだ。
シュッ……サクッ!
また背後から矢が飛んでいき、何かに刺さる音がする。
「ひろにぃ、とどめ」
「……了解」
背後からのティアの言葉に答え、腰に挿した手斧を抜き歩き始める。十数メートル程進むと矢が二本刺さったスライムを視認し、一気に間合いを詰めて手斧の一撃でとどめを刺す。
ティアの加入で、戦闘が流れ作業になっていた。
倒したスライムはこれで五匹目。一匹目が現れた時は俺が視認する前にティアが弓矢三発で倒してしまい、『これじゃ、戦闘行為をしてない俺に経験値が入らない』という俺の苦言を聞いて、それ以降は二発で止めてくれている。
「ティア、このペースで矢は足りる?」
「ん、まだいっぱい」
ティアは腰のウエストバックをポンポンと叩きながら答えた。
ティアのマジックバッグは、十個の最大容量数の内、五個分を矢が二十本入った矢筒で埋めている。つまり、元々背負っていた矢筒を含め百二十本の矢を準備して来たのだが……今日の本番である二層目に入る前に、既に約十分の一の矢を消費していた。
まぁ、レイピアによる接近戦を止めてるのは俺だし、仕方ないか……
(しかし、ティアは魔物に対する反応が早いな)
嬉しそうにホクホクとスライムのドロップアイテムの核を拾うティアを見ながら、ナビさんに問い掛ける。
〔エルフ種は、反射神経や、動体視力、瞬発力など、能力値に、数値化、されない、部分で、人間種より、はるかに、優秀です。しかも、ティアは、【十里眼】、【暗視】を、持って、いますので、マスターより、早く、魔物を、視認、出来ます〕
(ふーん、成る程ね。俺も取ろうかな【十里眼】と【暗視】)
〔いずれは、取って、いただきますが、私は、先ず、マスターの、戦闘、スタイルの、改善を、望みます〕
(えっ、戦闘スタイル? ……それってこれのこと?)
そう念話しながら腰に下げた手斧をポンポンと叩く。
〔はい。斧術は、攻撃力は、高い、ですが、予備動作が、大きく、前衛、一人の、パーティには、向きません。前衛が、複数、居れば、連携で、当てる、事も、難しく、ないですが、一人、の場合、レベルの、高い、魔物が、相手では、当てるのは、難しいです〕
(ああ、そうか。今の内は良いけど、先を考えると武器を変えた方がいいのか)
「ひろにぃ、行く!」
ティアの元気な催促でナビさんとの会話が中断される。
「ああ、分かった」
俺が歩き始めるとティアが横に付いてテトテトと歩き始めた。そのベストのポケットは回収したスライムの核五個が入っている。
数が少ない内はいいけど、その内ポケットがパンパンになりそうだ。
でも核一つでマジックバッグのひと枠を埋める訳にはいかないしなぁ。スライムの核は倉庫にも健一達が置いてった物も含めていっぱいあるからいらないんだけど、ティアは置いて行くのが勿体無いらしい。
ティアのポケットの心配をしていると、ナビさんから念話が入った。
〔マスター、ティアは、何故、核を、マジック、バッグに、収納、しないの、ですか?〕
(えっ、だってバッグは十個しか入らないんだよ。核を入れてったら、あっという間に一杯になっちゃうだろ)
〔……マスター、核や、ポーションと、いった、小さい、アイテムは、袋に、一纏めに、しておけば、マジック、バッグは、袋を、一つの、アイテムとして、認識、します〕
少し呆れ気味にナビさんが答える。
えっ、何その裏技。
(ナビさん、そんな便利な方法があるなら準備中に教えてよ)
〔すいません。知っている、ものだと、思って、いました〕
ん! スライムだ。
シュッ……サクッ!
ナビさんとの念話中、【気配察知】が反応して下り階段の前にスライムの反応。そしてティアの超速の先制攻撃。
シュッ……サクッ!
そんな事を思ってるうちに二発目。
「ん!」
そして俺に攻撃を促すティア。
手斧を手に持ち、スライムに近寄りとどめを刺すと、ティアがホクホクと核を回収する。そして……
「ん! レベル上がった」
ボソッと呟いた。
「なんだティア、レベルが4になったのか?」
「ん~ん」
レベルが上がったというからそう聞いたら、ティアはブンブンと首を横に降る。
「弓が2」
「弓が2? ……って、【初級弓術】がレベル2になったのか?」
「ん!」
ティアは嬉しそうに頷く。
「……ティア、今まで弓を使った事は?」
「今日が初めて」
言いながらティアがドヤッ! と胸を張るので、取り敢えず頭を撫で褒めてやる。
その後、二層への階段を降りながらナビさんに念話する。
(ティアのスキルの成長、早くない?)
〔はい、異常、ですね。才能、ある者が、【天才】の、スキルを、持っていた、としても、【初級弓術】を、レベル10に、するのに、三カ月から、四カ月。【神才】が、その上位スキル、だったと、しても、たった、十三回、弓を、射った、だけで、レベルが、上がるなど、あり得ません〕
(だよねえ、何か理由は考えられる?)
〔……一つだけ、可能性の、話に、なりますが〕
(うん。言ってみて)
〔マスターの、【スキルポイントアップ】です〕
(はぁ? あれはスキルポイントを得られる勇者しか恩恵がないだろ)
〔はい。私も、そう、思って、いましたが、もし、スキル、ポイントを、得られない、者にも、恩恵が、あると、したら……それは、スキルの、レベル、アップ、促進と、なるのでは、ないで、しょうか〕
(って事は【神才】と【スキルポイントアップ】のパーティ恩恵が相乗効果を発揮して、ティアはスキルのレベルアップが異様に早くなるって事か?)
〔はい。それに、レベル、アップ、だけでなく、スキルの、取得も、早まると、考え、られます〕
(それはまた、とんでもない成長をしそうだな)
ティアの未来に期待しながら、第二層に下り着く。
ティアの様子を見ると、興味深そうに辺りをキョロキョロと窺っていた。
心情的にはティアには戦わなくてもいい生活をしてもらいたいと思っている。しかし、この世界は弱者には余りにも理不尽な事を俺は嫌って程知っているので、強くなってもらわないと安心出来ないのもまた事実。
心の中に産まれたこの矛盾に思わず苦笑いを浮かべると、
「ひろにぃ! 危ない!」
ティアが珍しく大きな声を上げる。と、同時にーー
ヒュン!
前方から空気を切り裂いて、何かが俺の顔の側を通り過ぎて行った。
「!! 鑑定!」
咄嗟に臨戦態勢を取り、前方に【鑑定】を掛ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前 ゴブリンアーチャー Lv 5
魔物種 ゴブリン
状態 正常
HP 60/60
MP 30/30
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ゴブリンってソルジャーだけじゃないんだ……
昨日、死闘を繰り広げた場所だというのに気を抜いていた自分を反省し、気を引き締めてまだ視認出来ない敵を見据えた。
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