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第2章 最弱勇者卒業編
第25話 ナビさんの覚悟……取得する事が最良なんですか?
しおりを挟む俺が正面からミノタウルスの気を引きつつ撹乱し、その隙にティアが背後から弓を射る。
ミノタウルスの意識がティアの方に行きそうになったら、魔法や格闘術を駆使して俺への警戒心を引き戻した。
槍はまだミノタウルスの腹に刺さったまま。結果的に超接近戦になってしまうが、ティアの絶妙な援護がミノタウルスは大振りの攻撃を封じていた。
今もまた、大きく振り上げたミノタウルスの腕に、数本の矢が刺さる。
振り上げた腕を下ろしながらミノタウルスが背後を振り返ろうとするが、すかさず【中級火魔法】フレイムランスを放ちミノタウルスの視線をこちらに戻す。
そうしてミノタウルスのHPを程よく削った事を確認し、俺はティアへと視線を向けた。
「ティア! 合わせろ!」
「んっ!」
ティアと息を合わせる確認を取り、ミノタウロスの腹に突き刺さった槍の石突きを思いっきり蹴り押した。
槍がミノタウロスの身体を貫通する感触が足に伝わる。それと同時に、ティアが背後からミノタウロスの首筋にレイピアを突き入れた。
「ブモォォォォォォォォ………………」
ミノタウロスが断末魔の叫びを上げた後、地響きを立てて崩れ落ちた。
「やっとくたばったか……」
ミノタウロスのHPがきっかり0なのを確認し、その場に腰を下ろす。
〔第三十層フロアボスの討伐を確認しました。第三十層のボス討伐ボーナスーースキルポイントを15獲得しましたーー牛鬼の戦斧を獲得しましたーー第三十層の魔方陣を解放しまします〕
「ひろにぃ、肉♪」
ボス討伐の報酬内容を聞いていると、ティアが自分の上半身が隠れる程の巨大な肉塊を抱えて近寄ってくる。
早くもミノタウロスに【解体術】を使ったらしい。
「ティア、それは今日の夕飯にするからちゃんと仕舞っといて」
「ん♪」
夕飯で食べられると聞き、ティアは上機嫌に肉をマジックバックに仕舞う。
そんなティアの様子を微笑ましく思いながら、ゆっくりと立ち上がった。
「んっ! 早く帰る」
立ち上がった俺を見て、ティアが急かす。
早く肉が食べたいのは分かるが、夕飯にはまだ早いんじゃないかな。
そう思いながら時間を確認すると十七時二十分。ここの部屋に入ったのが十五時頃だから二時間強戦っていた事になる。
約二時間の全力運動。この世界に来た頃は勿論、元の世界でも出来なかった運動量だ。
確実に強くなっている自分に高揚感と充実感が沸き起こるが直ぐに、これは危険な兆候だと自分に言い聞かせた。
危ない危ない、力を得て有頂天なんて凡人の俺らしくない……いや、凡人だからこそ有頂天になるのか? まっ、どちらにしろ有頂天になったら、その末路は力を過信して死ぬか、性格が歪むかのどちらかだ。どっちにしても良い事じゃないな。
頭に浮かんだ反面教師井上の姿に、初めて有り難みを感じた。
⇒⇒⇒⇒⇒
ティアとの焼肉パーティを終え、ティアは焼肉の余韻に浸りながら上機嫌で自室に戻った。
俺は笑顔でティアを見送った後、リビングで一人真顔になりナビさんに呼び掛ける。
(ナビさん……)
〔……はい、マスター。では、【共に歩む者】の、取得を、始めましょう〕
(いや、その前に確認したい事がある)
〔……何でしょうか?〕
相変わらず、ナビさんの歯切れが悪い。俺の予感は悪い方向に膨らんでいく。
(ナビさん、【共に歩む者】を取得した場合……ナビさんはどうなる?)
〔……それを、聞いて、マスターは、どうする、おつもり、ですか? もし、私が、消えると、答えたら、取得を、諦め、ますか〕
消えるという単語を聞いて、鼓動が激しくなる。
そう、予想はしてたんだ……例えば、魔術系スキルや武術系スキル。これらは中級を取得すると初級は消える。厳密に言えば初級の魔法やアーツは使えるのだから吸収されたと言えるかも知れないが、それでも同じスキルとは言えない。
【鑑定】もそうだ。【鑑定】、【鑑定の極意】、【森羅万象の理】とバージョンアップしていき、その都度データ量が増えていったが、【鑑定】と【森羅万象の理】はスキルとしては勿論として、ランクすら違う。
これらのスキルは意志が無いから気にならないが、意志の疎通が可能なナビさんは……
(ナビさん、【共に歩む者】は本当に必要なスキルなのか?)
〔マスターなら、そういう、結論を、出す、可能性が、あると、思って、いました。だから、お気付きに、なる前に、取得して、頂きたかった……答えは、イエス、です〕
ナビさんの返答は、予測は通り。
スキルは上位版の方が高性能なのは分かっている。分かってはいるけど……
〔ノーマル、スキルの、私では、その、情報量の、観点で、序盤しか、サポート、出来ません。マスターの、レベルが、上がれば、上がる程、私は、役立たずに、なって、いくのです〕
(そんな、役立たずだなんて!)
〔マスター、どうか、御理解、下さい!〕
反論しようとする俺を、ナビさんが強めの口調で制する。
〔マスターを、サポート、出来ないと、いう事は、【ナビゲーター】、として、生まれた、私に、とって、苦痛、でしか、ないのです。【共に歩む者】の、取得を、第三十層、ボス戦の、後に、してもらったのは、私の、最後の、ご奉仕の、場を、頂きたかった、からです。どうか、最後まで、マスターを、サポート、しきった、という、誇りを、私に、待たせて、頂け、ませんか〕
ナビさんは相変わらずイントネーションがおかしく、単語ごとに区切られた喋り方だが、その言葉からは決意と覚悟が窺え、心が締め付けられた。
(ナビさん……ナビさんは本当に消えてしまうのか?)
〔……分かりません。【共に歩む者】を、取得した、という、前例が、無く、私の、データベースでは、調べようが、無いのです〕
(そうか……じゃあ、まだナビさんが消えない可能性もあるんだな)
〔ゼロ、では無いと、お答え、出来ます〕
(じゃあ、さよならは言わないよ)
〔はい。【共に歩む者】は、マスターの、新たな、力と、なるのです。笑顔で、取得、して、下さい〕
(ああ、分かった。じゃあ、またな……ナビさん)
〔はい。また、出会える、事を、願って、います。マスター。〕
ーー俺は【共に歩む者】を取得した。
ーーーーーーーーーーーーーー
この手の話は苦手です。
くさいセリフは避けよう避けようとしましたが、幾つか入ってしまいました。
そして、今回少し短かったです。すいません。
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