27 / 172
第2章 最弱勇者卒業編
第24話 第30層ボス戦……今夜は焼肉かなぁ
しおりを挟む第二十層に転移して二十八層まで最短ルートで通り抜け、二十八層の安全地帯でお弁当の昼食を済ませた後にここ、三十層のボス部屋の前に辿り着いた。
【地図作成】で最短ルートを通り【隠密】で余計な戦闘を避けた結果、所要時間は約六時間。スキルは本当に有り難い。
「ティア、準備はいいか?」
「んっ! 問題無い」
ティアの気合の入った返答を聞き、頭を軽く撫でてからゆっくりと扉を開いた。
ボスの部屋は今までのそれと変わらない作りだった。
部屋は直径三十メートル程の円形の吹き抜けで、床は大理石の様な磨かれた石が敷き詰められている。天井は天然の岩肌で床から十メートル位の高さがあった。
そして部屋の中央にはこの部屋の主人が、巨大な斧を持ってこちらを見据えている。
身長は三メートル程だろうか、筋骨隆々の体躯で凛々しい雄牛の頭を持っていた。
マッチョな二足歩行の牛。それが俺の印象だったが、ティアはボソッと『食べられる?』と呟いて、俺の緊張感を見事に削いでくれた。
まっ、気を取り直して能力を確認しとくか……
ティアに削られた緊張感を取り戻しながら、【森羅万象の理】を使用する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前 ミノタウロス Lv 45
魔物種 獣人
状態 正常
HP 2350/2350
MP 500/500
体力 470
筋力 500
知力 55
器用度 123
敏捷度 350
精神力 226
魔力 100
〈ノーマルスキル〉
中級斧術Lv10
剛力Lv5
剛体Lv3
威圧Lv3
斬撃力上昇Lv6
炎耐性Lv8
地耐性Lv6
HP自然回復(小)Lv5
弱点 水属性 風属性
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「うっわ……体力と筋力が異様に高い上に物理攻撃に直接プラス補正を掛ける【剛力】と【斬撃力上昇】を持ってる!」
あまりの耐久性と物理攻撃の特化ぶりに、思わず呻いてしまった。
〔素で、攻撃を、受けると、推定、400、前後の、ダメージが、予想、されます〕
「はぁ~、勘弁してよ……」
ナビさんのダメージ予想に嫌気を差しながらも、攻略法を模索する。
「ティア、ウォーターエンチャントを掛けて射程ギリギリから弓で攻撃して。後、ヒールの援護をお願い」
「ん、了解」
ティアは俺の指示を受けて直ぐ行動に移す。
ウォーターエンチャントは【初級水術】の魔法で、武器に水属性を付属する効果がある。直接の攻撃力が上がる訳では無いが、弱点である以上ダメージは上がる筈だ。
俺は自身に【中級光術】プロテクトを掛け、防御力を底上げしてからミノタウロスに向かって歩き始めた。
シュッ……ドッ!
俺がミノタウルスの攻撃範囲に入る直前に、ティアからの弓の攻撃が撃ち込まれる。
相変わらず良いタイミングだが、ミノタウロスのダメージは95。
あまりダメージが無い事に顔をしかめた。
ミノタウロスの持つ【HP自然回復(小)】は、十秒毎に休憩時は五パーセント、戦闘時、移動中でも二パーセントHPを回復させるというスキルだ。ミノタウロスのHPは2350。戦いながらでも十秒でHPを47回復させる。
「ブモォォォォッ!」
俺が攻撃範囲に入った瞬間、ミノタウロスがその巨大なバトルアックスを頭上から振り下ろした。
ゴォォォッという豪快な風切り音と共に振り下ろされた攻撃を紙一重で躱し、腹部に槍を突き入れる。
分厚いゴムに刺したような感触が槍を通して手に伝わる。ダメージは147。
「カーズ!」
待機させていた【中級闇術】のカーズで回復力を下げた後、バックステップで距離を取る。
〔マスター、回避が、ギリギリ、すぎます。もう少し、余裕を、持って、躱して、下さい〕
「ひろにぃ! 近すぎ」
ナビさんとティアから同時に忠告が来る。
自覚は無いが、俺の戦い方は余裕というものが無いらしい。ナビさんとティアからちょくちょく忠告を受けていたが、俺自身に実力が無いのだから、仕方がないと思うんだが……
そんな事を考えていたら、ミノタウロスが床を踏み抜いてるんじゃないかという様な爆音を響かせ、こっちに突進して来た。敏捷度350は伊達じゃ無いらしい。とんでもなく早い。
「おおうっ!」
紙一重で横っ飛びをして体当たりを躱す。
危なくミノタウロスに轢かれるとこだった。衝撃は自動車……いや、トラックレベルかも知れない。
ミノタウロスの体当たりの衝撃を想像して、背筋が寒くなる。
ドッドッドッ!
俺への体当たりが不発に終わり動きを止めていたミノタウルスにティアのアーツ【三連の矢】が刺さるが、ミノタウロスは怯むことなく横っ飛びで体勢を崩していた俺に横薙ぎの一撃を振るう。
ゴッ!
直撃は槍で防いだが、鈍い音と共に来た激しい衝撃で身体が地面と水平に数メートル飛ばされた。
二、三回床に叩きつけられながら吹き飛ばされたが、防御のお陰かダメージはあまり無い。
「ひろにぃ、大丈夫?」
「ああ、問題無い」
ティアの心配する声に軽く答え、体勢を整え槍を構える。
〔マスター、スピードで、撹乱、しましょう〕
(えっ? でも敏捷度はあっちの方が上だよ)
〔直線的な、スピード、では、勝てませんが、体格の、差と、【隠密】、を、駆使、すれば、小回りは、こちらが、上です〕
(分かった、やってみよう)
ナビさんの提案を受け、ミノタウロスの周りを回りながら、小刻みに槍を突いていく。途中何度か攻撃を喰らい吹き飛ばされるが、直ぐに体勢をを立て直し、また同じ事を繰り返す。
ティアは俺の動きの隙間を突いて矢を射り、俺がダメージを受けたら【ヒール】で回復してくれた。
そうして、チクチクと攻撃を繰り返していたのだが、いかんせん大きな戦果は得られない。
「ちぃぃっ! いい加減倒れろ!」
〔マスター、冷静に!〕
長い時間同じ事を繰り返してきた俺は、乱れる呼吸と重くなり始めた足に焦りを覚え、正面から渾身の突きをミノタウロスの鳩尾に突き入れる。しかし、それは悪手だった。
ナビさんが警告してくれたが、間に合わない。
ミノタウロスは俺の攻撃を腹に受けると同時に、バトルアックスを振り下ろしたのだ。
ゴッ!
鈍い音と共に後方に吹き飛ばされる。全身を激しい衝撃と鈍い痛みが駆け巡った。
「痛っっ! ……まだ死んじゃいないな」
まだ動く四肢に力を込めて、ヨロヨロと立ち上がる。
〔マスター、また、マスターの、悪い、癖です〕
「ひろにぃ、生きてる?」
起き上がりながらナビさんにお叱りを受けていると、ティアが心配そうに側に駆け寄ってきた。
「ああ、問題は……無いわけないか……」
言いながらHPを確認すると、三割を切っていた。慌ててHPを3000回復させるハイポーションをあおる。二十八層の宝物で手に入れた一本しか持ってないポーションだったが仕方がない。
ミノタウロスを見ると腹に槍を刺したまま、こちらに向かって身構えていた。
〔ミノタウロスの、残り、HPは、684です。マスターは、正面から、ティアは、背後から、攻めて、一気に、畳み、掛け、ましょう〕
(ナビさん、さっきは正面から強引に行ったら怒ったじゃないか)
〔強引な、攻めと、連携は、違います。正面から、と、いっても、防御を、無視して、とは、言って、ません。良いですか、くれぐれも、防御を、念頭に、置いて、戦って、下さい〕
ナビさんに念を押され、俺はそれを心に刻んだ。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる