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第3章 人間超越編
第32話 神の思惑……超級合成は怖いっす
しおりを挟む「一体何なんだ! こいつらは?!」
俺達の前に現れたのは、どう見ても人間だった。
鎧を着て、剣や槍を持った人間が三人。それぞれの武器を構え、こちらに対して臨戦態勢を取っている。その後ろにはローブを着て杖を持った魔道士風の人が二人。そして弓を構えたエルフまで一人いる。
(アユム、鑑定を!)
[了解しました]
【共に歩む者】に吸収された【森羅万象の理】の発動をアユムに指示すると、彼女は直ぐにスキルを発動させた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
名前 ヒューマン Lv 86
魔物種 人もどき
状態 正常
HP 3110/3110
MP 2705/2705
体力 622
筋力 641
知力 471
器用度 592
敏捷度 613
精神力 573
魔力 511
〈ノーマルスキル〉
見切りLv6
斬撃力上昇Lv7
世界共通語Lv10
〈エクストラスキル〉
上級剣術Lv6
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ちぃ! なんだこのふざけた魔物は!」
俺の苛立ちに反応したのか、ティアが険しい顔で弓を構える。
「ダメだ! ティア」
弓を射ろうとするティアを手で制した。
「ん!?」
〈何故ですマスター〉
攻撃するのを止められ動揺するティアと、その行動に対するトモの疑問の声が同時に発せられるが、俺の心情を、付き合いの一番長いアユムが代弁してくれる。
[マスターはティアに人殺しに慣れさせたく無いのです。甘いと思うかも知れませんが、それがマスターなのです。その位、理解しなさいトモ」
〈ぐっ……〉
《あはは、確かにトモちゃんはもうちょっと、ティアちゃんに甘々なマスターの事を理解すべきだね》
アユムに言われ言葉を詰まらすトモと、それを冷やかすニア。
いつもなら、この気の抜けるやり取りで苛立ちなど霧散してしまうのだが、今回はそうもいかなかった。
(ここは、神が召喚した勇者を鍛える為に作ったダンジョンの筈だ。そこに人や亜人と変わらない姿の魔物が居るのは偶然なのか?)
こちらが困惑しているうちにも、魔物共の戦闘準備が完了する。
「くそっ! 迷ってる暇は無いか!」
[マスター、【魔力操作】で【上級炎術】の魔法、フレイムバーストの火力を二倍にすれば、一撃で殲滅が可能です]
アユムの的確な殲滅プランを、直ぐ様実行に移す。
【魔導師】の【高速思考】で思考速度を百倍にして、【魔力操作】で消費MPを二倍にする代償にフレイムバーストの威力を二倍にし、【無詠唱】で魔法を発動する。
魔法を発動すると、魔物パーティの前に十センチ程の紅い玉が現れる。そして魔物パーティの方向にのみ影響が出る指向性の爆発が起こった。
凄まじ爆音の後には、消し炭となった人型の死体が六体。
その凄惨さに直ぐ様ティアの目を隠し、【解体術】を使用する。
死体が核やドロップアイテムに変わったのを確認し、安堵と供にティアの目隠しを外した。
「ん、ティアもやれる」
「ティア、世の中には慣れてはいけない事もあるんだ」
不平を言うティアの頭を撫で優しく諭すと、俺はあのヒューマンとかいうふざけた魔物が、偶々最初に出た希少な魔物なのか、それともこの階層に大量に出る魔物なのか確認する為に階層の奥へと歩き始めた。
⇒⇒⇒⇒⇒
結論から言うと、この階層にはヒューマンしか出てこなかった。
絶えず四人から六人のパーティで現れるヒューマンを、最初と同じ手順で倒していく。
人と同じ姿をしたヒューマンを殺すのに抵抗感はあったが、恐怖感は無かった。恐らくあのスキルの効果だろう。
ーーあの、最初から付与されていたスキル。【恐怖耐性】の……
白い部屋で【恐怖耐性】は戦闘の恐怖を消す為と説明していた。しかし、こんな魔物が勇者育成の為のダンジョンで現れるとなると、本当にそれだけが狙いだったのかと、疑いたくなる。
「ぐっ……」
ヒューマンを倒しながら進んで行き、大きな広間に出たところで俺は小さく呻いた。
その広間には五人パーティ三組、計十五人のヒューマンが待ち構えていた。
「くそっ、胸糞悪い!」
勇者にこんな事をさせるのが、理不尽で苛立たせるこの異世界の神の思惑だと思うと、怒りがこみ上げてくる。
「ん、やっぱりティアもやる」
今迄、俺の言いつけを守って手を出さなかったティアが、この数の差では不利だと思ったのか前に出ようとする。
「ティア、出なくても大丈夫だ」
怒りを口調に出さない様に気を付けながらティアに語りかけ、俺は超級魔法の準備をする。
この魔法の存在は【超級炎術】と【超級水術】を取得した時に気付いていたが、使う機会が無かったので威力と効果は分からない。ただ、広範囲魔法である事は分かっていた。それを今、怒りに任せて使う事を決めた。
「【超級炎術】【超級水術】合成魔術ーーミストエクスプロージョン!」
〈マスター! その魔法は!〉
《此処じゃマズイよ!》
[マスター、ティアを抱え、防壁を!]
俺が魔法を発動させると、【供に歩む者】の三人が慌てて叫んだ。
「えっ?」
三人が同時に慌てる事など無かったので、俺は怒りを忘れ、ポカンとしてしまった。
[ティア! マスターに抱っこです!]
「んっ!」
アユムに言われ、ティアが躊躇無く俺の胸に飛び込んでくる。
「ぐおっ!」
勢い良く飛び込んで来たティアを、その衝撃で呻きながらもなんとかキャッチする。
[マスター、魔法の使用許可を! ティア、魔法の障壁を張って!」
アユムの慌てた様子に只ならぬものを感じて、直ぐに三人に魔法使用許可を出す。それと同時に広間の中央を見ると、直径一メートル程の紅い玉が床から十センチ程の所に浮いていた。
あれは【超級炎術】フレアか? それにしてもデカすぎるだろ!
本来、二十センチ程の超熱量の火球が爆発するフレアの威力から、その五倍の直径の玉がどれ程の破壊力なのか想像し、初めて事の重大さに気付いた。それと同時に、その紅い玉の上に、一メートル程の蒼い玉が現れゆっくりと降りていく様を見て、俺は術の全容を理解してしまった。
超高温の玉に大きな水の玉をぶつける。水は一瞬で蒸発してーー
「って、何がミストエクスプロージョンだ! 水蒸気爆発じゃないか!」
「ウォータードーム」
〈グランドドーム〉
《エアドーム》
[ホーリードーム]
俺以外の四人が次々とドーム状の障壁を張っていく。俺も慌てて障壁を張った。
「シャドウドーム!」
俺が障壁を張ったと同時に、凄まじい爆音と振動が辺りに響く。
その凄まじ衝撃の中、俺はミストエクスプロージョンが水蒸気爆発なら、【超級炎術】と【超級地術】の合成魔術、サンドエクスプロージョンは粉塵爆発だなと、現実逃避の様に考えていた。
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