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第3章 人間超越編
第31話 かつての姉の葛藤……俺の所為じゃ無いでしょ
しおりを挟むーーSide香奈美ーー
「ふぅ……厄介な事になってるわね」
部屋の窓から、ギルド会館から出て城へと戻っていくけんちゃんとヒメちゃんを見下ろし、私は一人ごねた。
「厄介……ですか?」
私の後に控えていた龍次さんが私の独り言に反応する。
【転生者】の取得で年齢を若返らせる事が出来るのに、それをせずに威厳ある姿を良しとした、私が信頼する副官。
まあ、今の胡散臭い姿が気に入っているからなんでしょうけど。
「ええ、厄介だわ。まさかひろちゃんがそんな事になってるなんてね……」
「ふむ……、私には解りかねますが、つまりはそのひろちゃんなる人物がキャラクターメイキングでやらかしたという話でしょう。もう死んでるのでは?」
「それは……無いわね」
淡々と物騒な事を言う龍次さんの方に振り向き、私はキッパリと言い切った。
龍次さん、物騒な事言わないでよ。ひろちゃんが死ぬなんて、絶対にあり得ないんだから。
などと心の中で思いっきり否定していると、龍次さんは興味深そうに口髭を指で撫でる。
「ほう。香奈美殿がそこまで言い切りますか……私には武術系スキルも魔術系スキルも無い、しかも能力値はオール1の状態で魔物を倒すすべは無いと思いますが……そんなステータスでは人間の子供にすら勝てないでしょう」
「普通に考えたらそうでしょうね……でも、ひろちゃんは普通じゃないから」
言いながら、遠い昔のひろちゃんの姿を思い出し、思わず微笑んでしまう。
「ふむ、香奈美殿がそこまで買っているとは……どの様な人物で?」
「そうねぇ……一言で表すなら深謀遠慮。一つの事を徹底的に深く掘り下げて考えるけど、その考えを口に出す事は無く、周りが確実に間違った選択をした時のみ口に出す。私達はその性格を知ってたから、最終的な行動決定権は常にひろちゃんが持っていたわ」
「成る程。つまり、そのひろちゃんを抱き込めば、あの二人は自動的に付いて来ると言う事ですね」
抱き込む、ね。私の家族なんだから、そんな言い方はやめて欲しいけど、私も今は冒険者ギルドのトップ。私情を挟む訳にはいかないのよね。
そんな訳で、平静を装いつつ私は清濁を併せ飲み頷くしかなかった。
「そうね。でも、簡単に抱き込まれてくれない子だから厄介なのよ。全く、三人一緒なら、けんちゃんあたりから言質を取ってしまえば、例えひろちゃんに思う事があったとしても仲間に引き込めたのに……」
言いながら私は右へ、左へと歩き始めた。
難題にぶつかった時の私の癖だ。
「先にあの二人を抱き込んでは?」
目の前を行ったり来たりする私に、龍次さんが冷静に打開策を提案する。私はピタリと止まり、龍次さんを見た。
「んー……それも手なんだけどね……龍次さんも聞いたでしょ。取得スキルポイント30のオリジナルスキル。しかもシークレット付き」
「はい。久しぶりに冷や汗が出ました」
言葉の内容の割にはポーカーフェイスを崩さない龍次さん。本当にそう思ってるのかしら?
でも、脅威なのは確かなのよね。謎のスキルも、ひろちゃんの用心深い性格も。
「ただでさえ他のスキルとは一線を画するオリジナルスキルなのに、取得スキルポイント30よ。そんなスキルを持ったひろちゃんが、勝手に幼馴染みを取り込んだ私たちに敵意を向けたら、目も当てられ無いわ」
「香奈美殿も幼馴染みでしょう。それを利用しては?」
「深謀遠慮って言ったでしょ。私が現れた時点で、私がこの世界で過ごした時間。そして、その間に得た今の立場などを推測されて、警戒されるわ」
「では、どうしますか?」
「一回、見に行くしかないでしょうね。状況によっては力押ししたいんだけど……」
本当はそんな事したくないんだけど、仕方がない。そんな私の決断に、龍次さんは顎に手をやった。
「他の者たちは、勇者を得て増長し始めている各国の対処で動けないでしょう。『光の国』も調停者の監視の為に動かせませんし……『闇の国』と『水の国』ならば、私達に友好的なので、可能かもしれませんが……」
他の者とは今のギルド設立時に集まった勇者の事。
私と龍次さんの他に五人居るけど、それぞれが他の五国のギルドマスターだから、勇者を得ていい気になっているそれぞれの国への対応で多忙を極めている。
『闇の国』と『水の国』の王はまともな方だから、確かにギルドマスターを動かす事も出来るかもしれないけど……あの二国ってーー
「でも、あの二国からは今回の勇者の件で相談があったと聞いたけど?」
「はい。少々難のある勇者が来た様で……」
「う~ん……友好的なあの二国は蔑ろにはしたくないわね」
「『風の国』は総統が直接対応してくれたお陰で、今暫くは大人しくしてるでしょうから私は行けるとして、残りはどうします?」
「しょうが無いわね、信頼の置けるSクラス以上の冒険者を四人程見繕って」
「分かりました。直ぐ手配します」
そう言って、龍次さんは足早に部屋を出て行った。
私は、今回の『風の国』の勇者の中にけんちゃんとひめちゃんの名前を見つけ、また、あの頃の様に皆んなと暮らせると思って飛び上がりたいくらいに喜んで、ひろちゃんの名前が無いことに凄く落ち込んだ。
ひろちゃんはこの世界に来なかったのか。私やけんちゃん、ひめちゃんと離れ離れになって、あっちの世界で独りぼっちになっているのではないかと心配になった。
でも違った。
ひろちゃんもこっちに来ていた。
それは素直に嬉しい。嬉しいんだけど……
ひろちゃんだけが単独行動なんて、なんて最悪な展開なのかしら。
ひろちゃんは仲間と一緒に居れば、自分を押し殺して仲間の意見を聞いてくれる。けど、単独行動されたんじゃあ、私という存在をどれ程信じてくれるだろう?
……ひろちゃんはまだ、私を家族だと認めてくれるだろうか? 認めてくれれば、昔のよしみで押し切る自信はあるんだけどなぁ。
でも多分ひろちゃんは、私の雰囲気や態度で昔の私ではないと間違いなく見抜いてくる。
私は皆んなと昔みたいに暮らしたいだけなんだけどなぁ……まさか、ひろちゃんがネックになるなんて思わなかった。
「はぁ~あ……おねえちゃん、ひろちゃんにこんなに悩まされるなんて思わなかったぞ!」
私は一人、かつての幼馴染みに愚痴をこぼした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーSide博貴ーー
「はっくしょん!」
いきなり出た特大のくしゃみにびっくりして、ティアが座ったまま50センチ程飛び上がった。
〈マスター、先程から悪寒やらくしゃみやら、風邪ですか?〉
[私が体調管理をしてるのです。そんな事はあり得ません]
トモが心配してくれるが、アユムがすぐさま訂正する。
ここは第八十層ボスの部屋。
ボスを瞬殺してしまった為に盛大に余った時間を持て余し、軽い昼食兼休憩を行なっていた。因みに時間は十四時三十六分。
《それで、どうするのマスター。今日はボス攻略までの予定だったんでしょ。もう帰る?》
ニアの言葉に少し思案する。
帰るには早いし、進むとしても第八十一層の半分攻略出来れば良い方か……
「休憩でHPとMPも回復した事だし、八十一層の魔物を確認しとくか」
「ん、やる」
俺の提案にティアが賛同してくれたが……ティア、今のはやる気の現れか? それとも単に殺るきか?
なんか最近ティアが物騒な子になってる様で心配だ。やっぱり多感な十歳の子が過ごす環境じゃないよな、ダンジョンって……
ここの攻略が終わって健一達と合流したら、情操教育に良さそうな綺麗で静かな場所でのんびりさせてあげたいなぁ……はっ! あの食欲のティアにそんなのんびり生活をさせたら……
限りなく円形になったティアの姿を思い浮かべてしまい、思わずティアの方に振り向いてしまう。
「ん?」
可愛く小首を傾げてるティアを見て、もしそんな生活が出来る様になったとしても、ティアにはしっかり運動をさせる事を誓った。
⇒⇒⇒⇒⇒
第81層に降り立った俺とティアは慎重に歩を進めた。
ーーそして、その魔物と出会った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1月19日、19時頃仕事から帰って来た私は、いつもの様にファンタジーの24時間ポイントの順位の確認を行いました。
(ログインすれば直ぐに分かるのですが、順番に見ていき見つけるのが楽しみなのです)
いつもの様に161位から確認していき……
ああ、やっぱり200位以内には無いか……
あれ?240位以内にも無い。ポイントが1000を切ったのか……落胆しながらも300位まで確認した所で、いやいや、幾ら何でもこんなに急激に落ちるか?という疑問が浮かび、半信半疑で121位から確認した所……
はぁ?何でいきなり130位台にいるんだ?もう、新作でも無いだろうにと、喜びと共にそれ以上の恐怖を味わいました。
(投稿初期、150位台から3日程で600位以下に落ちた経験がある私は急激な順位上昇に、喜びよりも恐怖が優ってしまうのです)
さて、その内、定位置に戻るであろう順位はさて置き、お読み頂いている皆様のお陰でお気に入りが100人を超えました。こっちは純粋に嬉しさを感じられます。
本当にありがとうございます。そしてこれからも宜しくお願いします。
神尾優でした。
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