37 / 172
第3章 人間超越編
第34話 歓迎できない客人……礼儀知らずには腹黒で対応します
しおりを挟むーーSide???ーー
「何故儂がこんなへんぴな所まで足を運ばねばならんのじゃ」
森の中を進む馬車の中で、黒いローブを着た八十を超える齢の老人は苛立ちを隠さぬ口調でそう吐き捨てると、自分の正面に座る少女を睨みつけた。
綺麗な金髪を肩の辺りで切り揃えた十五、六歳位の可憐な少女は、老人に睨みつけられ怯えながら俯く。
老人はそんな少女の様子を見て、眉間に皺を寄せる。
「全く、我が血を引きながら魔法の才能は無いわ、勇者の引き込みは遅々として進まぬわ、本当に役に立たぬ孫じゃな」
「申し訳ありません……お爺様」
か弱い声で謝る孫を『ふんっ』と鼻で笑うと、老人は窓の外へと目を向けた。
老人の名はレイモンド・E・レクリス。『風の国』ファルテイムの宮廷魔術師筆頭という肩書きを持つ人物である。
レイモンドは城内で宰相と勇者の争奪戦を繰り広げていたが、その要である孫娘、エルシアの健一と美姫の引き込みが遅々として進まないのに痺れを切らし、二人の無二の親友だという博貴を自ら傀儡にしようと乗り出したのだ。
(うちの魔術師どもは目先の破壊力ばかりに目を奪われ、人を傀儡にする様な搦め手を知らぬバカが殆どだからな。儂が出張る羽目になったが……まあ良い。レベル0の雑魚などさっさと傀儡にして、それを餌にあの小生意気な勇者二人を手駒にしてくれるわ!)
レイモンドはほぼ確定したと思われる未来予想図を思い浮かべ、ニヤリと嗤う。
レイモンドは知らなかった。自分がレベル0と見下している相手が、今期の勇者の中で最強の力を手にしている事を……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーSide博貴ーー
《来ちゃったね》
ニアが軽い口調で来訪者がログハウスの前まで到達した事をつげる。その口調に焦りの色は無い。
それもその筈で、来訪者の鑑定はもう済んでいる。その内容に焦る要素が無いのだ。
「レベル150前後の武術系スキル持ちが五人と、レベル321の【臨界突破】持ちの【超級闇術】と【超級風術】それに【超級炎術】を持った魔術師が一人。後の一人はレベル5の戦闘系スキル無しねぇ」
レベルから考えれば向こうの方が圧倒的に有利に聞こえるが、レベル150の連中は能力値の平均が800程、レベル321の魔術師でさえ、知力と精神力と魔力が2400強で、後は1600前後なのだ。平均能力値7000の俺と、6000強のティアの敵では無い。
「『風の国』からの客人だとは思うけど、はてさて、どんな要件かな?」
馬車から魔術師風の老人と可愛い少女が降りたのを確認し、扉から外に出る。
《マスター、あの子の事、可愛いって思った?》
ニアが冷やかしてくるが無視。この招かれざる客人の目的が分からない以上、シリアスに対応したい。
ちなみに、ティアにはログハウスの中で待機してもらっている。騎士達の中には【気配察知】を持っている者もいたが、【気配察知】ごときで【忍ぶ者】の【気配隠蔽】を見破る事は出来ない。
「ほう、貴様が勇者の残りカスか」
いきなりの老人の言葉に苦笑いを浮かべる。
(はは、いきなり残りカスと来たか)
[マスター、この無礼者をすぐ様八つ裂きにしましょう。魔法使用の許可を]
いつもはまとめ役のアユムが物騒な事を言い始める。
〈アユム落ち着いて。この者からは情報を引き出さないといけないんだから〉
《そうそう、殺っちゃうのなんていつでも出来るんだからさぁ》
ああ……トモとニアが諌めると思ったら、まさかの『いつでも殺れる』発言。【共に歩む者】連合では、殺る事は決定事項らしい。
背後からは、弓に矢をつがえたティアがウズウズしている気配がする。
俺を侮辱されて怒ってくれるのは嬉しいけど、どうも彼女達は物騒でいけない。
ため息を一つ吐き、御老体に言葉を返す。
「挨拶も無く、いきなりのお言葉ですね。それで、貴方様はどちら様で?」
「ふん、小生意気に挨拶を求めるか……まあ、良かろう。儂は『風の国』ファルテイムの宮廷魔術師筆頭、レイモンドじゃ。今日は儂直々に貴様を迎えに来てやったのじゃ。有り難く思え」
おおう、見事な上から目線。いやはや、国の重鎮がここまで見事に高圧的な態度を取るとは……健一、苦労してるだろうなぁ。
しかし、宮廷魔術師筆頭って事は、国に所属している魔術士たちのトップってことだろ。何でそんなお偉いさんが俺を迎えに来たんだ? まさか、俺が強くなった事がバレたか……
だとすると面倒な事になるなと思っていると、そんな事は杞憂だった事がすぐ分かる。
「儂が名乗ってやったのに、レベル0のカス如きが何を黙っておる。恐ろしくて声も出ぬか」
こちらをとことん見下して嗤う老人に半ば呆れながらも、情報を引き出す為に話を合わせる事にする。
「その様な位の高い肩書きを持つ貴方が、俺なんかに何の用事があるというのです?」
「ふんっ、貴様は勇者を釣る餌に過ぎぬのだ。下らぬ詮索などせず、黙って儂について来ればいいのじゃ」
(【高速思考】発動。さて、俺が勇者を釣る餌ねぇ……)
[勇者と言うのは勿論ーー]
(健一と、ヒメの事だろうな。だとすると、俺があの二人と仲が良いって情報はどっから来た?)
〈迎えに来た時の兵士達では?〉
(いや、違うな。あの時のやり取りで、俺を抑えれば二人が付いて来る何て情報は得られない筈……)
《なら、二人から直接聞いたって事だね》
(だよな……って事はヒメ辺りにあの女の子を近づけたか)
《ヒメって子、そんなに口が軽いの?》
(まぁ……相手に悪意が無いと判断すると、真摯に対応しちゃうんだよね)
[純真……というとこですか、美徳ではありますが、腹芸が出来ないのは困り者ですね]
(まあ、そう言うな、それも長所と捉えてくれ。しかし、あの二人を引き入れたいと言う事は、『風の国』は一枚岩ではでは無いな)
[ですね。国内に敵対勢力があって、そちらが勇者達を抑えているという所でしょう]
(だとするとーーあの爺さん、利用したいな)
《えー! 殺らないのー?》
(いやいや、国の重鎮がここに向かったまま行方不明は不味いでしょ。明らかに俺に注目が集まる)
〈と、言う事は、あの者達には戻ってもらう上で、ここの情報を漏らさない様にするって事ですね〉
(まっ、そう言う事だな。力を見せて従順になるなら良し、そうでなければ、【中級闇黒魔術】で精神操作だな)
《わーい。マスターはっらぐろー!》
ニアの茶々は受けながす。健一とひめを道具扱いする様な奴に礼儀なんて必要ないんだ。
行動方針を決めた俺は【高速思考】を解除した。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる