43 / 172
第3章 人間超越編
第39話 懐かしき人への傾向と対策……カナねぇにこんなに悩まされるなんて、程々にあったなぁ
しおりを挟む「ん、着替えた」
フル装備で戻り、腰に手を当て胸を張りドヤ顔のティアの頭を撫でてやる。
今のティアの装備は、ドリアードのドロップアイテムである希少級+の聖樹の木片から作った薄緑色の胸当てと籠手。
その上から、宝箱から出て来た伝説級-の隠者のローブを羽織っているのだがこの隠者のローブ、ローブと命名されているのに、何故かティアのサイズで丈が腰下までしかない。しかも腰の辺りに一対のポケットが付いていて、更にフードまで付いてるーーそう、これは何処からどう見てもパーカーなのだ。
ティアはこのパーカーをいたく気に入り、フードを被った時の特殊効果である気配隠蔽力アップを利用した奇襲を得意としていた。
俺もこの戦法に協力する為【超級短剣術】を取得し、ティアにラーニングさせている。
「さて、今度のお客様は何処の誰さんかね」
相手によってはヒヒイロカネの加工を邪魔した腹いせの的にしてやろうと、窓から街道の先を見つめつつ【千里眼】を発動させる。
「………………」
森の中をこちらに向かって六人組の男女が歩いている。その先頭を歩く、ミニスカ浴衣というこの世界には似つかわしく無い奇抜な姿の女性を見て、俺は無言でこめかみを押さえた。
「ん? 奇襲なら森の中がいい」
俺の行動に小首を傾げながらも、戦うこと前提で戦闘プランを発表するティアを手で制する。
「いや、戦闘じゃなくて先ずは話し合いだ」
「ん、でも、今度はティアも出る」
対御老体戦の時に後ろで待機させてたのが不満だったのだろう。鼻息荒く力説するティア。
ああ、随分好戦的になっちゃったなぁ……やっぱり俺以外に交流が無いダンジョン教育には無理があったか。
ティアの将来が心配になってきたが、取り敢えずそちらの心配は先送りにさせて貰って、先ずは目先の心配だよな……
[先程から様子がおかしいですが、お知り合いですか?]
俺の困惑を察知したのか、アユムが念話をしてくる。
(ああ、同郷の幼馴染みだよ。しかも、状況から考えて俺の世界の時間で俺達より一年前にこっちに来てる筈の人だ)
〈マスターより一年前にですか? それは有り得ないと思いますが〉
トモの疑問に俺も同意見だった。だから俺の世界の時間でと言ったのだが……
かつて、ナビさんに聞いた事があった。五百年前の初源の勇者と、それから百年毎に現れる勇者の事を。
五百年前といったら日本は戦国時代の頃だ。その百年後以降は江戸時代。その頃の人間に異世界転移を認識させ、納得させる? 無理だろ。
そんな事を思っていた時、転移する時の健一の言葉を思い出した。『カナねぇに逢えるかもしれない』その言葉を思い出すと同時に、カナねぇの時も行方不明者は五人だったという事も思い出す。そして、こう結論付けたーーあっちの世界とこっちの世界は時間軸が違うか、転移の魔法は時間軸を無視すると。
一方的な説明だけで異世界に放り出す様なふざけた神の事だ、ある程度その辺の知識に長けた者を選別してるのだろう。それに、白い部屋で既に付けられていた【恐怖耐性】。あれは異世界に連れて行かれる恐怖心も消してたんじゃないか?
〈マスター?〉
「……ん?」
考え込んでいた俺はトモの心配そうな声で我に返った。
[また考え事ですか?]
《また自分だけで考え込んでたの?》
すぐさまアユムとニアに同時に突っ込まれる。
「ああ、すまん。で、俺の見解なんだが……今こっちに向かって来てる幼馴染みの天野香奈美は、俺達の世代以前の勇者だと思う」
〈えっ、だってマスターはさっき一年前って……〉
「ああ、だから俺達の世界の時間で、と前置きしただろ」
[そういう事ですか。マスターの世界とこの世界では時間軸が違うのですね]
「それか、転移魔法が時間軸を無視するかだな」
《じゃあさぁ、あの変なお姉さんの隣にいる胡散臭いおじさんも勇者かな? この世界じゃ見ない格好だけど》
「ん、変な人」
ニアの毒が含まれた言葉にティアがうんうん、と頷きながら同意する。
ああ、いたな。カナねぇの隣にタキシードにシルクハットを被ったおっさん。中世の貴族って感じの格好だけど、カナねぇと同じく趣味で作った装備だろう。
「多分、そうだろうな。念のために鑑定しとくか」
[それは止めておいた方がよろしいかと]
俺の提案をアユムが止める。
「ん? 何でだアユム」
[先代の勇者という事は、少なくとも百年はこちらの世界で修練した事になります]
「だろうなぁ」
[それであの若さという事は、【転生者】から更なる進化系スキルを取得してると思われます。その場合の推定レベルは百年で400前後、二百年の場合は600強まで達しているかと]
「……レベル差があり過ぎるか」
[はい。本来【転生者】からの進化系スキルごときで【超越者】のスキルを妨害をする事は不可能ですが、流石にこのレベル差では……]
〈良くて見れるのはHP、MPまでですね。しかも、鑑定を仕掛けた事が相手にバレちゃいます〉
アユムが口籠もった所をトモのが引き継いで続ける。
そっか、人種的には上位でもレベル差があると、スキルも妨害されるのか……だとすると、戦闘は厳禁だな。
「一応、【転生者】からの進化系スキルを取得し、レベルが400から600だとして、どれ程の強さになるか聞いときたいんだけど」
[そうですね……人種によって各能力値の上昇値や上限が異なるので、一概には言えないのですが、平均で上昇値がレベルが上がる事に50。上限は2万から3万と言ったところででしょうか]
アユムの示した上限の数値に思わず目を見開いてしまった。
「2万から3万~!」
《そうだね、それぞれの人種の得意な部類の能力値が大体3万で不得意な方の能力値は2万。それ以外はその間で設定されてるね》
「おいおい、とんでもないな」
《上限無制限の人が何言ってるかな》
あまりの数値の高さに驚くと、ニアが呆れたように呟く。しかし、その呟きを無視し、俺は計算を始めた。
「レベルが一つ上がる事に、人種効果によって各能力値が50上がるだろ。当然、スキルレベル10の能力値上昇効果もプラスされるから……」
[あっマスター。レベル10のスキルの能力値上昇効果は、マスターに当てはまるのはお止め下さい]
「えっ、何で?」
アユムに忠告され、計算の手を止める。今現在、俺のレベル10のスキルによる能力値上昇効果は平均100を超えているので、それで計算しようとしたのだが……
[マスターは今まで、ボスやユニークモンスターの討伐ボーナスを除けば、21734のスキルポイントを得ています。それから【超越者】の取得分、10000を引いても11734。
それに対し、香奈美さん達は、レベル200で【転生者】を取得したと仮定しても、合計スキルポイントは1800。レベルが600で計算しても2400です。
そこから能力値上昇効果を計算すると、能力値一つに対して30から35が妥当です]
「と、すると、レベルが一つ上がる事に80位?」
[そうですね]
「成る程、じゃあそれを踏まえると……上限振り切るよね」
[……そう、ですね]
相手の能力値の平均が2万から3万と決まり、久しぶりに絶望に満ちた溜め息を吐くと、トモから報告が入る。
〈相手からの【森羅万象の理】を感知。妨害ーー成功しました〉
あっ……妨害しちゃったんだ。これでレベル0だから弱いって言い訳も出来ないなぁ。
再び溜め息が漏れた。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる