理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第3章 人間超越編

第40話 ナイスミドルとの化かし合い……腹の探り合いは苦手なんだよ

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   ーーSide香奈美ーー

「むっ!   これは」

   懐かしきログハウスが視界に入り始めた頃、珍しく龍次さんが驚きの声を上げた。

「あら?   どうしたのレリック。珍しく動揺してるみたいだけど」

   他の四人のS級冒険者の手前、龍次さんを偽名で呼ぶ。ちなみに私の偽名はフロライン。昭和の少女マンガに出てきそうな名前だけど、今更改名も出来ないから適当に付けた事を後悔してるのよね。

「総統……【森羅万象の理】を妨害されました。おそらく鑑定スキルを使った事も気付かれましたね」

   呆然とログハウスの方を見詰めながら、冒険者四人に聞こえない様に小声で報告してくる龍次さんに、私は目を見開いた。

「妨害って、龍次さんレベル614よね」

   龍次さんに近寄り、私も小声で話す。勿論、冒険者の中には【聞き耳】を持つ盗賊系の者もいるから、【上級風術】エアドームを薄く張って声を漏らさない様にしている。

「はい。一般的に【森羅万象の理】を完全に妨害するには二倍以上のレベル差が必要なんですが……」
「龍次さんの二倍って……いやいや、レベルを上げ始めて四ヶ月ちょいでそれは幾ら何でも無理でしょ」
「そうですね。だとすると、考えられるのはスキル妨害に特化した未知のスキルですか……不思議なのは一緒にいるもう一方の方にも同じく妨害されてるんです」
「あっ!   取得スキルポイント30のオリジナルスキル!   スキル妨害系でパーティにも恩恵を与えるとしたら……」

   けんちゃんのもたらしたひろちゃん情報を思い出す。

「成る程、だとしたら僥倖ですね。オリジナルスキルの効果がスキル妨害に特化した物なら、能力値の差でどうとでも押さえ込めます」
「うーん、出来れば話し合いで穏便に済む様に持っていきたいんだけどね~」

   昔のよしみで穏便に済ませたいという想いから、思わずそう言ってみたが、心の中では一筋縄ではいかないよね、と、思ってもいた。
   それにしてもこっちに気付いたって事は、私の姿も見えてるわよね。ヒメちゃんみたいに飛び出して来て抱きつけとは言わないけど、顔を出すなり何らかのリアクションがあってもいいんじゃないかしら……
   かつての幼馴染みのツレなさに少し腹を立てながら、遥か昔のひろちゃんの姿を思い浮かべる。
   学校からの帰り道。私とヒメちゃんとけんちゃんが並んで談笑しているのを、半歩下がった場所で優しく微笑みながら聞いているひろちゃん。
   私にはもう百年以上昔の、それでも大切な記憶。
   もう一度、あの頃の様に皆と楽しく付き合いたいけど、今の私には、今の立場というものがある。
   懐古に浸ってる場合じゃないわね。相手は些細な事からも情報を収集してくるひろちゃんなんだから、気合い入れなきゃ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   ーーSide博貴ーー

   コン、コン、コン……

   外へと通ずる扉が三回ノックされた。

「ん、来た」
「来ちゃったねぇ」

   ティアと二人、呟きながらぼーっと扉を見つめる。

   コン、コン、コン……

   更に三回ノックされる。

「ん、出ない?」
「んー、どうしょう。絶対面倒な事になるよなぁ」
「ん?   面倒?」
「そっ、面倒」

   ごん!   ごん!   ごん!   ごん!

   扉が激しく叩かれる。そして聞こえてくる罵声。

「ちょっと!   ひろちゃん、いるんでしょ!   何で開けてくれないの!」
「あー……やっぱりかなねぇ?」

  【世界共通語】を使ってるかなねぇに 敢えて日本語で話す。
   かなねぇは俺がここにいると分かってここに来ている。という事は十中八九、情報源は健一達だろう。ならば俺は、極力健一達の記憶通りの俺を演じる事にする。
   かなねぇが俺達と一緒だった頃と同じなら、無条件で信用しても良いんだけどね。この世界で百年以上暮らしているかなねぇは、その間にそれなりの立場を確立してるだろう。
   かなねぇが元々持っていたカリスマ性と、勇者としての力。それをかなねぇが有効活用してないとは到底思えない。
   だとすると、用心する必要が出てくるんだよな。はっきり言って、国や組織の権力争いに巻き込まれたく無いんだよね。

「そうよ!   早く開けて」

   今度は日本語で怒鳴るかなねぇ。
   これで俺がまだレベル0だと思ってくれればいいけど……鑑定、妨害しちゃったもんなぁ。
   淡い期待を込めながら扉を開けた。

「ふぅ、やっと開けてくれた。ひろちゃん酷いじゃない」

   プリプリしながら部屋に入ってくるかなねぇを苦笑いで迎え入れながら、その後ろに続くタキシード姿のナイスミドルに目を向ける。

「こちらの方は?」

   なるべく然りげ無く聞く。日本語で。

「おっと、これは失礼。私はレリックと申しますお見知り置きを」

   恭しく頭を下げながら日本語で答えるレリックさんとやらに、同じく頭を下げつつほくそ笑む。

(良し!   これでこのナイスミドルも勇者に決定)
[今のはマスターの世界の言葉ですか?]
(ああ、それに答えたということはナイスミドルも同郷って事だ)

   アユムに答えながら頭を上げると、ナイスミドルは口に手を当てながら少し驚いた様な顔で俺を見ていた。

「いやはや、今の日本語での会話は私を試していたのですね」
「……もしかして顔に出てましたか?」

   直ぐにバレた事に驚いたが顔には出さずに尋ねると、ナイスミドルは笑顔を浮かべる。

「いえいえ、顔には出ていませんでしたよ。いわゆるカマかけです。しかし……香奈美殿には深謀遠慮と聞いていましたが、お腹の方も中々に黒い様ですな」

   言われてかなねぇの方を見ると、思いっきり目を逸らされた。
 しかし、深謀遠慮ねぇ……確かに用心深さには自覚があるけど、偉く過大評価されているみたいだ。過度に警戒されるのは不本意なんだけどなぁ。

「ところで、そろそろ【世界共通語】での会話に切り替えませんか?   私と香奈美殿は良いのですが、後ろの四人には通じないのでねぇ」
「俺が【世界共通語】を使えると?」

   すっとぼけると、またニヤリと笑われた。

「ふっふっふっ、おとぼけになるのは結構ですが、私とてこの世界で長らく戦いに身を投じた人間です。一目見れば、どれ程の力を持っているかくらい解りますよ」
「はっはっはっ、俺が強いと?   御冗談を」
「ふっふっふっ、冗談にして貰いたいのは博貴殿のお力の方ですよ」
「はっはっはっ……」
「ふっふっふっ……」

   暫く互いに笑い合ったが、このナイスミドル、何処までが本気か分からない。

「はぁ、俺の負けです」

   結局、根負けしたのは俺だった。【世界共通語】で負けを認める。この辺は年季の違いなんだろうなぁ。

「ふっふっふっ、貴方は中々に見所がありますよ」

   嬉しそうにそうのたまうナイスミドルに何の見所なんだ?   と思いながら、かなねぇ達に席を進めた。


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