理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第59話 デルク村……ゾンビ映画は嫌いではありません

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   デルク村は思いの外、小さな村だった。
   森の出口がそのまま村の裏口になっているこの村は、森の出口から真っ直ぐ伸びる道の左右に木造の建物が三、四十棟建ってるだけの良く言えば静かな、悪く言えば寂れた村のようだ。

[元々はログハウスまで続く道と森の管理の為に作られた村ですが、勇者の降臨自体百年に一度の事なので、国の中央からは放ったらかしにされている村のようです。村の収入源は主に森で取れる薬草や魔物、モンスターなどの素材。後は偶に来る冒険者達の宿泊費ぐらいだそうです]

   アユムの情報を聞き、改めて村を見渡す。

「村の人口ってどれ位?」
[現在は百人弱となっています]

   百人くらいねぇ……
   村を見渡すが人っ子一人確認出来ない。いや、確かに【気配察知】には反応があるのだが、誰も建物から出て来ないみたいだ。

「俺達、警戒されてる?」
「んー、ちょっと違うと思う」
「どうゆう事?」
「ん、ティア達に敵意を向けて無い」

   敵意、ねぇ。敵意がどんな感じなのかはわからないなぁ。殺気なら何となく分かるんだけど、違うものなのかな?
   ティアの感覚が確かなら、いきなり集団で襲われるなんて事は無いだろう。そう考え、村の中へと歩みを進めると、一番手前の建物の扉が静かに開いた。
   少し警戒しながらその様子を眺めていると、少しだけ開いた扉から一人の痩せこけた青年が顔を出す。

「貴方方は一体何処から来たんだ?」
「何処からって、森からだけど」

   少し怯えた様子で尋ねてくる青年に素直に答えると、青年は目を大きく見開いた。

「森からだって!   森にはワイバーンの群れがいただろう」
「ああ、いたね」
「いたねって……あいつら人を見ると直ぐに襲いかかってくるんだぞ!   良く無事だったな」
「えっ、そうなの?   襲われる前に倒しちゃったから知らなかった」
「倒したって……倒したぁ?!」

   突然大声を出して建物から飛び出して来る青年。青年の大声で辺りの建物からも人々が姿を現わす。その全員が痩せていた。

「今、倒したって聞こえたが、まさか……」
「ああ!   この人達がワイバーンを倒したんだそうだ!」
「なんと!」
「それは本当ですか!」

   わらわらと俺達の周りに集まってくる痩せこけた村人達。悪いとは思ったが、ちょっとゾンビ映画を思い出してしまった。

「失礼ですが貴方方はどちら様でしょうか?」

   ゾンビばりの群集の中から一人の老人が歩み出て話しかけてくる。
   見事に禿げ上がった頭。立派な白い顎髭。焦げ茶色のローブを纏い、捻れた木の杖をついている。そしてその顔は、頭蓋骨に直接皮膚を貼り付けたんじゃないかって位痩せていた。
   聞くと、ここの村長さんらしい。

「俺はひろ……ヒイロ、こっちはティアです」

   かなねぇ達がこの世界に合った偽名を名乗っていた事を思い出し、慌てて本名を若干変えたのだが、それを聞いたティアがカッ!   と目を見開いてこっちをガン見してくる。
   いやいや、ティアさん。ちょっと機転を利かせてアドリブで偽名を名乗っただけですから、そんなに『ひろにぃの本名はヒイロだったの!』みたいな表情で此方を見ないで下さい。
   その辺の説明をニアに任せ、村長との会話を続ける。

「それで、ワイバーンを倒して下さったとの事ですが」
「ええ、つい先程、森の上空をワイバーンが六匹旋回していたので、纏めて倒しました」

   そう返答すると、辺りから一斉に歓声が上がった。
   
「おお!   やったー!」
「あの腐れ蜥蜴共めっ、ザマァ見やがれ!」
「これでやっと森に入れる」

   村人達の歓喜の渦の中、村長に握手を求められ、それに応じつつもこの状況の説明をしてもらう。するとなんでも三十日程前、この村にやって来た冒険者パーティが、ワイバーンの子供を連れていたらしい。
   冒険者達はこの村に一泊して村を去ったのだが、その直後にあのワイバーンの群れがやって来て、目に付く人間を手当たり次第に襲い始めたそうだ。
   それで森に食料を取りに行けなくなり、今まで貯蓄していた食料で何とか食いつないでいたらしい。

[ワイバーンは群れで行動する生物です。子供を連れ去られたワイバーンの群れが匂いを追ってここまで来て、子供の匂いが染み付いたこの村の者達が子供を攫った張本人だと判断したのでしょう]

   アユムの分析を聞き、顔を顰める。冒険者身勝手な行動の尻拭いを何の関係のない村人達がしないといけないとは……しかし、ちょっと腑に落ちない。
   ワイバーンは三十日も前にこの村に来たと言っていたが、十日ちょい前に御老体、その後にかなねぇが来てる筈だけど……
   その辺の事を村長に聞いてみると、

「確かに、十二、三日前に馬車が来ましたが、貴族の紋章入りの馬車でしたので、恐れ多くて助けを求めるなど出来ませんでした。その他に人は……来ておりません」

   御老体以外はこの村に立ち寄ってない?

[香奈美殿達は内密にマスターと接触してた様ですから、目立たない様に村の外から森へ出入りしていたと思われます]
(それでワイバーンには襲われないの?)
[レイモンド殿も香奈美殿も魔物よけのマジックアイテムを持っていました]
(魔物除けのマジックアイテム?   それってこの村には無いの?)
[高価な物ですから、この様な村ではとても買える物ではありません]

   アユムと念話をしていると、ティアがマジックバックをゴソゴソしだした。
   ティアには出発前に、時空間収納は目立つからカモフラージュの為に、マジックバックを使っている様に見せかけて時空間収納を使う様、言いきかせていたのだがはてさて、一体何を出そうとしてるのだろうか?

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