理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第60話 宴……やっぱりティアは俺を料理人だと思ってないか?

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「ん!」

   ドンッ!

   ティアは気合いとともに百キロはあろうかという肉塊を、マジックバックから出して地面に置いた。
   ……ティアさん、料理人の観点から言わせていただければ、食材を直に地面に置くのは止めて頂きたいのですが。
   俺が注意する前にティアが口を開く。

「ん、お前達を飢えさせてた奴の肉。こいつのせいで飢えていたなら、この肉はお前達が食うべき」

   胸を誇らしげに張り、さあ、この肉を食いなさいと宣言するティア。
   うーむ、食いしん坊の思考回路は理解出来ない。
   俺はティアの発言に困惑したが、村人達の反応は違った。

「これは……ワイバーンの肉……これを食べても宜しいのですか?」

   村人の質問に、仰々しく頷くティア。

「「「「「うおー!」」」」」

   ティアの肯定に歓喜の雄叫びを上げる村人達。そのあまりの声量に思わず耳を塞ぐ。
   ぐわー、喧しい!   そしてその肉を誰に調理させる気だティアー!

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   えー……想像通りと言うか、予定調和と言うべきか……
   大方の想定通り、俺は必死に肉を焼いていた。

「命の恩人様、お肉のお代わりをお願いします」
「おっ!   お代わりならこっちもお願いします命の恩人様」

   命の恩人と言っておきながら、誰一人手伝わず鳥の雛の様にお代わりを求めて群がる村人達。

「お前ら!   本当に恩を感じてるなら、恩人に調理なんてさせるな!」
「いやいや、命の恩人様程美味しく肉を焼ける者がいなくて」

   申し訳無さそうに頭を掻きながら言い訳を言う村人。
   確かに最初は村人の中の有志が肉を焼いていたのだが、それを食べたティアが眉を顰め、調理係に俺を指名した。
   嫌な予感はしていたのだが、ティアに半ば強引に鉄板の前に引き摺られた俺は仕方なく肉を焼き……
   気が付いたら俺の鉄板の前にしか人が並ばなくなっていた。今まで調理していた人も、調理を止め俺の鉄板の前に並んでいるのだから始末に負えない。
   確かに他の人の焼いたワイバーン肉を調理の合間につまみ食いしてみたら、なんかパサパサしてるうえ若干の生臭さがあったけど、そんなものは簡単な下処理と焼き方でどうとでもなるんだよ。

《あはは、その手間を簡単なんて言ってのけられるのは【至高の料理人】を持つマスターぐらいだよ》

   ニアから俺の心の叫びへの突っ込みが入るが……あれ?   俺今、念話使ってた?   まさかニアの奴、ついに読心術を使い始めたか!
   ニア、恐ろしい子。
   白目にして額から目元にかけて縦線を入れながら思わず呟いてしまったが、そんな事をいてる内に遂に、アルコールが投入される。
   村の中央の広場で始まったこの炊き出しは、遂に宴会へとその姿を変貌させた。
   ティアを中心にして輪を作り、まるでティアを崇める様に宴会を始める村人達。そして輪の外でひたすら肉を焼く俺。
   えーと……ワイバーンを倒したの俺なんだけどね……何でこんなに蚊帳の外的な扱いをされてるんだろ……
   思わず出てきそうになる涙をグッと堪え、只々肉を焼く。今日程【至高の料理人】を取得した事を後悔した事は無かった。
   
   ⇒⇒⇒⇒⇒

   百キロを越す肉ニ塊、計二百キロ。全部焼いてやったぜ。ふっふっふっ、もう、暫くは肉を焼きたくない気分だ。勿論、俺がこんな気分を味わう事になった元凶、ティアの食事にも暫くは肉が出ない事だろう。
   俺がクックックッと黒い笑みを浮かべいると、長老が酒瓶をぶら下げて俺の元へと来た。

「命の恩人様、御苦労さまでした」

   そう言ってコップを差し出す長老。

「いえ、俺はお酒は……」

   俺は元々は高校生。酒なんて舐める程度しか嗜んだ事は無い。そして美味いと思った事も無い。だから断ったのだが、

「いやいや、遠慮なさらず。ささ、どうぞどうぞ」

   いや、遠慮じゃないんだけど。えっ!   そんな無理矢理コップを渡されても……
   無理矢理コップを持たされ、なみなみとお酒を注がれてしまう。
   う~む、ここは付き合いで飲まねばならないのだろうか……南無三。
   殆ど祈る様に飲んでみたのだが、その味は元の世界で飲んだ物とは全く違っていた。何というか……柑橘系の味が付いた水?
   俺が不思議がっているとアユムから念話が入った。

[マスター。今摂取した飲み物から意識を不安定にさせる可能性のある成分を感知しましたので、【猛毒耐性】を使用し中和しました]

   意識を不安定にさせる成分……アルコールか!   成る程、果実酒のアルコールを飛ばしたからただの果実水になったのか。ナイスだアユムさん。
   アユムさんに感謝していると、長老は再びコップにお酒を注ぎながら小声で囁いてきた。

「命の恩人様は森から来たと言っておられましたが?」
「ええ、そうですけど」

   俺も合わせて小声になる。

「命の恩人様はもしかして勇者様ですか?」

   あれ、もしかしてバレた?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   ニア、恐ろしい子はおっさんの悪影響です。
   向こうの作品で使う機会がなかなか無かったので思わず使ってしまいましたが、今だに通用するネタなのか不安です。
   神尾優でした。
   
   
   
   
   
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