64 / 172
第4章 超越者の門出編
第60話 宴……やっぱりティアは俺を料理人だと思ってないか?
しおりを挟む「ん!」
ドンッ!
ティアは気合いとともに百キロはあろうかという肉塊を、マジックバックから出して地面に置いた。
……ティアさん、料理人の観点から言わせていただければ、食材を直に地面に置くのは止めて頂きたいのですが。
俺が注意する前にティアが口を開く。
「ん、お前達を飢えさせてた奴の肉。こいつのせいで飢えていたなら、この肉はお前達が食うべき」
胸を誇らしげに張り、さあ、この肉を食いなさいと宣言するティア。
うーむ、食いしん坊の思考回路は理解出来ない。
俺はティアの発言に困惑したが、村人達の反応は違った。
「これは……ワイバーンの肉……これを食べても宜しいのですか?」
村人の質問に、仰々しく頷くティア。
「「「「「うおー!」」」」」
ティアの肯定に歓喜の雄叫びを上げる村人達。そのあまりの声量に思わず耳を塞ぐ。
ぐわー、喧しい! そしてその肉を誰に調理させる気だティアー!
⇒⇒⇒⇒⇒
えー……想像通りと言うか、予定調和と言うべきか……
大方の想定通り、俺は必死に肉を焼いていた。
「命の恩人様、お肉のお代わりをお願いします」
「おっ! お代わりならこっちもお願いします命の恩人様」
命の恩人と言っておきながら、誰一人手伝わず鳥の雛の様にお代わりを求めて群がる村人達。
「お前ら! 本当に恩を感じてるなら、恩人に調理なんてさせるな!」
「いやいや、命の恩人様程美味しく肉を焼ける者がいなくて」
申し訳無さそうに頭を掻きながら言い訳を言う村人。
確かに最初は村人の中の有志が肉を焼いていたのだが、それを食べたティアが眉を顰め、調理係に俺を指名した。
嫌な予感はしていたのだが、ティアに半ば強引に鉄板の前に引き摺られた俺は仕方なく肉を焼き……
気が付いたら俺の鉄板の前にしか人が並ばなくなっていた。今まで調理していた人も、調理を止め俺の鉄板の前に並んでいるのだから始末に負えない。
確かに他の人の焼いたワイバーン肉を調理の合間につまみ食いしてみたら、なんかパサパサしてるうえ若干の生臭さがあったけど、そんなものは簡単な下処理と焼き方でどうとでもなるんだよ。
《あはは、その手間を簡単なんて言ってのけられるのは【至高の料理人】を持つマスターぐらいだよ》
ニアから俺の心の叫びへの突っ込みが入るが……あれ? 俺今、念話使ってた? まさかニアの奴、ついに読心術を使い始めたか!
ニア、恐ろしい子。
白目にして額から目元にかけて縦線を入れながら思わず呟いてしまったが、そんな事をいてる内に遂に、アルコールが投入される。
村の中央の広場で始まったこの炊き出しは、遂に宴会へとその姿を変貌させた。
ティアを中心にして輪を作り、まるでティアを崇める様に宴会を始める村人達。そして輪の外でひたすら肉を焼く俺。
えーと……ワイバーンを倒したの俺なんだけどね……何でこんなに蚊帳の外的な扱いをされてるんだろ……
思わず出てきそうになる涙をグッと堪え、只々肉を焼く。今日程【至高の料理人】を取得した事を後悔した事は無かった。
⇒⇒⇒⇒⇒
百キロを越す肉ニ塊、計二百キロ。全部焼いてやったぜ。ふっふっふっ、もう、暫くは肉を焼きたくない気分だ。勿論、俺がこんな気分を味わう事になった元凶、ティアの食事にも暫くは肉が出ない事だろう。
俺がクックックッと黒い笑みを浮かべいると、長老が酒瓶をぶら下げて俺の元へと来た。
「命の恩人様、御苦労さまでした」
そう言ってコップを差し出す長老。
「いえ、俺はお酒は……」
俺は元々は高校生。酒なんて舐める程度しか嗜んだ事は無い。そして美味いと思った事も無い。だから断ったのだが、
「いやいや、遠慮なさらず。ささ、どうぞどうぞ」
いや、遠慮じゃないんだけど。えっ! そんな無理矢理コップを渡されても……
無理矢理コップを持たされ、なみなみとお酒を注がれてしまう。
う~む、ここは付き合いで飲まねばならないのだろうか……南無三。
殆ど祈る様に飲んでみたのだが、その味は元の世界で飲んだ物とは全く違っていた。何というか……柑橘系の味が付いた水?
俺が不思議がっているとアユムから念話が入った。
[マスター。今摂取した飲み物から意識を不安定にさせる可能性のある成分を感知しましたので、【猛毒耐性】を使用し中和しました]
意識を不安定にさせる成分……アルコールか! 成る程、果実酒のアルコールを飛ばしたからただの果実水になったのか。ナイスだアユムさん。
アユムさんに感謝していると、長老は再びコップにお酒を注ぎながら小声で囁いてきた。
「命の恩人様は森から来たと言っておられましたが?」
「ええ、そうですけど」
俺も合わせて小声になる。
「命の恩人様はもしかして勇者様ですか?」
あれ、もしかしてバレた?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ニア、恐ろしい子はおっさんの悪影響です。
向こうの作品で使う機会がなかなか無かったので思わず使ってしまいましたが、今だに通用するネタなのか不安です。
神尾優でした。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる