理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第68話 ギルマスとの対談……俺は悪くないと思う。多分

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[【威圧】の効果範囲は使用者の力量に比例します]

  周りから恐怖に怯えた視線を受けながら、 アユムに【威圧】の効果範囲について説明を受ける。

(え~、範囲を調整出来ないのか?   【威圧】するたんびにこんな広範囲に影響が出るんじゃ、被害がデカすぎて使えないぞ)
[効果範囲を抑えて使用する事は可能です。今回はマスターが何も考えずに使用した為に、この様な結果になったのです]
(あー、考え無しに使ったのは確かだわ、使用方法を確認しなかったのは失敗だったなぁ)

   想定外の出来事に反省していると、受付カウンターの奥にあるドアが勢い良く開け放たれた。

「この異様な気配は何事だ!」

   ドアの向こうからそう言って勇ましく現れたのは、三十代半ば程のカッコイイおじさん。身長は百八十センチ程で引き締まった肉体を持ち、ウェーブのかかった髪をオールバックに纏めた精悍な顔立ち。真剣な眼差しで部屋の様子を窺っていいるが、惜しむらくはその両足が小刻みに震えていた。
   腰を抜かすのは耐えたが、【威圧】の影響を完全に抑える事は出来なかったらしい。
   俺の【威圧】で恐怖に震えていたギルド内の一同は、突然現れたのはおじさんに視線を向けると、一斉に無言で俺の方に視線を戻した。
   あー、確かにこの状況を生み出したのは俺だけど、何かすっごい悪者を見るような視線を向けてくるのはやめて欲しい。
   苦笑いを浮かべながらポリポリと人差し指で頬をかいていると、おじさんが視線を俺に向ける。

「……君が元凶か?」

   恐る恐ると言った感じておじさんが尋ねてくるので一応、コクンと頷いて見せる。

「かなりの実力者の様だが……何故冒険者ギルド内でこの様な暴挙を犯した」
「暴挙って……ただ単に喧嘩を売られそうになったので、穏便に済まそうと思っただけなんですけどね」
「穏便……?   これが君の穏便な対処なのか?」

   おじさんは周りの惨状を見渡し、信じられないといった口調で聞いてくる。

「ははっ、ただの【威圧】でこんなに周りに影響が出るとは思わなかったもので……」
「……【威圧】だと?   このドラゴンと対峙してるかの様なプレッシャーが、君の【威圧】の効果だというのか!」
「ドラゴンってそんな大袈裟な……」
「大袈裟なものか!   君は一体レベルいくつなんだ?」
「レベルって……答えないといけませんか?」

   俺が答えるのを渋ると、興奮気味だったおじさんは周りを見渡し、冷静になった様だ。一つ咳払いをした後にゆっくりと口を開く。

「……確かに大勢の前で言うべき情報では無いな。悪いが君、こっちの部屋に来てくれるか」
「分かりました」

   相手はギルドのお偉いさんだと思われる。変に反抗的な態度を取ってもロクな事は無いと思い、相手の要望に応じて今おじさんが出て来た部屋に入る事にした。
   俺を庇ってくれたバーのお姉さんに軽く頭を下げて、ティアと共に部屋に入ると、おじさんは、

「それから、この人にちょっかいをかけた冒険者は拘束しといてくれ、後で話を聞きたい」

   と、職員らしき人に言ってドアを閉めた。
   部屋の中は書斎の様な部屋だった。
   ドアを入って正面に窓を背にした重厚な机が置いてあり、左手の壁際には壁いっぱいの本棚。右手にはテーブルとテーブルを挟んでソファが二組置いてあった。
   おじさんが座るように俺達に進めながらソファに座ったので、ティアと一緒におじさんの向かいに座る。

「さて、自己紹介がまだだったな。俺はこの冒険者ギルドのギルドマスター、イルム・ウースだ」
「俺はヒイロ。こっちはティアです」
「んっ」

   俺がティアの紹介をすると、ティアは軽く手を上げ簡単にイルムさんに挨拶する。
   だから目上の人に対する敬意を……
   俺がティアの対応に軽く目眩を覚えていると、イルムさんは俺達を交互に見やった後、俺に視線を戻し軽く頭を下げた。

「先程は不躾な質問をしてすまなかった」
「……あっいえ、それは別に気にしてませんので……」

   いきなり謝罪から始まるとは思わなかったので、少し驚きながら答えると、イルムさんはニコッと人懐っこい笑みを浮かべた。

「いやぁそれは良かった。それで君達は見ない顔だが、一応、ギルドカードを確認させてもらってもいいかな?」
「ギルドカード?」

   聞きなれない言葉に小首を傾げると、イルムさんが訝しげな表情になる。

「まさか、冒険者ギルドに登録してないのかい?」
「はい。でも知り合いはいるので俺達の事はレリックさんかフロラインさんに確認してもらえば……」
「なにーーー!」

   イルムさんが俺達の事を怪しんでるのではないかと思い、レリックさんかかなねぇに身元を保証してもらおうと名前を出したんだけど……イルムさんは目を見開いて絶叫に近い大声を張り上げた。

「何事ですか!」

   イルムさんの声を聞きつけ、職員のお姉さんが慌てた様子で部屋に入ってくる。イルムさんは職員が入って来たのを確認すると、平静を装い、手の平を職員に向けてなんでもない事をアピールした。

「いや、すまない何でも無いんだ」
「そうですか?   随分と大きな声をお出しになっていた様ですが?」
「はははっ、ちょっと驚く事があってね。いやいや、すまなかった」
「……そうですか」

   小首を傾げながら納得のいってない様子で、職員はそう答えて部屋から出ていった。
   職員が出て行くのを確認したイルムさんは、すぐさま身をこちらに乗り出し、目を見開きながら口も開く。

「それでレリックさんとフロラインさんというのは、やはり首都ファルムのギルドマスター、レリック殿と冒険者ギルド総統のフロライン様の事か?」

   凄い剣幕で聞いてくるのでコクンと頷くと、イルムさんは脱力したかの様にソファの背もたれに身を預け、天を仰いだ。

「そうか……まぁ、一応確認はしておこう」

   そう呟くとイルムさんはヨロヨロと立ち上がった。

   
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