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第4章 超越者の門出編
第72話 消えた冒険者と少年少女冒険者……ティアさんあんまりトイレを我慢すると身体に悪いですよ
しおりを挟む「では、そちらの方の調査もお願いします」
『ええ、博貴殿達がこちらに来るまでには報告できる様にしておきますよ』
「ははっ、三日後にはそちらに行けると思いますが大丈夫ですか?」
『博貴殿は随分とのんびりした旅がお好きの様ですからね。本当に三日後に着くのであれば、調べておきますよ』
ちょこっとレベル上げしてて出発が遅くなっただけなのに、酷い言われ様だ。こうなったら意地でも三日で首都に行ってやろうじゃないか!
別に約束している訳でもないのに、旅の行程が遅い事を遠回しに皮肉ってくるレリックさんを相手に密かに闘志を燃やしていると、再び後ろからローブの裾を引っ張られる。
「ん?」
「……ただいま」
振り返ると、いつの間にか部屋に入って来ていたティアが、とても清々しい顔で俺を見上げていた。
いつの間に部屋に入って来たんだろ? 隠者のローブのフードを被られると、俺でも集中しないと気配が分からないんだよなぁ。しかし、随分とスッキリした顔をしてるな……トイレの断りを入れてきた時は随分と思いつめた顔をしてたけど……そんなに我慢してたんだろうか? そんなに切羽詰まる前に行く様にしなさいと言いたいけど、セクハラになっちゃうよな、多分……それやっちゃうと【共に歩む者】の三人にネチネチ責められるんだよなぁ……
『どうしました? 博貴殿』
そんな事を考えてると、通信球の向こうからレリックさんに声をかけられ、我に返る。
「ああ、すいません。何でもないんです。では、首都で再会という事で……」
『ええ、お待ちしてますよ』
「大変です!」
通信球が切れると同時に、慌てた様子の職員がノックも忘れて部屋に入って来た。
「そんなに慌てて一体どうしたというんだ」
いままでおろおろと部屋の中を歩き回っていたイルムさんが、顔をキリッとさせて職員に対応する。
「拘束していた冒険者四人が忽然と姿を消しました!」
「なにぃ! 見張りは付けてなかったのか!」
「申し訳ありません。あの部屋から外に出るにはカウンター裏を通るしかないので、近くには見張りを置いてなかったんです」
「……それで奴等を見た者はいないのか?」
「はい。カウンターの職員や、ギルドに来ていた冒険者達にも確認しましたが、誰も見ていないと……」
「そんなバカな……」
職員の報告内容に一瞬呆然としたイルムさんだったが、直ぐに気を持ち直したのか俺の方に振り向く。
「申し訳ない。ヒイロ殿に絡んだ冒険者が逃げてしまった様だ」
イルムさんはそう言いながら頭を下げる。
「いえ、俺の方としては別に構わないのですが……」
「そうか、そう言ってもらえると有難い。此方としても捜索し、見つけ次第何らかのペナルティーを課すつもりなので、それで彼等の行いを許してやってくれーーステリィー君」
テキパキと俺にそう説明すると、イルムさんは入って来た職員の方に視線を戻す。
「直ぐに街全体を捜索する手配をしてくれ」
「はい!」
イルムさんに指示され、直ぐに行動に移す為に部屋を出て行く職員さん。そして、部屋に俺達とイルムさんだけになると……
「申し訳ございません!」
イルムさんが突然の土下座。その顔は今にも泣きそうになっていて、ついさっきまで職員にテキパキと指示を出していた人と同一人物とはとても思えない情け無い風体を曝け出していた。
「まさか総統やレリック殿のお知り合いに無礼を働いた輩を取り逃がすとは……本当に……本当に申し訳ありませんでした!」
「えっ……いやいや、さっきも言いましたが、俺は気にしてませんから顔を上げて下さい!」
額を床に擦り付けて必死に謝るイルムさんを見て、こっちもオロオロとしてしまう。
「……本当ですか」
「ええ、本当に気にしてないですから、土下座なんか止めて下さい」
泣く子をあやす様に声色を優しくし、イルムさんに語りかける。
何でこんな慎重に語りかけないといけないんだ……この人、部下を前にしてる時と人格が違いすぎる!
俺が少し困った表情を見せていたのだろうか、俺の顔色を窺っていたイルムさんが、また泣き出しそうになる。
「うわぁぁぁっ! やっぱり許してないんだ。首都に行って総統に私の失態をある事無い事喋る気なんだー!」
また取り乱し始めたイルムさんを、俺は再び宥めに入った。
⇒⇒⇒⇒⇒
「あー……酷い目に遭った……」
冒険者ギルドを出て、俺は深い溜め息を吐いた。
あれから、イルムさんに平常心を取り戻させるのに三十分程かかってしまった。辺りはもうすっかり暗くなってしまっていて、昼と違って仕事を終えた鉱夫や、冒険者の酔っ払いの姿がやたらと目立っている。
「ちょっと話を聞きたかっただけなのに、えらい時間と労力を使ってしまった……」
「あっ! あそこにいるぞ」
冒険者ギルドの入り口で今日ここに寄った事を少し後悔していると、右手の方から大声が聞こえくる。
何事かとそちらの方に顔を向けると、十二、三歳位の少年少女が五人程、ダッシュで俺の方へと向かって来ていた。
「おおっ!?」
こちらに向かってくる子供達の迫力に驚いていると、子供達はあっという間に俺とティアを取り囲む。
「なぁ、あんたさっきギルドの中で皆を怖がらせた人だろ」
子供達の中の一人、俺の正面に陣取った少年が俺を見上げながらそんな事を聞いてくるが、とても人にモノを聞く態度には見えない。
こいつらさっき冒険者ギルドに居た子供達か? 貧しい鉱夫の子供って聞いたけど、礼儀なんてもんは教わってないんだろうなぁ。
「ああ、そうだが、なんか用か?」
礼儀を教わってないとはいえ、敬語を使う努力もしない様な奴等に丁寧に対応する義理は無い。俺は不機嫌にそう答えると、声をかけてきた少年がそんな俺の態度を無視してニヤっと笑う。
「なぁ、あんた、強いんだろ。美味い儲け話があるんだが乗らないか?」
「儲け話~?」
思いっきり胡散臭い話に眉をひそめると、少年はここぞとばかり話をまくし立てる。
「ああ、この町の外れに新しいダンジョンが出来たんだ! それがここだけの話、凄いお宝が隠されているらしいんだよ! なぁ、一緒に行ってくれよ。あんたみたいな強い人が一緒に行ってくれれば心強いんだ」
「………………」
少年の話を聞いて、俺は無言でこめかみを押さえた。そして暫し沈黙した後に少年に一言言ってやる。
「お前達……馬鹿か?」
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