理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第73話 ダンジョン……とっても怪しいです

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「馬鹿ってどういう事だよ!」

   俺に馬鹿にされた少年は、顔を真っ赤にして大声で怒鳴った。子供ながらに精一杯ドスを効かせている様だが、虚勢を張っている子供にしか見えないから全く怖くない。
   ここで俺も声を荒げたら大人気ないよな。
   ティアの手前、余裕のある大人を演じたい俺は一つ溜め息を吐いた後、諭す様に子供等に話しかける。

「いいかお前達、その新しいダンジョンに凄い宝があるなんて、一体誰が言っている?」
「誰って……皆、噂してるぞ」

   俺が静かに話しかけたせいか、怒鳴った少年は肩透かしを食らって尻窄みに答える。

「皆ねぇ……じゃあ、そのお宝というやつを確認した奴がいると思うか?」
「そりゃそうだろ。こんだけ噂が広まってるんだ、見た奴がいるに決まってる!」

   まだ見ぬ宝に興奮してるのか、今度は鼻息荒く答える少年。

「ふ~ん……じゃあさ、その見た奴はなんでその宝を取って来なかったんだ?」
「えっ!   ……そりゃあ……何か凄い罠とかがあって取れなかったとか……」

   やっぱりその事に気付いてなかった様で、少年はしどろもどろに答える。

「あのなぁ、だったら見たそいつは情報なんて流さずに、罠を解除する準備をしてまた宝の所に行くに決まってるだろ」
「うっ、それは……」

   痛い所を突かれて言葉が詰まっているが、その目には諦めの色は見えない。そんな少年を見て、俺は内心溜め息を吐いた。
   あー、こいつ絶対ダンジョンに行くわ……んー、どうしょうかなぁ……
   俺が断った後に少年達のみでダンジョンに行き全滅。自業自得だけど、寝覚めは悪いな……それにしても、そのダンジョン一体何なんだ?   こんな噂が流れてるって事は、誰かがそのダンジョンに人が行く様に仕向けてるって事だよな……
   そんな事を思いながらも一応、少年達を引き止める為に忠告はしておく事にする。

「そんな虚言に惑わされないで真面目に働けよ」

   完全に返す言葉を失った少年の肩に手を置き、捨て台詞を残して俺はその場を後にした。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

〈マスター、やっぱり動きました〉

   まだ日も登らなぬ早朝も早朝。俺はトモの念話で目を覚ました。

「あー、やっぱり行ったか」

   まだ重い瞼を擦りながら、上半身を起こしてトモに確認する。

〈はい。今は町の西門の方に向かっていますね〉
「分かった」

   トモの報告を聞き、俺はベットから降りた。
   冒険者ギルドの前であった少年達と別れる時、俺は少年の肩に触り【地図作成】のマーキングをしていた。そのマーキングの反応が、こんな早朝に動いているのだ。そうなると、考えられる可能性は一つだわな。
   全く、人間の欲というのは度し難い。嘘だと分かっていても『もしかして』という考えが頭をもたげる。これが経験を重ねた大人なら疑心が勝り躊躇もするだろうが、怖いもの知らずの子供は、考えるよりも先に行動してしまう様だ。

[あの少年達を助けるのですか?]

   外出の準備をしていると、アユムが念話で確認してくる。

「いや、それは状況次第ってところだな」
[と、言うと?]
「ふふっ、誰かが胡散臭い噂を流してまで人を引き込もうとするダンジョンに興味が湧いてね。ガキどもを助けるとしたら、そのついでだよ」
[だったら始めから、彼等の申し出を受ければよかったじゃないですか]
「誘い方が気に入らなかったんだよ」
[そうですか……で、ダンジョンに興味を持ったと……分かりましたそう言う事にしておきましょう]

   本当にダンジョンにはちょっと興味があるのに……
   アユムの含みのある言い回しに、少し不本意な気分を味わいながら準備を完了して部屋を出ると、部屋の外にはティアが待っていた。

「ん、ひろにぃならこうすると思ってた」
「……そうか」

   何がこうなのか分からないが、アユムといい、ティアといい、俺をただのお人好しだと思ってないか?

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   宿を出て人気の無い大通りを西に向かう。
   日の出まで後、三十分ってところか……
   時間を確認しながら歩いていると、ちょうど西門を出る五人組の少年達の姿が見えた。どうやら西門の前で待ち合わせしていたらしい。

〈マスター、彼等はここで引き止めた方が良いのではないですか?〉

   トモの提案に俺は静かに首を横に振る。

「子供特有の根拠の無い自信なんだろうけど、あいつらは言ったくらいじゃ意志を曲げないよ。今日は引き上げるかもしれないけど後日また、ダンジョンに行くに決まっている。だから一回痛い目にあってもらわなきゃ」
《じゃあ、その現場はダンジョンの中だ》
「そういう事になるな」

   どこか楽しげなニアの言葉に同意して、【忍ぶ者】で気配を消しつつ少年達の後を追った。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   目的のダンジョンには町を出てから二十分程で到着した。場所的には町の裏にあった鉱山の麓にある森の中。その森の中のひらけた場所に、ひっそりと地下への入り口は口を開けていた。
   森にはモンスターも出たが、ホーンラビットやスライムなどで、はっきり言って初心者冒険者でも十分倒せるレベル。ダンジョンの入り口も目立つ訳ではないが、視界に入ったらまず見逃さないといった感じだ。

「……誰でも入って下さいって立地条件だな」
[そうですね。このダンジョンを作ったダンジョンマスターは、明らかにダンジョンに人が入るのを望んでいますね]
「あっ、やっぱりあのダンジョン、誰かが作ったんだ」
[おそらくは……あの少年も『最近出来た』と言ってましたし、あの様な場所にあるダンジョンが今まで見つからなかった、というのは考えられません]

   まっ、そりゃあそうたわな。でも……

「ちなみにダンジョンって、どうやって作るの?」
[スキル【迷宮を作りし者】を取得すれば作れますが、お勧めはしません]

   気になって聞いてみると、アユムからそんなお言葉が返ってくる。
   いつもは有効なスキルなら取得して欲しいと言ってくるアユムが何故そんな事を言うんだ?

「何でだい?」
[【迷宮を作りし者】を取得しますと、それ以降、取得出来るスキルがダンジョン製作や作ったダンジョンに影響する物に偏ってしまうのです]
「あー、それは確かに嫌だな。それで、そんなスキルを取得した奴が、あんな所にダンジョンを作ったと……」
《ぼくだったら胡散臭過ぎて入らないなぁ》
「だよなぁ……ねぇ、ダンジョンマスターの目的は何だと思う?」
〈普通ならダンジョンを作る目的は、大事な物を守ったり、何か世に出したくないモノを封じるためってところですけど……〉
「どっちも無さそうだよなぁ」
〈ですよね〉
「ん、入ってく」

   【共に歩む者】の面々と胡散臭いダンジョンの胡散臭さについて談義してると、ティアがダンジョンに入って行く少年達を指差す。

「あ~あ、躊躇無しかよ。少しは疑ってもらいたいねぇ」

   何の疑いも持って無さそうな少年達に呆れながら、俺とティアは少年達を追ってダンジョンに足を踏み入れた。
   
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