理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第78話 ファルムの冒険者ギルド……またですか

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   『風の国』ファルテイムの首都ファルムは、王城を囲む様に出来た城下町だ。必然的に街の周りには高い城壁が設けられており、街に入るにはその入り口である門でチェックを受ける必要がある。
   という訳で、俺とティアは門に並ぶ長蛇の列を少し離れた場所で呆然と見つめていた。

「これ、街に入る度にこんなに時間がかかるの?」

   一番後ろに並んだら、間違いなく三時間はかかりそうな列を見て、俺は少し呆れながら呟く。

[いえ、あれは他の町から来ている商人の行列です。多くの荷物を持ち込む商人は荷物のチェックがあるのでどうしても時間がかかるのです。旅人や冒険者などは、違う門から入ります]
「えっ?   職種で入る場所が違うの?」
[はい。多くの荷物を持つ商人は商業地区に直接通じるこの南門。旅人や冒険者、ここの住人などは居住地区に通じる西門。そして、貴族は貴族街に通じる北門。と、職種によって入る場所が違います。勿論、旅人や冒険者が南門から入っても問題はありませんが、わざわざあの様な長蛇の列に並ぶ物好きはいないでしょう]
「だろうな……で、旅人の俺達は入る時にどんなチェックを受けるんだ?」
[主に犯罪歴や荷物のチェック、それと身元の確認でしょうか]
「身元の確認?   それってどうやって証明するの」
[何かしらのギルドに入っていればギルドカードが身元証明になりますが、それがない場合は出身地を確認し、通信球で現地に確認という方法がとられている様です]
「……俺、出身地ないじゃん」
「ティアはエルフの郷」

   そうだよね。ティアも確認のしようが無さそうだよね。

「なんか厄介事が起こる気しかしないんだけど……何で首都だけこんなに出入りが厳重なの?」
〈やはり、王のお膝元だからではないですか〉
《怪しい奴は入れられないよね》

   トモとニアの言う事も最もだとは思うけど……

「ハタから見たら俺達って異様に怪しいよね」
《出生地不明だもんね。間違いなく足止めされるよね。そして根掘り葉掘り聞かれてボロが出る》

   ニアが楽しげに語る内容は本当になりそうで怖い。

「こんな事ならルティールの町で冒険者ギルドに登録しとくんだった」

   後悔しても後の祭り。健一達と一緒に登録しようと思ってたから登録しなかったのだが、まさかそれがこんな面倒な事になるとは……

「仕方がない。忍び込むか……」

   そうと決まれば即行動。
   俺達は人目のつかない門と門の間辺りに移動した。
   城壁の高さは約七、八メートルといったところで、偶に警備の兵が城壁の上を歩いて行くのが見える。

「うん、この程度の警備なら簡単にぬけられるな」
「ん、余裕」

   警備の兵が通り過ぎて少し離れたのを見計らい、ティアと視線を合わせて一度頷き合った後、俺達は【忍ぶ者】を発動させて城壁の上に時空間移動をする。
   城壁の上に移動した後、身を屈め城壁の内側を確認すると、そこは普通の家々が並ぶ住宅地になっていた。

「居住地区ってやつか?   人気が無いから忍び込むには好都合だな」

   【気配察知】を発動すると、家の中にはちらほら反応があるが、城壁の下辺りは裏通りになってるらしく、人の気配は無い。
   それを確認した俺達は城壁を飛び降り、一気に裏通りを駆け抜けた。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

「ここか……」

   五角形の盾にバッテンに剣が交差する看板を見つけ、足を止める。
   俺の最終目標、健一達との合流を果たす為の拠点となる予定の場所ーーファルムの冒険者ギルド。
   俺は久しぶりに期待に胸を躍らせながらその扉をゆっくりと開けた。

「おう、見ない顔だな」

   ……またですか。何?   冒険者ギルドは新顔を見かけたら取り敢えず絡むのが恒例行事なんですか?
   扉を開けると、まるで待ってたかの様にそこに立っていた二十代後半位の男に絡まれ、俺は盛大にため息を吐いた。

「ほぉぉぉ、人の顔を見てため息たぁ、随分肝が座ってるじゃねぇか。一体、どれ程のランクならそんな態度がとれるんだ?   参考までに教えてくれや」

   あんたは昭和のヤンキーですかと突っ込みたくなる程、男は腰を曲げ、下から俺の顔を見上げる様にガンを飛ばしながらいちゃもんをつけてくる。
   本当に何だろうね……冒険者ってこんなんばっかりじゃないだろうな。健一が憧れた生き方って、こんなんじゃないよね!

「まだ冒険者じゃないんで、ランクはないです」

   頭痛がしてる様な気がして、こめかみを押さえながら正直に答えると、男は一瞬、キョトンとした顔になり、その後に盛大に笑い出した。

「ぎゃははははっ!   聞いたか皆、こいつ初心者どころか素人のくせに、俺にこんなふざけた態度を取ったらしいぜ!」

   男の言葉に触発され、ギルド内に居た冒険者達が一斉に笑い出す。中には何をバカな事をしてるっ感じで呆れ顔の人もいたが、大部分は笑っていた。
   ホント冒険者って人種は……
   一瞬、冒険者という人種に絶望を感じたが、ふと、考え直す。
   もしかして、ここに居る連中はランクが低いのかな。冒険者としても、人としても。
   ランクが高い崇高な精神を持つ冒険者もいるかもしれない。笑ってない人もいるし、そうだ、そうに違いない。
   そう思い直し、取り敢えず目の前の人としてのランクが低い冒険者の対応をする事にした。
   ルティールの町の二の舞は踏まない。【威圧】は封印し、実力行使で対応する事にしよう。
   俺は目の前で笑う男の胸に軽く手を当てると、そのまま男を押してやった。
   アーツは使ってない。ただ単に男を押しただけなのだが、男は後方に三回転程転がってゴンッと大きな音をさせた後、仰向けになって止まる。
   ……ちょっと後ろによろけさすだけのつもりだったのに、男の足腰は思いの外弱かった様だ。
   その様子を見て笑っていた冒険者達がその笑いを止め、ギルド内に静粛が訪れた。そして、代わりに充満し始める無数の殺気。

「おい、てめぇ、何してんだ!」
「余所者がいい気になってんじゃねえよ!」
「五体満足に帰れると思うなよ!」

   次々に飛び交う罵声に、また、お前ら昭和のヤンキーかよと突っ込みたくなるのを堪えていると、ギルド内に罵声を打ち消す大声が響き渡った。

「お前ら、喧しいぞ!」

   罵声と喧騒は綺麗に消え、その場にいた全ての者の視線が大声の主の元に集まる。
   そいつは、ギルドの奥のバーに、こちらに背を向けて座っていた。
   結構な巨体の男で、フルプレートを着ている為にその背中が更にに大きく見える。

「ギャレットさん……」

   冒険者の一人が、その男の名を恐る恐るといった感じで呼ぶと、ギャレットと呼ばれた男はこちらを振り向かずに話し始めた。

「新人教育は構わんが、取り敢えずはやられたそいつにやらすのが筋じゃないか?」

   これは新人教育だったのか……新人いびりの間違いじゃなく?   っていうかあんた止める訳じゃないんだな。
   何となく納得のいかない展開に顔をしかめていると、数人の冒険者が先程俺が突き飛ばした男の元に駆け寄り、男の肩を揺さぶったり、頬をペチペチと叩いたりした後、互いに顔を見合わせて首を左右に振った。

「ダメです。こいつ、気絶してます」

   どうやら突き飛ばした時に後頭部を打ったらしく、男は意識を失ったらしい。全く、戦いで生計を立ててる奴があのくらい受け身を取れなくてどうする。

「……そうか」

   報告を聞いたギャレットは短くそう呟くと、ゆっくりと立ち上がった。

「まさかギャレットさん自ら……」
「はははっ、てめぇ、死んだぞ!   Sランクのギャレットさんが相手なんだからな」

   周りの有象無象がギャレットコールを奏でる中、ギャレットはゆっくりとこちらに振り向いた……ってあれ?
   その顔は何処かで見たことがあった。
   何処だったかと顎に手を当てて考えていると、ギャレットの顔が俺達を確認した途端、どんどん青ざめていく。
   ん?   あの怯えた顔、やっぱり見覚えが……
   もう少しで思い出しそうな所で、ティアが服の裾を引っ張る。

「どうしたティア」
「んっ、ティアの足跡」

   ティアの指差す方を見てみると、ギャレットのフルプレートの胸元に小さな足型の凹みがあった。
   それで思い出す。
   あっ、こいつかなねぇに付いて来て、ティアに蹴られたあの口だけのバカだ!
   そう思い至った瞬間、ギャレットはその場であの時のかなねぇを彷彿させるジャンピング土下座をかました。

   ーーーーーーーーーー

   とうとう、お気に入りが1000を超えました!
   入れて下さった方々ありがとうございます!
   いやー、途中、おっさんドーピングもあったとはいえ、投稿一週間でお気に入り3、順位600位以下で始まったこの作品がここまで来れたのは皆様のお陰です。本当にありがとうございます。
  やっぱり、お気に入りが4桁いくと凄いテンションが上がりますねぇ。
   おっさんは……まぁ……不測の事態にワタワタして浮き足立ってるうちにあっという間に超えてしまったので全く実感が無かったんです。
   兎に角、これからもコツコツ書いて行きますのでよろしくお願いします。
   神尾優でした。

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