理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第86話 懐かしき人……相変わらずテンション高いですよ

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「あっ、これ偽造ギルドカードです」

   次の日の朝。俺とティア、かなねぇとレリックさんでコタツで朝食を取っていると、レリックさんがそう言って金色のカードを俺とティアに渡してきた。
   大きさは十センチかける七センチ程。本当の純金で作ってあり、表面には俺の偽名であるヒイロの名と、八十三という適当なレベルが表記してあった。

「偽造って……発行元であるギルドが作った物に偽造もなにもないじゃないですか」
「いやいや、そのカードに載っている情報は嘘八百ですから、立派な偽造ですよ。ちなみにランクはAランクにしておきました」

   平然とそう言ってのけ、呑気に食後の紅茶をすするレリックさん。

「そう言えばひろちゃん達って、どうやってこの街に入ったの?   身分証が無いと中々入れてくれなかったでしょ」
「えっ、面倒臭い事になりそうだったから、外壁を超えて来たけど」

   同じく食後の紅茶を飲んでいたかなねぇが聞いてきたので、さらっと説明すると、かなねぇがギョッとした顔をする。

「……不法侵入じゃない。出る時は門から出ないでね。入った記録がない人が出ようとしたら、大騒ぎになるから」
「分かった。一回出た後にこのギルドカードを使って入れば良いんだね」

   俺がそう答えるとかなねぇは安心した顔になり、再びまったりと紅茶を飲み始める。

「そうしてちょうだい。この街、王都だけあって人の出入りに厳しいから。ところでひろちゃん、これからどうするつもり?」
「どうするって?」
「けんちゃん達と合流する準備をするのは分かってるけど、具体的にはどうするのって事」
「ああ、その事か……先ずは情報収集と行きたいところだけど、俺のこの街でのツテって一人しかいないんだよね」
「レリクス卿ね……私達の仕入れた情報では、今日、レリクス卿は自宅に居るはずよ。自宅の場所はーー」

   ハッスル爺さんの自宅の場所を澄ました顔で聞きながら、俺は内心小首を傾げる。
   ……爺さんの行動は把握済みか……俺があの爺さんと接触するのを分かっていて、始めから爺さんのスケジュールを探っていたか?   それとも、ギルドは国の要人の動向を常に探っているのだろうか?
   まぁ、この辺の事はいくら勘繰っても仕方がないし、ここは素直に感謝しておこう。

「そうなんだ。だったら、今日はレリクス卿に会ってみようかな」
「アポ無しで行くつもり?   普通は会えないわよ」
「まあ、会えなかったら手段はその時に考えるよ」
「……無理はしないでちょうだいね」
「ん、了解」

   ジト目で忠告してくるかなねぇに軽く答えて、俺はティアの方に顔を向ける。

「ティア、今日は一人の方が動き易いからお留守番しててくれるかな」

   俺にそう言われたティアは、心配そうに一瞬眉間に皺を寄せたが素直にコクンと頷いてくれた。
   俺は心配性のティアの頭を撫でた後で、かなねぇに『じゃ、ティアを宜しく』と言いうと、『あのねぇ、私達だって暇じゃないのよ』と文句を垂れるかなねぇにヒラヒラと手を振りながら部屋を出た。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

[マスター、屋敷の周りに六人、隠密行動を取る者達を確認しました]

   アユムにそう警告されたのは、貴族街の奥にある爺さんのでっかい屋敷を、二軒手前の屋敷の屋根の上で視認した時。何故屋根の上にいるかというと、貴族街の道を冒険者の様な格好で歩くのは目立つからだ。
   貴族からの依頼でも受けているのか、そういう連中がいない訳ではないのだが、それでも歩いていると奇異な目で見られるのは間違いない。だから俺は、【忍ぶ者】を発動して人目の付かない道無き道を進む事を選択していた。

(うん、気付いてるよ。しかし、監視者が居るなんて爺さん、なんかしたのかな?)

   屋敷の四つ角と正門、裏門に配置された監視者に気を配りながら、俺はアユムに答える。

[レリクス卿の立場から考えれば、監視を命じたのは宰相だと推測出来ますが、理由までは流石に情報が少な過ぎて分かりません]
《いっそ、一人引っ捕まえて口を割らせれば?》
(おいおい、そんな事をしたらどうやっても足がつくだろ)
《一番手っ取り早いと思うんだけどなぁ》
〈ニア、また貴女は……そんなの、得られる情報よりもリスクの方が大きいでしょ〉

   ニアの物騒な提案にトモがダメ出しをする。俺はそれを聞きながら苦笑いを浮かべて更に屋根伝いに爺さんの屋敷に近づくと、屋敷の角に身を隠す監視者の内の一人を視界に捉えた。

「えっ!」

   その姿を見て思わず驚きの声を上げてしまい、慌てて自分の口を手で覆う。

[どうかしましたかマスター]

   俺が動揺を見せてしまったため、アユムが緊張した口調で確認してきた。

(いや、ちょっと知り合いの姿を見ちゃったもんで、少し動揺しただけ)
[知り合い?   ……私が知らないマスターの知り合いという事は……まさか!   勇者ですか?]
(そう。なんであの人は爺さんの監視なんて仕事してるんだろ。取り敢えず接触してみるか)
[大丈夫なんですか?   井上の息がかかってるなんて事は……]
(それはないよ。あの人は信用出来る)

   俺は【忍ぶ者】を全開で発動させ完全に気配を消すと、その人の背後、数メートルの所に降り立ち素早くその背後に接近する。

「桃花さん、久しぶり」

   小声でボソッと呼び掛けると、桃花さんはビクッと全身を震わせた後で、全身を緊張で硬直させた。
   あら、怖がらせちゃったかな?   やっぱり気配を消して背後を取ったのは不味かったか。でも、あまり大きなリアクションを取られると、他の監視者に気付かれる恐れがあるんだよな。

「誰?」

   張り詰めた声で短く訪ねてくる桃花さん。その隙の無い立ち姿は、俺が隙を見せたら振り向きざまに斬りかかる気満々なのが目に見えて分かる。
   あー、桃花さん、感情欠落のふりモードか……だよね、俺がもし井上や宰相の手の者なら感情を表す訳にはいかないか……
   いつまでも桃花さんに緊張を強いるのは申し訳ない。さっさと警戒心を解いてもらおう。

「俺だよ、博貴だよ桃花さん」
「……えっ!」

   驚いた顔で振り向いた桃花さんは、その顔をみるみる笑顔に変えた。

「うそ!   本当に博貴君じゃない!」

   小声で喜びを最大限に表現する桃花さん。思わず抱きつかれそうになったのを、他の監視者に気付かれると押しとどめる。

「ほんと立派になっちゃって……おねぇさん、背後を取られるなんて初めてだよ」
「桃花さんも相変わらずの様で」

   監視態勢のまま、背後の俺に小声で感情豊かに話し掛けてくる桃花さんに対し、俺は爺さんの屋敷の壁に張り付き、完全に気配を消した状態で答える。

「そうでもないわよ。普段、感情を出さないせいでおねぇさんフラストレーション溜まりまくりで限界寸前よ!   でも、博貴君が来たって事は、例の約束の日は近いのね」
「ええ、そのつもりです」
「ねぇねぇ、一体いつなの?」

   声だけでワクワクしてるのが伝わって来る桃花さんに、俺は声のトーンを落として今考えている事を伝える。

「俺も出来るだけ早くとは思ってるんですけど、出来れば、この国には桃花さん達が死んだと思わせた状態で抜けてほしいんですよね」
「……『風の国』と対立する様な事は避けたいという事ね」

   俺の考えを聞き、桃花さんも真面目な声色で答える。

「そうです。今、そのチャンスを探しているんですが……」
「それ、待ってると取り返しのつかない事になっちゃうかも……」
「どういう事です?」
「『風の国』は戦争を起こす気なのよ」
「その準備をしている事は知ってましたが、まだ先の話では?」
「それが、そうでもないのよねぇ……」

   桃花さんはうんざりといった感じで、国の内情を話し始めた。

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