理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第85話 今後の密談……ああ!問題が多過ぎるわよ!

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   Sied   香奈美

「ひろちゃんに『風の国』をーー宰相を敵視させる事には成功したわね」

   ひろちゃんとティアちゃんが準備していた部屋に向かった後、私と龍次さんは、おこたに入ったまま密談をしていた。

「そうですねぇ……でも、我々が『水の国』の内情を知っている事を知られたのは失態でしたね」
「ぐっ……」

   龍次さんの辛口コメントが私に突き刺さる。

「だって仕方がないじゃない。ひろちゃん、私の癖を知り尽くしてるんだもん。それに、ひろちゃんに隠し事をすると、見抜かれるんじゃないかって緊張しちゃうのよ」

   昔からそうなのよね。ひろちゃんは私がーーううん、私達が、なにか悩み事や隠し事を抱え込んでいると、さり気無く探りを入れてくる。昔はそれが頼もしくも、嬉しくもあったけど、今じゃ恐怖しか感じないわね。

「百年近くこの世界で巨大ギルドの総統をなさっているのですから、若造に萎縮しないでもらいたかったですね。それに、嘘をつく時の癖位は消してもらいたかった」
「そうね……私も場数は踏んでるから、上手くやれると思ったんだけどねぇ……」

   かつてのひろちゃんは私の一番の理解者。そして、私が一番信用してた弟分。私が『井上の情報を教えてあげたら』と言った時のひろちゃんの慌てよう、私が若気の至りで使ってた人心掌握術にも気付いてたみたいね……仕方なく、してやったりって顔で笑ってやったけど、内心ヒヤヒヤよ。
   全くやり辛い!

「しかし、これで『水の国』の内情に関する頼み事をする時は、頼みづらくなりましたね」
「そうね。私達も『ついさっき知りました』って方が頼みやすかったんだけどねぇ……仕方がないから、その時は正攻法で頼みましょう。ひろちゃんも『風の国』が優位に立つ様な事なら、阻止したいと思うでしょうから断りはしないでしょう」
「内容が内容ですから、大分、渋られそうですけどね。それよりも、『闇の国』の方は大丈夫なんですか?」
「あー……あっちも面倒なのよね……でも、切迫詰まってる訳じゃないから、『水の国』の方が解決した後にまた、ひろちゃんに頼む事になるかな……あー全く!   各国の首都のギルドマスター達を動かせれば、ひろちゃんに頼る策を使わずに済むのに!」

   私が苛立ってガシガシと頭を掻くと、龍次さんは自分には関係無い悩みとでも言う様に呑気にお茶を口に運ぶ。
   もう!   本気で問題解決の為に頭を捻ってくれてるのでしょうけど、少しは態度に出して欲しいわね。

「問題解決の為にどの位の時間を要するか分からない以上、首都のギルドマスターを問題解決に当てる訳にはいかないですからねぇ。それに、もし『風の国』が戦争を起こす事になったら、『調停者』が出張ってくる可能性もありますし……」
「あー……あいつらね……」

   嫌な名前を聞いて、私はおこたの天板に突っ伏す。

「そうなってしまうと、彼奴等に博貴殿の存在がほぼ、確実に知れてしまいます。出来ればそれは避けたいのですよねぇ」
「確かに!   そうなったら間違いなくあいつら……下手したら、あの澄まし女自らひろちゃんに接触してくるかも……」
「その場合、博貴殿はあちらに付くと思いますか?   付き合いの長い香奈美殿の意見が聞きたいのですが……」

   真面目な顔で龍次さんに問われ、私は上半身を起こして真剣に考える。

「んー……ひろちゃんが『調停者』に付くことは無いと思うわ。ひろちゃんは基本、けんちゃんとヒメちゃん、それに今はティアちゃんもかな……とにかく、その三人の為ってのを第一に行動する筈だから、けんちゃんとヒメちゃんがこっちに付いてくれれば、間違いなくあっちに付くことは無いわ。でも……」
「でも、何です?」
「もしも……本当~にもしもよ!   ひろちゃんが、あの澄まし女の考えに共感する様な事があったら、個人的に手を貸す事はあるかも知れない……」

   あー、もう!   もしもの話でも、私の可愛い弟分があの澄まし女に共感するなんて……考えただけでも苛つく!
   私はそんな事は絶対に無いと思っていたけど、龍次さんの見解は違ったみたい。

「ふむ、共感……ですか。有り得ない話では無いですね」
「えーーー!   何でよ!   あの嫌味な澄まし女よ!   ひろちゃんがあんなのに共感する訳ないじゃない!」
「香奈美殿が『調停者』代表、西條花凛にどんな印象を持っているか大体想像がつきますが、ハッキリ言ってあの二人、よく似ていらしゃいますよ」
「……ひろちゃんとあの女が?   ……ぜっっったい有り得ない!」

   私が断固否定すると、龍次さんは、やれやれといった感じで肩を竦める。

「良いですか、あのお二人は道徳的に外れた者に嫌悪感を抱き、深謀をめぐらす事と人の心内を読む事を得意としている。間違ってますか?」
「ぐぬぅ~、そこは、確かに似てるかも……」
「更に、リーダーシップに長け、仲間思い。ただ、西條殿はその目を世界に向け、自分にも他者にも厳しい方。一方、博貴殿はその目を身内に向け、外の世界は二の次にしている。そして、自分には厳しい様ですが、身内には滅法甘い方ですね。ほら、重点を置いてる場所が違うだけで、本質は似てるではありませんか」

   確かにそうかも知れない。
   会ってそんなに時間もかけていないのに、よくもまあ、ひろちゃんの性格をそこまで分析出来るわね。でも、一つだけ間違ってるわね、龍次さん。

「ちょっと待って、ひろちゃんは完全に副官タイプよ。リーダーシップなんて……」
「ルティールの町から報告が入ってまして。一時期、博貴殿と行動を共にしていた素行の悪かった冒険者の子供達が、見違える様に礼儀正しくなり、更に他の幼年の冒険者にもその教育を始めたそうです……近い将来、荒くれ冒険者の巣窟だったルティールの冒険者ギルドが生まれ変わるかも知れないと、ギルドマスターのイルム殿が嬉しそうに申しておりました」
「……ひろちゃん……なんで幼年の冒険者の教育なんてしてるの?」
「さぁ?   なんだかんだ言って、博貴殿は甘い所がありますからねぇ。見捨てられずに成り行き、という所ではないですか?」
「ああ、あり得るわ。何かしら縁があるとほっとけないからなぁ、ひろちゃんは。あれで、自分では冷酷だと思ってる節があるのよねぇ」

   私がやれやれと首を左右に降っていると、龍次さんが『話が逸れました』と、話を戻す。

「とにかく、そういう訳で、博貴殿と西條殿の接触は避けたいところですね」
「ひろちゃんが上手く『風の国』が動く前にけんちゃん達を引き込んでくれれば、そんな心配をする必要も無くなると思うんだけど……」
「そうですね。いくら『風の国』でも、勇者が三人も抜ければ戦争を強行する事は無いでしょう」

   結局はひろちゃん頼みか……仕方がない。こっちでもけんちゃん達の周りの情報収集を強化してみますか。
   少しでもひろちゃんに恩を売れる様、私は龍次さんに指示を出した。

   ーーーーーーーーーーーーーー

   お気に入りが1200を超えました。
   入れて下さった方々、本当に有難うございます。
   いやはや、書き始めたばかりで、文章の組み立て方も分からずに、嫌がらせの様に物語の設定を無理矢理詰め込んだあの序盤で心が挫けなかった方が、こんなにいて下さるとはビックリです。
   本当に有難うございます。
   私も序盤の話を何とか直せないかと、何度かトライしたのですが、あの情報量を崩し、今の書き方で作り直すと、どうしても2、3話増える事になり、全く手が出せない状況でヤキモキしております。でも、いつか直したいなぁ……
   神尾優でした。
   
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