理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第108話 ダンジョン突入……変な所で凝るなぁ!

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「アレか……」

   森の中に突如現れる開けた空間。そう、あのネクロマンサーと出会った野原にそれは出現していた。
   空き地のほぼ真ん中にポッカリと開いた穴。アレがダンジョンの入り口なんだろう。
   ダンジョンの周りには、二十人程の鎧を着た騎士や、ローブを着た魔道士などが陣取っている。恐らく健一達のバックアップや動向の確認などをしているのだろう。

[マスター、あの者達の中に【地図作製】レベル5のスキル保持者を確認しました]

   野原の様子を、少し離れた茂みの影から【忍ぶ者】を発動して確認していると、アユムから報告が入る。

「成る程、【地図作製】で健一達をマーキングしてる訳か……でも、ダンジョン内に入られたら地図外になってマーキングが外れるんじゃないか?」
[あの者はその他に【精神分離】のスキルも持っています。このスキルは精神の一部を分離させ小動物などに憑依する事で、その小動物が見聞きした情報を得られるというスキルなのです。その小動物をダンジョンに進入させれば、ダンジョン内の地図を作る事が可能だと思われます]
「あのスキルにはそんな効果があったのか……取ってみようかな」
〈マスター、【精神分離】は分離させた精神のパーセンテージ分、能力値が下がってしまうので、あまりお勧め出来るスキルではありませんよ。【地図作製】を埋める程の情報量を得る為には、精神を三十パーセントは分離させないといけませんから〉

   便利なスキルじゃないかと思っていると、トモがすぐさまそのデメリットを説明してくれる。

「そうか、三十パーセントは痛いな。取得は要検討だな……ところで、【地図作製】レベル5の効果範囲ってどの位だっけ?」
[【地図作製】レベル5の効果範囲は五百メートルです。その範囲を外れれば、マーキングの効果は失われます]
「良し!   五百メートルならどうとでもなる。となると、後の問題はどうやってダンジョンに入るかだが……」

   どうしようか悩んでいると、ティアがチョイチョイと服の袖を引っ張ってくる。

「どうしたティア?」
「邪魔なら殺る?」

   可愛く小首を傾げながらそう確認してくるティアの頭を、軽く小突いてやる。

「物騒な事を言わないの!   それに、俺達がダンジョンに進入する形跡を残したく無いんだ。何とかあいつらに悟られない様に入らないと」

   そんなに強く小突いてないのに、小突いた頭を両手で押さえ、非難めいた視線を送ってくるティアにそう説明すると、ティアが『じゃあ、時空間移動』とブスッとしながら提案してくる。
   時空間移動か……奴らの気をダンジョンからそらせればそれも可能だな。
   良い提案をしてくれたティアの頭を撫でると、ティアはニヘラッと機嫌の悪さを吹っ飛ばして、だらし無い笑みを浮かべた。

「さて、じゃあ奴等の気をそらしますか」

   俺は意気揚々とそう呟くと、足元の拳大の石を拾い、数メートル先の茂みに向かって放り投げた。

   ガサッ!

「なんだ!」
「魔物か?!」

   突然の不自然な物音に、ダンジョンの周りにいる連中は騒めきつつその視線を俺が石を投げた茂みへと集中させる。

「今だ!」
「んっ!」

   俺とティアはその瞬間を見逃さず、【忍ぶ者】全開でダンジョン上部へと時空間移動。そのまま階段を地下へと駆け下りた。
   階段を降りきり、通路へとでたところで階段の上の様子を探ってみるが、俺達の進入が気付かれた様子は無い。
   取り敢えず進入成功にホッとし一息吐いたところで、俺は厳しい目付きで通路の先を見据えた。
   通路は暗闇に包まれていたが、俺やティアは【暗視】を持っている。魔物や井上に気取られる可能性がある明かりをつける必要は無い。
   ダンジョン内の壁や天井は岩肌をスパッと切った様な滑らかで凹凸の無い作りになっていた。明らかに岩をくり抜いただけだったルティールの町のダンジョンより凝った作りだ。
   もしかして作ったのは違う奴なのか?
   そんな疑問を抱きながら早足で通路を進む。
   もしダンジョンマスターがルティールの町のダンジョンを作った奴と違うのなら、最後のデストラップも無いかもしれない。
   そんな淡い期待を持ちながら、それでも心の奥底からジリジリと押し寄せる焦燥に駆られて早足で進んでいく。すると、行く手の角から何者かが現れる気配。
   咄嗟に身構えると、同じく気配を察知したのだろう、ティアが弓に矢をつがえながら俺の前に出た。
   あのー、ティアさん。前から思っていたんだけど、何で敵を察知すると俺の護衛の様な動きをするんですか?   獲物のタイプからすれば俺が前衛を務めるべきだと思うんですが……
   ティアの行動理念に一抹の疑念を持っている間に、角からその姿を現したソレにティアが矢を放つ。
   ティアの放った矢はそいつの側頭部に当たり、そのまま頭を粉砕した。
   現れたのはスケルトン。頭蓋骨を粉砕されたスケルトンはその場で崩れ落ちたが、その後に続いて現れたゾンビ、グールなどが俺達に気付きこちらに向かって来た。と、いっても慌てる必要は無いんだけど。
   俺の予想通り、向かって来たアンデット共はことごとくティアの弓の餌食となり、俺達に近付く前に全滅する。
   俺は地面に倒れ動かなくなったアンデット達を見下ろし、顎に手を当てた。

「出てくるのは前回と同じアンデット系か……ここのダンジョンマスターは以前の奴なのか?   それとも違うのか?」
[恐らくは同じ者だと思います]

   俺の疑惑にアユムが簡素な返答を返してくる。

「根拠は?」
[以前と同じく、ダンジョン全体に正体不明のスキルの発動を感じます]
「ダンジョン全体にスキルの発動……経験値を奪い取るアレか!」
[はい。以前の感覚と照らし合わせても、同一人物の発動したスキルと見て間違い無いかと]
「ちぃ!   だとするとやっぱり締めはあのデストラップの可能性が高いじゃないか!」

   言うや否や、俺は時空間収納から槍を取り出し走り出した。

「ちくしょう!   凝った作りにしてんじゃねえよ。一瞬、違う奴かと期待しちまったじゃねえか!」

   ダンジョン内を走りつつ、隣を涼しい顔で付いてくるティアと共に現れるアンデット達を蹴散らしながら【気配察知】を発動。しかし、アンデットではないと思われる気配は察知出来なかった。

「あれ?   何で健一達の気配が察知出来ないんだ?」
[恐らく、この階層にはいないと思われます]
「……だぁーーー!   一層だけじゃないのか。どんだけ凝りやがったんだよ!」

   本当にこのダンジョンは、前回のダンジョンはどんだけ手抜きしてたんだと思わせる程、バリエーションに富んでいた。
   先ずはトラップ。定番の落とし穴やかべの穴から飛んでくる弓矢を始め、鉄球や釣り天井など、中々の数が仕掛けられていた。まあ、全部見破って解除しているけど……
   次にモンスター。出てくるのは全てアンデットだが、人だけではなく、犬や猪などの動物型やゴブリンやオーク、オーガなどのモンスターのアンデットまで出現している。
   そして、ダンジョン自体も凝った作りになっており、何度か袋小路に進んで戻る羽目になった。
   俺とティアは通行の邪魔になる奴だけ瞬殺し、脇を通り抜けられる奴は無視して素通りしながら、一層目と二層目を一気に走り抜けた。
   ーーそして、三層目。

「やっと見つけた……」

   3層目に入り【気配察知】を使用した結果、三層目の奥の方にアンデット以外の気配を見つけた。
   だが、その気配は大量のアンデットの気配に囲まれていて、既にデストラップが始まっている事が確定した。
   しかし、健一達がまだ生きている事が分かり、俺の気持ちは安堵感と高揚感に包まれている。

「まだ生きてくれているなら、十分間に合う!   行くよティア!」
「んっ!」

   健一達だと思われる気配に向かって、俺とティアは駆け出した。
   
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