理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第5章 『水の国』教官編

第155話 暫しの食休み……えっと、まだやるんですか?

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   巨大なドーム型の空洞の隅っこで縮こまる様に食卓を囲む、この世界の頂点であるはずの【超越者】たる俺を含めた五人の面々。

「この様なものが有るのなら、何故直ぐに出さなかった」

   俺の時空間収納から、直ぐに食べられる様に保管していた炊きたてご飯を出し、申し訳程度の具の入った鶏ガラスープも加えて、地面に置かれたちゃぶ台の中心に置かれた焼肉のタレ味付けの肉野菜炒めを皆でつついていると、ガウレッドさんがその箸を止めずに不満を漏らす。

「ん、これはとっておき。まだ、量が少ない」
「そうなのか……ならば、量産すべきだな。この様な複雑な味付けができる調味料は初めて味わったぞ」

   ティアの言葉に、ガウレッドさんがガッガリしながらも早く量産しろと急かすが、その間も箸は止まらない。
   この世界の肉への味付けの基本は塩と胡椒。肉自体が美味ければ肉の旨味を引き立たせるいい味付けなのだが、世の中美味い肉よりクセのある、そのままでは食いづらい肉の方が圧倒的に多い。そんな肉に濃い味付けのこの焼肉のタレは、肉の種類を選ばずに使える最高の調味料と言えるだろう。

「こんなものさえなければ……こんなものさえなければ……」

   セリスさんは自分の注意力を乱した肉入り野菜炒めを憎々しげに箸で摘み、口に運んでは幸せそうな表情を浮かべるという作業を繰り返し、リアは肉を風魔法で浮かせ、風の刃で自分サイズに細切れにして浮いたままのその肉に直接齧り付くという食事方法を取っている。
   そうして互いに奪い合う様に食事は進み、テーブルの上には空の食器のみになった。

「ふぅ、食った食った」
「食後に直ぐに横になるものではありません。はしたない」

   食べて直ぐにその場で倒れこんだガウレッドさんに、セリスさんが眉間に皺を寄せながら非難するが、ガウレッドさんは意に介していない。

「ふん、お前との戦いで疲れてるんだよ。それに、美味いもんを食った後で横になる幸せは何物にも変えられん」
「だよね~」

   ガウレッドさんの言うことはもっともだと言わんばかりにリアもちゃぶ台の上で横になると、セリスさんは深いため息を吐いた。

「まったく……こんなだらしない者達が私と同じ【超越者】の所持者だと思うと、恥ずかしくなります。貴方方はこの様になってはいけませんよ」

   そう言って俺達に視線を向けたセリスさんだったが、ふと、何かしらの考えに至ったかの様に目を輝かせた。
   ……なんか、嫌な予感が……
   そう思ったのも束の間、セリスさんはパンと両手を胸の前で叩きながら口を開く。

「そうだ、このままガウレッドのそばにいて影響されてはかないませんから、いっその事、貴方達は私と共に来なさい」
「えっ!……」「それは、ダメだ!」

   突然の誘いの言葉に俺が困惑の声を上げるのと同じタイミングで、ガウレッドさんがセリスさんを睨みつけながら上半身を起こす。すると、セリスさんは俺達を見ながらヒクッと頬を引きつらせる。

「何故、貴方が返事を返すのですか?   この二人は貴方の所有物ではないのですよ」

   俺達からガウレッドさんの方へ顔を向けたセリスさんの声色は少しドスが効いていた。
   こっちからは見えないけど、恐らく見たものを震え上がらず様な視線をガウレッドさんに向けてるのだろう。しかし、そんなセリスさんの視線に、勿論ガウレッドさんは怯まない。

「こいつらは、この大陸で親友の成長を見守っているのだ。そんな者達をこの大陸から連れて行くな」

   えっ?   ガウレッドさん、俺達の行動理由を理解してたんだ……
   自分勝手な行動ばかりだと思っていたガウレッドさんの口から、俺達への援護射撃が飛び出したことに驚いていると、セリスさんがゆっくりと俺達の方へと向き直る。

「今のガウレッドの話は本当ですか?」
「はい。俺と共にこの世界に連れてこられた友人達です」

   俺がそう答えると、セリスさんは「そうですか……」と小さく頷いた。
   テーブルの上ではリアが「なんだ、こんな食事が毎日出来ると思ったのに……」とガックリと項垂れている。
   リアはセリスさんと同じ大陸に住んでいるのか……でも、俺達はお給仕さんではないからな。
   などと苦笑いを浮かべていると、そのリアの背後でガウレッドさんが満足そうに頷きながら舌舐めずりをしていた。
   ガウレッドさん……もしかして、もっともらしい理由を述べていたけど、最大の目的は俺達の料理が食べられなくなることを避ける為の口実だったのでは?
   折角ガウレッドさんの援護に感動してたのに、要らぬ疑惑が浮上して曖昧な表情を浮かべていると、俺達の方に顔を向けていて、その背後のガウレッドさんの表情に気付いていないセリスさんは、真摯な視線を向けながら口を開く。

「ならば、仕方がないですね。ですが、この男は何処までも身勝手で、普通なら通らない道理でも力尽くで押し通す様な傍若無人な者です。もし、困ったことが有ったら私に連絡しなさい」

   そう真面目に言うと、セリスさんは俺の両肩に手を置いた。
   ……え~と、お気持ちはありがたいのですが、この世界で連絡しろと言っても携帯なんか無いだろうし、どうしろと?
   などと、真面目に心配してくれているセリスさんの言葉に困惑していると、アユムから念話が入る。

[マスター、超神龍セリスのスキル【マインドネットワーク】との接続を確認しました。これからはセリスを通じてセリスが【マインドネットワーク】で繋げた者達との念話が可能となります。条件はセリスが【マインドネットワーク】を接続していて、一度でも会っている事です。現在その条件に当てはまっているのは、セリスとリアです]

   あー、成る程。そういうスキルがあったんだ……
   で、俺がガウレッドさんの理不尽な行動に辟易して連絡したら、今回の様な二人の争いが所構わず繰り広げられる可能性があると……そんなの恐ろしくておいそれと連絡出来る訳無いじゃないかー!   あんな戦い外でやらかされたら、下手しなくても街……いや、国の一つや二つは消えてしまうぞ!
   ある意味、核の発射ボタンを持たされた気分になり、とても有り難い気分にはなれなくて頬をヒクつかせていると、おもむろにガウレッドさんが立ち上がる。
   皆がガウレッドさんに目をやると、ガウレッドさんはニヤニヤしながら俺とティアを見下ろした。

「おい、休憩と補給も済んだし、続きをやるぞ」
「えっ!   続きって……」
「決まってるだろ。お前達は何の為にここに居るんだ?」

   あ~……俺のガウレッドさんへの報酬はまだ、払い終わってないんですね……でもーー

「休憩って言っても食事して少し休んだだけでしょう?   五日間も戦い続けていて、睡眠は取らなくても大丈夫なんですか?」
「ふん。俺達は睡眠など取らなくても、百日くらいは問題無い」

   ガウレッドさんの言葉にセリスさんが頷く。

「昔はその辺にいる魔物で食を満たしながら、百日間戦い続けたこともありましたね。ですが、続きというのは?」
「俺がガウレッドさんに頼み事をした報酬代わりに、俺達が戦う約束をしてるしたんです」

   疑問に俺が答えると、セリスさんは成る程と頷いた。

「それは仕方がないですね。約束は守らないといけません」

   セリスさんの最もな意見に「ですよね」と俺が覚悟を決めると、ティアが勢い良く立ち上がった。

「ん!   早くやる」
「クッカッカッカッ!   やはり、ティアは見所があるな」

   二人の戦いを見て、ずっと触発されてウズウズしていたティアをと共に、俺はガウレッドさんとドームの中央に向かって歩き始めた。
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