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第5章 『水の国』教官編
第161話 アユム達の暗躍……そんなことしてたんですか
しおりを挟む【忍ぶ者】で気配を消し、ゴブリン達をすり抜けながら移動しつつ、徒党を組んで道を塞いでいる者はそのまま弾き飛ばす。
どうせ、九層くらいまでは出てくる魔物は高くてもレベル十ちょい。レベル差が十倍以上開いてしまうと経験値は殆ど入らないので、ゴブリン達も倒す旨味は全くない。と、言うわけで、俺は通行の邪魔になる奴だけ吹っ飛ばしてさっさと十層のボス部屋へと入ったのだが……
「ティアがミノタウロスを圧倒したって聞いてたからもしかしてって思ってたけど……」
[当然の結果ですね]
淡白に答えるアユムの声を聞きながら、既に動かなくなった六本腕のゴブリン、ゴブリンスパイダーを見下ろす。
部屋に入って直ぐに威嚇してきたゴブリンスパイダーに駆け寄り、腹部に槍を突き入れただけなのだが、それだけでゴブリンスパイダーの腹には大穴が空いてしまった。
それで終わりである。部屋に入ってからの所要時間は三秒、ボスとしては実に味気ない。
戦利品は銀製の剣二本。風の国のダンジョンでは金属の剣と盾だったから【幸運】の効果が相変わらず効いている様だが、流石に武器としては使い道が無いから、売却用だよな。そしてーー
「ボス攻略ボーナスでスキルポイント10か……結構、スキルポイントも貯まってるし、新しいスキルを取った方が良いかな?」
[それは、お待ち下さい]
(? ……どうしてだ?)
無意識に呟いた俺の独り言に即座に反応したアユムに疑問を投げかけると、アユムはとんでもない返答を返してくる。
[ただいま、トモとニアにティアのスキルの解析を任せています]
(……ティアのスキルの解析ぃ!? そんなことしてたのか? って言うか、そんなこと出来るのか?)
[はい。パーティ外の者のスキルを【森羅万象の理】を使い調べるのに比べれば、とても容易く出来ます]
俺の驚きをよそに、サラッと返答を返すアユムさん。
全く、裏でコソコソ何をしてんだよ……
(……で? 何を調べているんだ?)
[【獄雷炎】と【聖光輝】。それに、【煌鱗硬壁】【竜の金剛力】【龍神力】【反魔法合成】【複合魔術】【重複魔術】ですね]
……ティアはこの間のガウレッドさん達の戦闘中にそんなにコピーしてたのか……
ひとつ取ってもとんでもなさそうなそのラインナップに唖然としていると、アユムはさらに話を続ける。
[この内、相対する魔法を合成させる、二つ以上の魔法を掛け合わせることの出来る【複合魔術】。それに、同じ魔法を同時に発動出来る【重複魔術】はハイエルフでも取得可能なのが分かりました。もっとも、レベル的にまだ、取得出来ない筈と言う面では疑問が生まれますが……しかし、その他のスキルは……]
(本来なら、ティアは取得出来ない筈のスキルか……)
[はい。それが、【神才】の能力なのか……それとも、【神才】の能力でハイエルフでも取得出来るようにスキルを変質させているのか。それが分からないので調べているのです]
(それがもし後者なら、俺にも取得させることが出来るかもしれないと?)
[その通りです。人間種は取得出来るスキルは多彩なのですが、どうしてもその威力は他の種が取得するスキルに比べると見劣りしてしまいます。ですが、ティアを通して本来、人間種が取得出来ない筈のスキルを取得出来るようになれば、マスターは更なる高みへ登れます。本来なら【神才】こそ、マスターに取得して欲しいスキルなのですが、【神才】は、ティアのオリジナルスキル的なもののようで、どうしても、その構造を解析出来ないのです]
アユムによると、勇者の特権であるオリジナルスキルは、スキルというよりその個人の才能と言うべき要素が強いらしく、流石にティアの【神才】でもコピー出来ないらしい。その証拠に、ティアの側にずっといる俺のオリジナルスキルは、ティアにコピーされていない。
(はぁ~、お前達はそんなことしてたのか……でも、もしそれが可能になったとして、急激に強くなったら他の【超越者】に目を付けられないかな?)
力説するアユムに対しそんな心配事を提示すると、アユムは「ならば、他の【超越者】と対等の立場になるまで登りきれば良いのです」と、鼻息荒く返してくる。相変わらずアユムの中では、俺はこの世界の頂点まで登れる存在のようだ。この辺はナビさん時代と変わってないな。
対等の立場ねぇ……諸先輩方は長い年月を掛けて強くなってるんだよな。スキルはまだしも、レベル差による能力値の違いまではフォロー出来ないと思うんだけど……それに、ガウレッドさんやセリスさんに肩を並べる自分なんて、とても想像出来ない。
[【時空間魔術】の例もありますので、スキルポイントの使用は控えるようにお願いします]
そう締めくくるアユムに、俺は取り敢えず頷いてみせた。
⇒⇒⇒⇒⇒
十一層からはオークのご登場。偶に、体長三メートルを越すジャイアントスネークや、弱いくせに小さくて素早く、毒攻撃を仕掛けてくるポイズンラットなども出てくるが、サーチアンドデストロイが出来るという点では、俺的には面倒臭さは変わらない。敢えて言えば、オークは豚肉になってくれるので、オークが出てきてくれた方が有り難かった。
「にっく、にっく、にぃ~く~♪」
よくティアが歌っていた歌を歌いながら、出てきたオークは【解体】でブロック肉に変えつつ時空間収納に豚肉のストックを増やしていく。そんな調子で二十層のオークキングを倒し、二十一層から現れる牛系の魔物も同じ調子で倒しつつ進み、三十層のミノタウロスも撃破。
この辺りの階層はつい、食糧確保に欲をかいてこまめに魔物を倒してしまった。豚肉、牛肉のストックが増えてくれたが、時間も少し押してしまったな……
「十六時二十一分か……三十一層からは」
[コボルトやホブゴブリンが主流でしたね]
アユムの返答に、ガックリと項垂れる。
(そうだった。動物系の魔物で一息ついたと思ったら、また、人型なんだよな)
[一応、昆虫系の魔物もチラホラ出ますが、出現率的に一割にも満たないですね]
(予測しづらい攻撃をしてくる昆虫系の方が手強いと思うんだけどな。神様は勇者の成長よりも、人殺しの耐性をつける方が大事らしい。面倒臭いから【忍ぶ者】全開で突っ切るぞ。【地図作成】の方は宜しく】
[はい。了解しました]
アユムの返答に頷き三十一層に突入した俺は、ゴブリンの時と同じくコボルトやホブゴブリンを轢き殺しながら突き進む。流石にこの辺の魔物となると殺して経験値が入ってはくるが、それでもその数値は微々たるもの。じっくりと腰を据える価値は無い。
そうしてどんどんと階層を下っていき、四十層に到達した。
「相変わらず、いい眺めだな」
目の前には見渡す限りの黄金色の稲穂。風になびく稲穂を見ているとなんだかホッコリとしてしまう。
まだ時空間収納に十分なストックがあるのに、収穫意欲が湧いてくるな。
ウキウキとした気分に浸りそうになる俺に、アユムからそんな気分を吹き飛ばす報告がくる。
[前方、二十メートル先、フロアボスです]
ああ、そうですか。確か、ここのボスは……
ガッカリしながら視線を前方に向けると、そこには麦わら帽子を被り、オーバーオールを着込んで三又に分かれたフォーク(藁などを集めたりする農業用の道具)を持つ身長三メートル程の鬼の姿。
「ファームオーガ。相変わらず気の抜ける姿だ」
約束の時間も近いし、さっさと片付けてしまおう。
そう気合いを入れて槍を構えてファームオーガと対峙するが、どうもファームオーガの農作業をする田舎のおっちゃんみたいな姿を見ると、緊張感が維持できない。
まあ、実力差で緊迫する様な戦いにはならないんだけど……
結局、ファームオーガをあっさり倒してしまうと時間は十八時三十分。夕食の準備の時間を考えると、少し押してしまったな。
ーーーーー
次回から更新時間を不定期にさせていただきます。
申し訳ありませんが、私の職業は年度末前後が忙しいもので……
ホントに申し訳ありません。
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