理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第5章 『水の国』教官編

第160話 懐かしき単独攻略……う~ん、懐かしいなぁナビさん時代のアユム

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「それじゃ、今日は俺一人で潜ってきますんで」
「本当に大丈夫ですか?」

   水の国のログハウスに戻ってきて三日。その間、水の国の勇者の皆さんには戦闘はさせずに普通の食事をさせてのんびりと過ごさせた結果、取り敢えず表面上は元に戻ってくれた。そんな四姉妹に今日は一人で潜ることを伝えると、美香さんが心配そうな顔を向けてきた。

「心配要りません。四十層までなら余裕ですから」
「その余裕が命取りになりかねないんだよ。私も付いて行こうか?」

   美希さんの申し出に、俺はゆっくりとかぶりを振る。
   俺はこのダンジョンで一層目しか潜っていない。つまり、転移の魔法陣を俺だけが使えないのだ。
   そんな俺に付き合って一層目からみんなで行動しては、一日で十層の攻略が限界だろう。だから、時間短縮の為に今日は俺一人で四十層まで潜るつもりなのだが、誰かについてこられたら、そんなスピードでの攻略は不可能になってしまう。

「本当に大丈夫?」
「危ないの」

   美子ちゃんと美久ちゃんの双子コンビも、俺のシャツの裾を掴んで心配そうに見上げてくる。餌付け……もとい……三日間、一緒にのんびりと過ごして大分懐いてくれたようだ。
   しかし、彼女達のこの異様な心配は、やはり兄の様に慕っていた存在がこのダンジョンで亡くなったことが原因だろう。実力的には劣っていると分かっていても、目の届かないところで活動されては心配になってしまうのは仕方がないことだ。

「大丈夫だよ。俺はついこの間まで、こんなダンジョンなんて一息で破壊する様な化け物の相手をしてたんだ。それに比べたら、ダンジョン探索なんて大したことないよ」

   俺の実話を冗談と捉えたのか、一層心配そうに視線を投げかけてくるその姿にティアを重ねてしまい、無意識に双子コンビの頭を撫でつつ、美香さんへと視線を向ける。

「美香さん。今日の朝食と昼食は温めるだけにしておきましたから、後はお願いします。夕食前には帰ってこれると思いますんで」
「夕食前……ですか?」
「ちょっ!   半日で四十層まで潜る気!」
「それはちょっと……」
「無謀なの」

   俺の発言に驚く四姉妹。
   そんな四姉妹に「無理そうなら途中で引き返してきますよ」と心配させない様に軽い口調で答えると、俺はリビングを出てダンジョン入り口の階段を下りていった。


   転移魔法陣のある円形の部屋でミスリル装備を装着した俺は早速、ダンジョン内へと足を踏み入れる。一層目はスライムだけ。経験値的にもドロップアイテムも旨味は無いし、さっさと駆け抜けてしまおう。

(アユム、【忍ぶ者】で気配消して適当に走るから、【地図作成】に下り階段が出たら教えて)
[了解です]

   アユムの了承を確認して俺は走り始める。
   通路を塞ぐ様に現れたスライムは、走る場所を地面から壁へと移し走り抜ける。立体的に蛇行した分タイムロスになるが、スライム程度では槍で払い除けただけで死んで水の様に弾けてしまう。そうなるとスライムで水浴びしながら走ることになってしまうのだ。
   そんなのは御免被りたい。
   アユムに地図の管理を任せダンジョン内を爆走すること数分。地下二層への階段を見つけた。

(地下二層から九層まではゴブリン軍団の登場だったよな)
[はい。二層、三層は単体で。それ以降は複数で出現します]

   階段を見下ろしながら、『風の国』のダンジョン構造を思い出してアユムに確認すると、アユムが直ぐに答えてくれる。アユムとのダンジョン攻略は久しぶりだが、相変わらず頼もしいかぎりだ。
   そう言えば、『風の国』のダンジョンを一人で攻略してた時は、二層でゴブリン相手に苦戦した後でアユムの前身、ナビさんを取得したんだったな。
   今では当たり前の様に感じてしまっているアユム達のサポートだが、あの時はナビさんが居てくれてとても心強く感じたものだ。
   当時を思い出し、思わず笑みがこぼれるとアユムが不思議そうに念話を送ってくる。

[どうしたのですか?   マスター]
(いや、ナビさんと共にダンジョン攻略してた時を思い出してね)
[ああ、あの時は大変でした。マスターもティアも、無茶ばっかりして……特にマスターは、自殺願望でもあるのではと本気で思ってしまうほどの無茶っぷりでした]
(むっ……確かにあの頃は、ティアの保護者という責任感と健一達に早く追いつきたくて焦ってたかもしれないれど……)
[ふふっ、今ではティアに守ると言われ、健一さん達には早く追いつきたいと思われてるんですから、全く立場が逆転してしまいましたね]
(う~ん、俺の成長速度も相当なもんだと思うけど、ティアはそれに輪をかけてとんでもないからな)
[戦闘面だけですけどね……それよりも、私が【ナビゲーター】時代よりは随分マシになりましたが、時折見せる無茶っぷりは健在ですから、気をつけて下さい]

   うわっ、昔話なんてするんじゃなかった。久しぶりにアユムが説教モードに入りそうだ。
   藪蛇をつついてしまったと後悔していると、天の助けか地獄からの増援か、突然、念話の横槍が入る。

《えっ!   マスターってそんなに無茶苦茶だったの?》

   面白い話だとでも思ったのか、ニアが興味津々といっ口調で割り込んできた。

[そりゃあもう。まだ、【超越者】を取っていない時に、単独でミノタウロス相手に正面から突っ込んだんですから]
《うっわー、力しか能の無いミノタウロスに力押ししたの?   そりゃあ無茶苦茶だ》

   地獄からの増援だった……このままでは二人掛かりで馬鹿にされながら、お説教されかねない。ここは何とか話をそらさねば。

(ニアお前、ティアのお目付役の方は大丈夫なのか?)
《ああ、それなら大丈夫だよ。今んとこティアちゃんは健一達に攻略を任せて、大人しくその後を付いて行ってるだけだもん》
(そうか……そう言えば、こっちは不本意ながらまだ攻略を始めてないんだが、そっちはどこまで進んだ?)

   上手くいきそうだとほくそ笑みつつ、更に話をそらしてしまおうと、ちょっと気になっていた健一達の攻略スピードを聞くと、ニアからとんでもない答えが返ってきた。

《ん?   今、五十層だね》
(はぁ?!   まだ、ティアが戻って四日目だろ)
《ん~、戻ってきたガウレッドのご飯お代わり攻勢で初日が潰れてるから実際は三日目かな》

   やっぱりガウレッドさんはヒメの下に戻ってたか。それよりも……

(なんで、そんなに急いで攻略を進めてるんだ?)
《それは、マスターが教えた調停者のスケジュールを元にトモとナビ君が攻略計画を算出した結果だよ。忍は水の国から始まって時計回りに国を回る計画をマスターに話したけど、調停者が忍とマスターの接触を避けることに重点を置いたら、慎重を期して逆時計回りに攻略を始める可能性もあるって……》
(光の国から逆時計回りだとすると……)
[最初に行く国は土の国になりますね]

   アユムの言葉に、思わず俺は天を仰いだ。確かに、可能性的には無くはない。調停者が言葉通りに行動する可能性なんて、絶対ではないんだ。

《計算上、忍がどんなにスケジュールを早めたとしても、十五日以内に攻略を終えてトンズラしたらかち合わないんだって》
(そうか……それじゃあ、トモとナビ君には宜しく言っといて……って、ナビ君!   それ誰?)
《んー、健一の取得した【ナビゲーター】だけど》
(健一、取得してたのか……でも、何で君?   さんじゃないの?)
《だって、声の感じだと男の子だったんだもん》

   男の子……【ナビゲーター】の人格って一種類じゃないんだ……【ナビゲーター】ってどっから生まれてくるんだろ?
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