7 / 13
7.目の前にあった謎
しおりを挟む
「ね、どういうことかな」
僕はまだ信じられない思いで、そう博人に問いかけた。
学校は今、大変な騒ぎになっていた。
本物の不審者が学校に侵入して、刃物で生徒を襲おうとしたという事件が、いち早くニュースとなってしまっていた。
学校の先生たちは、マスコミと保護者への対応に追われていた。
職員室の電話が鳴り止まなくて、ついには小牧先生まで駆り出された。
「先生が戻るまで、ここで待っててね。すぐ、戻るから」
そう言って小牧先生は出て行き、僕と博人は生活相談室に二人、取り残されていた。
僕は最初興奮していたものの、しばらく放置されていたお陰でようやく落ち着きを取り戻した。
「若尾さん、冗談で言ってたんだよね?その、ゆみりさんのこと・・・」
僕の問いかけに、博人はしばらく無言だった。その様子に、僕はさらに不安になる。
「だって、博人だって図書室にゆみりさんいたの見たよね?声が出てない僕たちを笑ってたよね?」
「俺、ずっと思い返していたんだけどさ。ゆみりさんが俺たち以外と話しているのを、見ていないんだよな」
「そんなことないでしょ。ゆみりさんは・・・」
僕は言葉に詰まった。
あの時、図書室に行ったらゆみりさんと校長先生と若尾さんがいた。その時の雰囲気で、三人がそれまで楽しげに話していたのだと、僕は思った。
若尾さんへのゆみりさんの紹介も、既に終わっていたと思っていたんだ。
でも、確かに。
ゆみりさんが誰かと会話しているのを見た訳じゃない。
ゆみりさんは、笑たり、頷いたり、拍手したりしてくれていたけど、校長先生と若尾さんと言葉を交わすところを、僕も、見て、いない?
だって、まさか普通は思わないよ。
ゆみりさんが僕と博人にしか見えていない、なんて。
「そんな・・・。僕たちにしか見えないって、そんなの、まるでゆみりさんが・・・」
幽霊みたいじゃないか。
その言葉は、怖くて最後まで言えなかった。
博人がすくっと立ち上がった。
「靴箱、見に行こう。さすがに4年生の教室には近寄れないからさ、靴箱でみゆりさんの名前、確認しようぜ」
僕は大きく頷き、立ち上がった。
「四年三組って言ってたよな?」
博人の言葉に僕は頷き、目の前の靴箱の名前を目で追って行く。
結局。ゆみりさんの名前は、なかった。
四年生は三組までしかないから、一組から隅々まで見たのだけど、僕たちはゆみりさんの名前を見つけることは出来なかった。
「ウソでしょ。そんな訳、ない。だって、あんなに普通に会話してたのに!」
僕は足の力が抜けて、がっくりと膝をついた。
「校長先生は・・・」
博人の呟きに、僕は顔を上げる。
「校長先生は、何か知ってる」
そこには、何かを確信しているような博人の表情があった。
「だって、そうだろ。今回の『防犯・安全教室』に協力する話は、ゆみりさんから聞いたよな。ゆみりさんが俺たち以外に見えないってことなら、校長先生は誰に、俺たちにその話を伝えてもらったんだ?」
「あ、確かに・・・」
「俺たちが作った不審者マップだって、俺たちは言われた通り図書室に置いていたけど、ちゃんと若尾さんの手に渡っていたよな?」
「うん、渡ってた。え、ってことは」
「俺たち以外に、若尾さんに橋渡しした誰かが絶対にいる。それがゆみりさんじゃないってことなら、あとは校長先生しか考えられない」
「じゃあ、校長先生にもゆみりさんは見えてたってこと?!」
博人は頷く。
「校長先生に、話を聞きに行こう」
僕は頷き、よろよろと立ち上がった。
校長室は、職員室の奥の部屋にあった。
なので校長室に行くのなら、必ず職員室を通る必要がある。
どんな状況かと職員室を覗いていたら、まだまだ騒然としていて、とても僕たちが入って行ける雰囲気ではなかった。
そこで入るのを戸惑っていたら、小牧先生に見つかった。
「あなたたち!相談室で待っててって言ったでしょ!!探したのよ?!」
「あ、いや。校長先生に話があって」
「校長先生は、今それどころじゃないの。もうすぐ保護者の方も迎えに来るから、それぞれ教室で待っててくれるかな?」
またしても問答無用でその場から引き離され、僕と博人はそれぞれ担任の先生に引き渡された。
教室に戻った僕を、教室のみんなが心配そうに見つめて来る。
「先生ー。柊君が泣いてます」
担任の山田容子先生が、僕の顔を覗き込み、ハンカチで涙を拭いてくれた。だけど、僕の目からは涙が止まらなかった。
「かわいそうに。怖かったよね」
体を支えられながら、そっと自分の席に座らされる。先生が貸してくれたハンカチも、既にぐっしょりだった。
教室のみんなが、大丈夫?と優しい言葉をかけてくれる。近くの席の友達は、背中をさすってくれたりもした。
だけど僕の涙は止まらず、嗚咽を押し殺して泣き続けていた。
怖かったから?いや、違う。確かに怖い思いをしたけど、今こんなに胸が張り裂けそうになっているのは。
ゆみりさんに、もう会えないかもしれないから。
自分でもびっくりするくらい、僕にはそのことが苦しいくらい悲しかったんだ。
僕はまだ信じられない思いで、そう博人に問いかけた。
学校は今、大変な騒ぎになっていた。
本物の不審者が学校に侵入して、刃物で生徒を襲おうとしたという事件が、いち早くニュースとなってしまっていた。
学校の先生たちは、マスコミと保護者への対応に追われていた。
職員室の電話が鳴り止まなくて、ついには小牧先生まで駆り出された。
「先生が戻るまで、ここで待っててね。すぐ、戻るから」
そう言って小牧先生は出て行き、僕と博人は生活相談室に二人、取り残されていた。
僕は最初興奮していたものの、しばらく放置されていたお陰でようやく落ち着きを取り戻した。
「若尾さん、冗談で言ってたんだよね?その、ゆみりさんのこと・・・」
僕の問いかけに、博人はしばらく無言だった。その様子に、僕はさらに不安になる。
「だって、博人だって図書室にゆみりさんいたの見たよね?声が出てない僕たちを笑ってたよね?」
「俺、ずっと思い返していたんだけどさ。ゆみりさんが俺たち以外と話しているのを、見ていないんだよな」
「そんなことないでしょ。ゆみりさんは・・・」
僕は言葉に詰まった。
あの時、図書室に行ったらゆみりさんと校長先生と若尾さんがいた。その時の雰囲気で、三人がそれまで楽しげに話していたのだと、僕は思った。
若尾さんへのゆみりさんの紹介も、既に終わっていたと思っていたんだ。
でも、確かに。
ゆみりさんが誰かと会話しているのを見た訳じゃない。
ゆみりさんは、笑たり、頷いたり、拍手したりしてくれていたけど、校長先生と若尾さんと言葉を交わすところを、僕も、見て、いない?
だって、まさか普通は思わないよ。
ゆみりさんが僕と博人にしか見えていない、なんて。
「そんな・・・。僕たちにしか見えないって、そんなの、まるでゆみりさんが・・・」
幽霊みたいじゃないか。
その言葉は、怖くて最後まで言えなかった。
博人がすくっと立ち上がった。
「靴箱、見に行こう。さすがに4年生の教室には近寄れないからさ、靴箱でみゆりさんの名前、確認しようぜ」
僕は大きく頷き、立ち上がった。
「四年三組って言ってたよな?」
博人の言葉に僕は頷き、目の前の靴箱の名前を目で追って行く。
結局。ゆみりさんの名前は、なかった。
四年生は三組までしかないから、一組から隅々まで見たのだけど、僕たちはゆみりさんの名前を見つけることは出来なかった。
「ウソでしょ。そんな訳、ない。だって、あんなに普通に会話してたのに!」
僕は足の力が抜けて、がっくりと膝をついた。
「校長先生は・・・」
博人の呟きに、僕は顔を上げる。
「校長先生は、何か知ってる」
そこには、何かを確信しているような博人の表情があった。
「だって、そうだろ。今回の『防犯・安全教室』に協力する話は、ゆみりさんから聞いたよな。ゆみりさんが俺たち以外に見えないってことなら、校長先生は誰に、俺たちにその話を伝えてもらったんだ?」
「あ、確かに・・・」
「俺たちが作った不審者マップだって、俺たちは言われた通り図書室に置いていたけど、ちゃんと若尾さんの手に渡っていたよな?」
「うん、渡ってた。え、ってことは」
「俺たち以外に、若尾さんに橋渡しした誰かが絶対にいる。それがゆみりさんじゃないってことなら、あとは校長先生しか考えられない」
「じゃあ、校長先生にもゆみりさんは見えてたってこと?!」
博人は頷く。
「校長先生に、話を聞きに行こう」
僕は頷き、よろよろと立ち上がった。
校長室は、職員室の奥の部屋にあった。
なので校長室に行くのなら、必ず職員室を通る必要がある。
どんな状況かと職員室を覗いていたら、まだまだ騒然としていて、とても僕たちが入って行ける雰囲気ではなかった。
そこで入るのを戸惑っていたら、小牧先生に見つかった。
「あなたたち!相談室で待っててって言ったでしょ!!探したのよ?!」
「あ、いや。校長先生に話があって」
「校長先生は、今それどころじゃないの。もうすぐ保護者の方も迎えに来るから、それぞれ教室で待っててくれるかな?」
またしても問答無用でその場から引き離され、僕と博人はそれぞれ担任の先生に引き渡された。
教室に戻った僕を、教室のみんなが心配そうに見つめて来る。
「先生ー。柊君が泣いてます」
担任の山田容子先生が、僕の顔を覗き込み、ハンカチで涙を拭いてくれた。だけど、僕の目からは涙が止まらなかった。
「かわいそうに。怖かったよね」
体を支えられながら、そっと自分の席に座らされる。先生が貸してくれたハンカチも、既にぐっしょりだった。
教室のみんなが、大丈夫?と優しい言葉をかけてくれる。近くの席の友達は、背中をさすってくれたりもした。
だけど僕の涙は止まらず、嗚咽を押し殺して泣き続けていた。
怖かったから?いや、違う。確かに怖い思いをしたけど、今こんなに胸が張り裂けそうになっているのは。
ゆみりさんに、もう会えないかもしれないから。
自分でもびっくりするくらい、僕にはそのことが苦しいくらい悲しかったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる