【完結】僕らのミステリー研究会

SATO SATO

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⒏白昼夢

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 不審者騒動があって、学校では間もなく保護者への引き取りが始まり、僕はお母さんのお迎えで家に戻った。
 そのときにはさすがに泣き止んでいたけど、家に着いた途端、高熱が出てしまって寝込んでしまった。
 いろいろありすぎて、脳が処理能力を超えて悲鳴をあげたんだと思う。
 熱にうなされて、何度も眠りから引き戻される。
 そして、ふとまた目が覚めた。時計に目を向けると、二時ちょうどを針は示していた。外は真っ暗で、今はまだ真夜中なんだと理解する。よかった、まだ寝られる。
 まだまだ体は熱っぽく、頭はぼーっとしたままで、僕は再び目を閉じようとした。
 でも、そこに誰かいたような気がして目を開けた。
「大丈夫?」
 そう僕の顔を覗き込んでいたのは、ゆみりさんだった。
 僕のベットの横に座って、いつものかわいい笑顔で僕を見ていた。
 すごく驚いたけど、ゆみりさんに会えて嬉しかった。
「何で、泣くのよ?」
 ゆみりさんが困ったように笑う。
「だって・・・」
 僕は手で涙を拭った。
 ゆみりさんに会えたのは嬉しかったけど、悲しかった。
 こんな時間に、ゆみりさんがここにいるなんて、普通じゃない。やっぱり、ゆみりさんは・・・。
 そう思うと悲しくて、また涙が次から次へと溢れて来る。
「もう、会えないんですか?」
 訪ねた僕に、ゆみりさんは少し驚いたような顔をした。けれどすぐにいたずらっ子のような、いつもの笑顔を浮かべた。
「会えるよ」
 また、会えるんだ。そう思うと、少しホッとした。どんな形であっても、会えるのは嬉しい。会えなくなるより、全然いい。
 安心したら、体が楽になってすごく眠くなった。
 まだ、ゆみりさんと話していたいのに。
 だめだ。すごく、ねむ、い・・・。
 

 気がついたら、朝だった。
 いつもの起きる時間の目覚ましが鳴っている。
 額に手を当てて、熱がないことを確認する。大きく伸びをして、僕は起き上がった。
 うん。体も、もうしんどくない。
 ふと、昨日見た夢のことを思い出した。
 ゆみりさんが会いに来てくれたというよりも、僕の願望が見せた夢かも知れないと思うと、すごく恥ずかしい。
 ぱんぱんとほっぺを両手で叩き、気持ちを切り替える。
 着替えを終えて一階に降りて行くと、お母さんが朝ごはんの支度をしていた。僕を見るとすかさず寄ってきて、額に手を当てる。
「もう熱は下がったみたいね。よかった」
「うん。治った」
 お父さんも僕のところに来て、両手で僕の頭をわしゃわしゃとなでた。
「昨日は大変だったな。柊が無事で、本当によかった」
「うん」
 お母さんにもぎゅーって抱きしめられて苦しかったけど、それはそれで心地いい。改めて、家族で一緒にいられるという幸せを実感する。
「今日、学校は臨時休校だから。午後からは保護者説明会。柊も来るように言われているんだけど、大丈夫そう?保護者説明会の前に、校長先生から柊と博人君にお話があるんだって」
「うん。大丈夫」
 校長先生と話せるのはありがたかった。
 ゆみりさんのことを、やっと聞くことができる。
「お、ニュースに出てるぞ」
 お父さんがテレビのボリュームを大きくした。
 テレビには、見慣れた双葉小学校が映し出されていた。その映像とともに、女性のアナウンサーの声が流れてくる。

『昨日、防災・安全教室を行なっていた双葉小学校に、刃物を持った男が侵入し、生徒に襲いかかろうとしたところ、防災・安全教室に参加していた東警察署の警察職員に程なくして取り抑えられました。
 今回の騒動での怪我人は出ておりません。その場で確保された容疑者は、西島 誠(にしじま まこと)・自営業・四十六歳。
 この双葉小学校の近くでは、ここ最近不審者の目撃情報が相次いでおり、東警察署では余罪も含めて追及して行くとのことです』
 画面が切り替わり、西島容疑者の制服を着た写真が写し出される。高校生くらいに見えるその写真に、いつの写真だよ!と突っ込みたくなる。
 でも、その写真のキツネ目は、あの時帽子とマスクの間から見えたつり目と同じだった。
『防災・安全教室ってさ、普通警察の人がくるじゃない?わざわざ、そこを狙ったってこと?』
 ニュース番組の司会者のおじさんが、ざっくばらんな口調で発言していた。
『西島容疑者の動機については、「人がたくさん集まっているところを狙った。犯人役を立てて講習会があると思っていたから、まさか本当の不審者が現れるとは思わないだろうという盲点をついた」と得意げに話していたそうです』
『た、確かにこの容疑者の思惑にはまっていたら、大変なことだったよね。今回は迅速に犯人確保に動いてくれた警察の功績だね。いやぁ、誰もケガがなくてよかった。どう思いますか?田代さん』
 テレビで田代さんと呼ばれたのは、コメンテーターの弁護士の男性だった。
『いや、今回は誰も傷つけられなくてホントによかったです。ただこの容疑者ですが、過去に無差別殺人を実行した犯人に匹敵するほどの危ない人物だと思われます。
 今回は警察の迅速な対応のお陰で誰も傷つけられていない分、罪としては軽量な物しか適用にならないんですね。程なくしてこの人物がまた戻って来るかもしれないということは、この地域の方は悩ましいところでしょうね』
『それもおかしな話だよね。誰かが傷つかなければ罰することができないなんてね。なんとかならないもんかねぇ。
 では、次のニュースをお願いします』
 ぶちっとテレビを切ったのは、お母さんだった。
「あの西島容疑者って、双葉小学校の近くに住んでいるらしいの。大した罪じゃないから、すぐに戻って来る可能性があるって」
 僕たちの間に重苦しい沈黙が流れた。
 あいつが戻ってきたとしたら、この地域の人たちは、どこで襲われるかもしれない恐怖にさらされながら生活していくことになる。
 僕は昨日、目の前にいた西島容疑者のことを思い返していた。
 あいつの目には、強い殺意が宿っていた。
 校長先生がいなければ。多くの警察の人たちが待機してくれていなかったら。僕をはじめ、多くの生徒がひどいことに巻き込まれていたと確信できた。
 あいつが戻って来たときには、今度こそ大惨事になるかも知れない。
 僕はその推測に、思わず身震いをした。



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